乃木坂46・齋藤飛鳥の『トラペジウム』読書感想文
公開日:2018/12/21

眉を下げて笑う。
『トラペジウム』の話をするかずみさん(編注:高山一実)は、いつにも増して早口だった。
この作品を通して私はかずみさんのことを考え、理解し、すべて知り尽くした気になって楽しんでいる。
かずみさんの文章はとても優しい。説明的で分かりやすく、読み手を導く細かな工夫はそう簡単に出来るものではないんじゃないかと思った。
しかしそう感じたとき、同時に気づくことがあったのだ。
読み進めていくと頭に浮かぶ、かずみさんの悪戯っぽい笑顔。
この人いま楽しんでいるぞ。
この人読み手を“グラつかせにきている”な……。
基本的には読み手に委ねてくれる文章の波。時々それに乗れなくなる。私はどうも、それが好きらしい。
小説家としてのプライドを微かに感じるような気がするのだ。いかにこの作品を大事にしているのかがよく分かる。
文章には人となりが表れる。というのが本当だとして、それに当たり前に恐怖を抱くのが齋藤飛鳥だ。
しかし高山一実先生。
貴女はこちら側の人間では無いのやもしれない。もしかすると貴女は、そんな恐怖に出会う必要が無いのやもしれない。
文章を書いて損をすることは確かにあるはずだが、貴女はそれを避けて通ることができるのではないか。むしろそれすらも有効に利用出来てしまうのではないか。そんな人がいるのか。
夢のある小説家だな、素直にそう思った。
非常に羨ましい。見事だとしか言いようがない。アイドル兼小説家として歴史に刻まれてもいい。それ程までに素晴らしい。
思わず自分とかずみさんを、こちらとあちらの世界で分けてしまうことも許してほしい。
乗りに乗ってきたが、私はいま大真面目である。
ストレートに褒めるのが照れ臭い。
そしてアイドルについても小説についても、専門的なことを何一つ知らない。だからこうして逃げるのだ。
逃げてばかりの毎日。この作品を参考に、自身を改めてみようと思った。かずみさん、ありがとう。