出版不況でも部数倍増、完売も! 広告よりも優先なのは? 『LDK』×『レタスクラブ』編集長対談【1】「売れる雑誌」のつくりかた
更新日:2017/7/26

書店が減り、本や雑誌も売れなくなる一方で、部数を伸ばしている女性誌がある。広告を一切入れず徹底したテスト検証で本当に良い商品を探し出す『LDK』。そして、2016年6月に編集長が交代してから完売が続出している『レタスクラブ』だ。出版不況でも売れる雑誌にはどんな共通点があるのか?
『LDK』の木村大介編集長と、『レタスクラブ』の松田紀子編集長にとことん語り合ってもらった。
■コミックエッセイ9本を連載!大変身した『レタスクラブ』

木村大介編集長(以下、木村) (『2年前の『レタスクラブ』を取り出して)うちの編集部は、この号で『レタスクラブ』を買うのやめたんです。
松田紀子編集長(以下、松田) あ! 昔の『レタスクラブ』!
木村 『LDK』を創刊してまだ4年ぐらいなので、先輩雑誌の『ESSE』『オレンジページ』『サンキュ!』『Mart』とかを山ほど見て研究していて、そのなかに『レタスクラブ』も入ってたんですけど。ちょっと昔風味でしたよね。実家にある、昔、お母さんが読んでた雑誌みたいな。
松田 おっしゃってること、わかります(笑)。
木村 しかもこれ、最終回の連載が多かったので、とうとう『レタスクラブ』は役割を終えたんだなと思って。
松田 その号は周年記念号ですから、ちょうど連載が入れ替わるタイミングだったんですよ。
木村 そしたら、ダ・ヴィンチニュースの編集さんから、「レタス完売続出です」ってメールがきてびっくりしたんです。全然知らなかったので。
松田 ははは、そうですよね。
木村 さっそく久々に買って読んでみたら、デザインから何からすべて変わってるじゃないですか! これはすごいなぁと。よっぽど恐ろしい人が編集長やってるんだろうと思ってました(笑)。
松田 (笑)人が言うほど恐ろしくはないと思いますよ。
木村 松田さんはコミックエッセイを長く担当してらっしゃったんですよね。『レタスクラブ』の編集長になった経緯は?
松田 組織変更で、『レタスクラブ』編集部が、私の在籍していた局に統合されることになりまして、その流れで。『レタスクラブ』のコンテンツ力を強化する必要があったので、コミックエッセイの連載を入れはじめて、今、コミックエッセイが9本載っています。
木村 そこまで入ってる生活情報誌ってないですよね。
松田 あっても1本とか2本ですもんね。
木村 それも含めて、デザインも言葉づかいも以前の『レタスクラブ』とくらべると、とても1、2年しか違う雑誌とは思えないです。雑誌名も、ロゴは同じなのに全然違ってみえますし。
松田 ロゴの字間をちょっと開けたんです。ロゴを変更することも考えましたが、愛着をもってくださっている読者も多いので、全面変更はやめました。あと表紙にあるタイトルの方向性も変えました。今までは食材をそのままタイトルにしているものが多かったのですが、もう少し読者の共感を呼ぶものにしたいと思ってます。
■読者アンケートは「ぶっちゃけ、今月号どーでした?」

木村 読者が雑誌に求めてるものって、完全に「共感」なんですよね。知りたかったことが載っていて、この雑誌に共感できるなっていう企画があれば買ってもらえる。『レタスクラブ』の6月号と7月号でも少し変化があって、読者アンケートページのタイトルが、「ぶっちゃけ、今月号どーでした?」となっていて、これいいなあって思いました。
松田 よくご存じですね! これは『LDK』さんから学んだんですよ。読者ページで、どの記事がつまらなかったかもちゃんと聞いて公開してますよね。あの姿勢が素晴らしいなと思ったんです。

木村 自分が担当した記事の支持率が低かったという事実も、編集者はわかったほうがいいんですよ。
松田 それってすごく大事。ところで、『LDK』の表まわりには広告入ってますよね?
木村 雑誌の体裁を保つために、広告はLDKでは取り上げないジャンルが激安で入っています。広告の問い合わせはたくさんいただくんですけど、断ってるんですよ。広告にみえないタイアップ記事の依頼も来ますし、目先の利益で考えればそりゃほしいんですけど、それをやっちゃうと雑誌としての価値がなくなってしまう。商品を徹底的にテストする方式でやっていくためには、広告はあきらめるしかないんです。
松田 まさに現代版『暮らしの手帖』(笑)。でも、検証結果でランキング1位になった商品は、“『LDK』で1位!”って、メーカー側は宣伝したいですよね。
木村 それについては、A評価をとった商品のメーカーから、「アットコスメ」のランキングシールみたいなことができないかというアプローチがきているので、まだ本格的ではないですが少しずつ始めています。あまりにも制作費と収入のバランスが悪くて、本誌の原価率がおかしくなってるので(笑)。
■雑誌が売れないのは時代のせいじゃない
松田 いや、ここまで高いクオリティを維持するってすごいことですよ。
木村 それがやっぱり一番大切なことで、「雑誌はもう売れないよね」って言う方は当たり前のように時代のせいにしますよね。
松田 うん、するする。
木村 でもそれって、作り手側の責任だということをしっかり自覚しないと、何でも時代のせいにするのは怖いなと思うんですよ。
松田 おっしゃるとおり。
木村 雑誌って、どうにでも変えられるじゃないですか。そのとき、どっちの方向をみて、誰のためにつくっているのかが大事で、それがブレた瞬間に部数は落ちていきますから。
松田 『レタスクラブ』は地方での売れ行きがいいですね。地方は書店がどんどん減ってきているので、コンビニとかスーパーでの販売が好調です。
木村 『LDK』もコンビニはいいですね。あとアマゾンでもよく売れてます。そういえば、読者アンケートの中の「よく読む雑誌」の項目から『レタスクラブ』は1年以上前にはずしちゃったんですよ。
松田 そうそう、失礼しちゃうわ(笑)。
木村 でも、『レタスクラブ』にも『LDK』は入ってないですよね。
松田 え、入ってませんでした? 失礼ですね、お互いにね(笑)。
木村 でも、部数が増えてると聞いたあと、WEBアンケートの「よく読む雑誌」の選択肢に入れてみたんですよ。そしたら15%ほどかぶってたんです。昔はアンケートの選択肢に入れてもそこまでの数字はなかったので、確かに売れているんだなと思って。
松田 え、嬉しい。うちも次から、アンケート項目に入れさせていただきます。【続く】
【中編】は7月27日、【後編】は7月28日に公開予定!
取材・文=樺山美夏
