「ホラー業界の可能性が広がった」7万人来場『行方不明展』と200万PV『つねにすでに』が書籍化&同時発売【ホラー作家・梨×株式会社闇・頓花聖太郎インタビュー】
更新日:2024/12/26
■「編集中に感極まって泣いた」その理由とは?
ーー12月22日に行われる『行方不明展』と『つねにすでに』の合同トークイベントも楽しみですね!では、そんないいかたちでの出版が予定されている2冊のなかから、甲乙つけがたいのは承知のうえで、お二人それぞれに一番好きな作品とその理由をお伺いしたく……!まずは、『行方不明展』からお願いします。
頓花:僕は、「財布と手紙」がすごく好きで。兄ちゃんが行方不明になりたがっている理由や動機を妹はわかってしまっている。でも、そのなかで妹はいちるの望みをかけてこの手紙を兄ちゃんに送るんです。でも、兄ちゃんは何らかの理由でそれを明確かつ恣意的に損傷しずたずたにするという、フィクションではあるものの、ある種の怨念というか情念がその場に感じられるというのがすごくいいんですよね。

梨:私は……『行方不明展』のロングインタビューなどでは「■■郡の山中に棄てられた荷物」のジップロックに入れられた遺書と答えていたんですが、もうひとつ個人的に思い入れ深いのが「バス停のポールに貼り付けられていた袋」ですね。

梨:ビニール袋のなかにお金と「使えなかったらごめんなさい 元気で」という手書きのメモが入っているだけのものではあるのですが、『行方不明展』をすべて見てから見ると象徴的な展示となっていると思います。

梨:『行方不明展』の裏テーマには、「人の行方不明になりたいと思う気持ちをどう捉えるか」というものがあったのですが、先ほど頓花さんがあげられていた「財布と手紙」は「ここではない世界へ行きたいという気持ちは分かるけど、その世界であなたは幸せになれるのか?」ということを突きつける展示になっていて、それに対してこの「バス停のポールに貼り付けられていた袋」は、「そっちであなたがやりたいことに対してわたしは否定しないけど、せめて幸せでいてほしい」という祈りが込められた展示になっているので、まさに対となっている展示なんですよね。そういう背景やストーリー性も含めて、好きな作品になっています。
ーーでは、『つねにすでに』ではいかがでしょうか?
梨:「Yahoo/お節介な神託」ですね。
頓花:被った~!!!(笑)
梨:そうですよね。なぜなら、『つねにすでに』で一番やりたかったことが、この「Yahoo/お節介な神託」だったからです。そもそもこの『つねにすでに』は、AからZを頭文字にしたタイトルで紡いでいくネット怪談(ロア)なので、この「Yahoo/お節介な神託」はYで最終回ひとつ手前で、なにかというといままでのインターネットが走馬灯になって押し寄せてくる、まさにお祭りのような集大成的な話なんです。
突然モナーが出てきたり、ずんだもんが出てきたり、流石兄弟が出てきたり。で、おそらくこの『つねにすでに』がはじまった当初は、このオチがくるとは誰ひとりとして予想していなかったと思うんです。
ーー頓花さんも「Yahoo/お節介な神託」ということですが……。
頓花:はい。編集しているときに感極まって泣いてましたからね、ホラーがここに到達できるんかという。いままでの自分のホラーやインターネット中心に生きてきた人生がここまで肯定されるのか、というのが本当にうれしくて。
また、『つねにすでに』はホラーなのか、というものを突きつける作品でもあったと思うのですが、YからZと最後の最後に爽やかささえ感じられるものになっていたのは、この「Yahoo/お節介な神託」があったからだと思います。