岡村靖幸 ステージに立ち続けるために健康でいたい。毎年ツアーを行ううえで大切な「自分が自分に興奮できる状態」の作り方【『幸福への道』インタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2024/12/22

過去の痛みを抱える限り「幸福度100%」はあり得ない

――能町みね子さんとの対談の中で、岡村さんは、今の幸福度を聞かれて「78%」とおっしゃっていましたよね。となると、岡村さんにとって幸福度100%とは、どういう状態なのでしょうか?

 100%って、気が狂ってる状態なんじゃないですか(笑)。

――(笑)なるほど。何かしら引っかかりを持ってみんな生きているわけですしね。

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 皆さん、そうなんじゃないですかね。

――村田沙耶香さんとの対談で、小学校2年の時、下駄箱で待っていた仲の良かった友達に「一人で帰れよ」と言ってしまって、彼が泣いてしまったことを今でも忘れられない、という話をされていて。僕もすごく共感したんですが、誰にでもそういう忘れられない苦い過去が絶対にあって。それがある限り、100%幸せな気分ってあり得ないだろうと思います。

 ないでしょうね。でも、ああいうことを痛みとしてちゃんと忘れないで、自戒の念としてきちんと残しておくことは、とても大事なことなのかもしれませんね。それがないと、ダメな人になっていくでしょうし。みんなそうだと思うんですよね。調子に乗ってしまったり、ミステイクを犯したことのない人はいないので。

歌手はアスリート。歌い続けるためにツアーを回る

――吉川晃司さんがライブでお客さんの姿を見るのが幸せだとおっしゃっていて、岡村さんも同意されていますよね。岡村さんは最近もずっと大規模なツアーをされていて、それはハードなことだと思うんですが、ライブをやることが幸せだから続けることができるんですか?

 そうですね。それに、歌手はアスリートという部分もあるので、やっていないと衰えていくんですよ。ユーミンさんや山下達郎さんのような僕より年上の方々も、めちゃめちゃライブをやられていますから。ビジネス面の理由もあるんでしょうけど、ポール・マッカートニーのような億万長者でさえも、ずーっとワールドツアーをやってますから。体や声が衰えないようにという、アスリート感覚だと思います。

――ポール・マッカートニーは80歳を超えてもステージに立たれ続けています。

 それに、あそこまでの境地に達した方だと、チャリティ活動やボランティア活動も含めて、人を幸せにしたい、人の幸せな姿を見たいという単純な気持ちが当然、あると思いますよ。だから、ビジネスというより、健康の維持と、人を幸せにしたいという気持ちでツアーを回っている気がしますね。

――岡村さんがこれからもライブを続けて、お客さんの幸せな姿を見るために、今、意識されていることや、今後の活動でイメージされていることはありますか?

 やっぱり健康が第一です。健康じゃないと幸せじゃないし、健康じゃないと何を食べても美味しくないですしね。あとは、自分が自分に興奮できる状態にしておきたいです。歌手を職業としてずっとやってきて、ベテランではあるので、自分で自分に飽きないように、フレッシュでいられるようにしたいです。

フレッシュな感覚がこれからの活動の血や肉となる

――具体的には、アレンジ面でのチャレンジやカバーなどの活動などもそのひとつですか?

 去年から今年にかけてやっている斉藤和義さんとのユニットも、その一環ですね。そのユニットの音楽は、僕が普段やっている音楽とはまたちょっと違う音楽ですけど、それも新鮮だし、斉藤和義さんのファンの前に出ていくことも新鮮な経験ですね。それも、これからの自分の活動の血や肉になっていくと思います。

――この連載のような、いろいろな人に話を聞く取材活動も続けていきたいですか?

 そうですね。取材もやってきて何年も経ちますけど、お話を聞くのも、いろいろな人に会えることも楽しいですから。これまでの連載や対談は芸能色が強かったですけど、今回の『幸福への道』のテーマは多岐にわたっているので、いろんな人の本当に面白い話が読めます。「僕で溢れてます」っていう感じの本ではなく、僕のファンではない人も楽しめる本なので、ぜひ皆さんに手に取ってもらいたいですね。

取材=金沢俊吾、文=川辺美希、撮影=杉山拓也(文藝春秋)

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