教育の専門家が語る一生役に立つ「学び」とは。21世紀を生きる私たちに必要なのは新しい知性!
公開日:2017/12/19

21世紀の社会を生き抜く人材育成のために、詰め込み型の教育から、学習者主体のアクティブ・ラーニングへ。戦後最大といわれる2020年の教育改革に向けて、今、日本の学校教育は大きく揺れている。そんな中、本当の「学び」とはどういうものなのか、21世紀に必要な新しい知性をどうしたら身に付けられるのか、受験生でなくても気になる問いに答えてくれるのが、本書『人生を豊かにする学び方』(汐見稔幸/筑摩書房)だ。
NHKの「すくすく子育て」でおなじみの著者について少し触れると、汐見稔幸氏は1947年大阪府に生まれ、東京大学名誉教授、白梅学園大学・同短期大学学長を務めている。専門は教育学・教育人間学・育児学で、代表的な著書に『子どもが育つお母さんの言葉がけ』(汐見稔幸/PHP研究所)、『小学生 学力を伸ばす 生きる力を育てる』(汐見稔幸/主婦の友社)などがある。
第一線で活躍する教育の専門家である汐見氏は「学び」の目的とは、「どうしたら自由になれるか」を考え続けるためだという。要は、偏見や思い込みから解放され、未来の選択肢を増やすために「学び」が大切だと説いているのだ。もちろん、汐見氏が語る「学び」とは、学校の授業や受験勉強などに限定されるものではない。究極は「一人一人が自分らしい生き方を模索していくため」だという。反対に、一番ダメな勉強として「ただただ言われた通りにやる」とか、「機械的に何の工夫もなく丸暗記する」ような、従来の勉強法だと嘆いている。
一方、「学び」に対しての考え方の変化は日本に限ったものではないという。国際的な組織のOECDでは、21世紀に求められる知性として、3つの側面からなる「キー・コンピテンシー(主要能力)」という概念を唱えている。詳細については本書に委ねるが、要は「人と意見が違ったとき、大いに議論をして、自分を押し通すわけでも、相手に屈服するわけでもなく、ひとつの共同の解決を見つける力」が必要だというのだ。
他にも、アメリカでは「21世紀型スキル(ATC21S)」という概念を提唱し、4つの領域と10のスキルを学ぶことで、多様な価値観を持った人同士のコミュニケーションに対処しようとしている。キー・コンピテンシーと比べると、アメリカの「21世紀型スキル」はコンピューターを有効に使うことをうたい、AIにできることは任せて、「何か落ち着く」「美しい」というような感情をベースにした感性を磨くことに力を入れているという。
もう一つ、日本でも既に導入している学校もあるが、世界共通の大学入学資格「国際バカロレア」に関しても詳細が載っているので、ぜひ本書で確認してほしい。
本著は「ちくまプリマー新書」のなかの一冊だ。若い読者に向けての啓蒙書だけに、表現は平易だが、「学び」を通じて人生を考えさせられる内容になっている。中高生だけが読むのではもったいない。「学び」というのは、「人間の発達をいろいろな角度で促す行為」だという。大人だって、学び続ける必要があるのだ。
文=松本敦子
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