暴走する北朝鮮を誰が止めるのか! 米『ニューヨーク・タイムズ』コラムニストが分析する中国の世界戦略と日本の針路
公開日:2017/12/11

アメリカ本土に向けて弾道ミサイルの発射実験をくり返している北朝鮮に対して、圧倒的な軍事力を背景にチキンレースを続けているかのようなトランプ米大統領。そんな中、中国の習近平総書記(国家主席)は北京の人民大会の開幕式において、北朝鮮情勢を念頭に「武力を妄信してはならない」と演説し、軍事力行使を排除しないトランプ米政権をけん制したことは記憶に新しい。
揺れ動く米中間の狭間で、はたして日本はどのような戦略を描き、自主的な外交を展開していけばいいのか…!? そんな懸念を抱いている人々にとって冷静な現状分析の視点を提示してくれる一冊が、本書『習近平はトランプをどう迎え撃つか』(加藤嘉一/潮新書)である。
著者は、国際コラムニストの加藤嘉一氏。加藤氏は2003年に単身で北京大学に国費留学し、同大学研究員並びに慶應義塾大学SFC研究所上席職員を経て、2012年に渡米。ハーバード大学フェロー、ジョンズポプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員などを経て、現在は遼寧大学国際関係学院客員教授、米『ニューヨーク・タイムズ』中国版コラムニストなどの肩書きを持ち、年間300以上の取材を受け、200本以上のコラムを書いている新進気鋭のコラムニストだ。
台頭する中国の対外戦略をテーマにした本書は、主に対米関係を軸に、北朝鮮問題、南シナ海問題、台湾問題の3つをケーススタディとして取り上げ、習近平時代の中国外交がアジア太平洋地域に与えうるインパクトを検証しつつ、その中でトランプ政権の誕生前後から現在に至るまでの米中の攻防を踏まえながら北東アジア情勢を分析している。
おそらく、誰もが今最も気がかりなのは、緊張感が高まる北朝鮮問題に対して「中国はどのような対応をするのか?」だろう。その点に関して、著者は次のような見方を示している。
「北朝鮮が開発を進めているという大陸間弾道ミサイルが米国の西海岸まで届くことが”確実”と米国が判断すれば、米国は北朝鮮に対して何からの軍事攻撃を仕掛ける可能性が一気に高くなる。それは中国の望むべき局面ではまったくないが、現状から見る限り、中国が北朝鮮への石油を含めたすべてのエネルギー・食糧援助を停止することを通じて、金正恩政権を内部から”崩壊”させる気配も見られない」
「中国としてもすでに十分やっかいな存在である金正恩という若い指導者によって運営されている北朝鮮の政権を『米国が”代わりに”壊滅させてくれる状況も考え方によっては中国にとって得になるのかもしれない』(全国政治協商会議外事委員会スタッフ)と考えているのだろうか」
では、そんな既存の大国・米国と台頭する中国の狭間に置かれた日本は、今後どのような針路を取るべきなのか? 著者は終章で、米国の同盟国という立場を堅持しながらも、中国の隣国として、”独立自主”の外交を展開していく必要性を説く。
その背景として、台湾問題が引き金になって米国が中国と戦争をしたくなる可能性があるものの、「それは米国の利益にはならない」とするシカゴ大学のジョン・ミアシャイマーの論考を引き合いに出して、「だからこそ、米国は本来”独立志向”のある民進党の蔡英文総統に対して中国からの武力行使を誘発することが必至である”台湾独立宣言”を制止するのだろう」と述べている。
そしてその上で、米国が台湾を見放す選択肢を視野に入れ、「日本としても、今のうちから官民を超えて想像力を膨らませ、シナリオセッティングしておく必要がある」と問題提起している。
このように、本書は米中それぞれの思惑を踏まえた上で、両国とは立場の異なる日本の外交政策のあり方についても論じており、この点においても有益な情報源となるだろう。
文=小笠原英晃
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