滝沢カレンさんのレシピ本が、料理レシピ本大賞2021大賞受賞!「大賞はみなさんと一緒にいただいた気持ちです」【インタビュー&作ってみた】
公開日:2021/10/16
連日TVに出演し、独特な言い回しや感性で注目を集め続けている滝沢カレンさん。先日、そんな滝沢カレンさんが手掛けたレシピ本『カレンの台所』(滝沢カレン/サンクチュアリ出版)が料理レシピ本大賞2021 in Japanで【料理部門】大賞を受賞した。

本書は、レシピ本でありながら分量や番号をふった手順などが一切書かれておらず、その代わりにまるで調理工程が物語であるかのようなストーリーとして描かれている本。滝沢さんらしい面白楽しい文章が人気で、20万5000部突破の大ベストセラーとなっている。
■ハンバーグは熱血師匠?

ダ・ヴィンチニュースでは、以前も滝沢さんにインタビューをしているが、今回大賞を受賞ということで改めてお話をうかがった。

――料理レシピ本大賞 【料理部門】大賞を受賞した今のお気持ちを教えてください。
滝沢カレンさん(以下、滝沢):大賞という大きな印をいただき、時間がたちようやく冷静に喜べるようになってきました。たくさんの方が「意外と作れる!」と言ってくださいます。自分が見ていた景色をみなさんが理解して、ご自分の色に変えてくれたことに感謝しかありません。
――読んだら作ってみたくなる、と話題ですよね。
滝沢:私の本が作らせているのではなく、それぞれご自分の感覚が誘導してくれているのです。私の本はその道に立つ看板のようなものだと思っています。なので、大賞はみなさんと一緒にいただいた気持ちです。
――どの料理もおいしそうですが、本書の中で一番よく作る料理は何ですか?
滝沢:一番お世話になっているのは、やはりハンバーグだと思います。唐揚げとは犬猿の仲になった時代もありましたが、ハンバーグとはそこまでこじれる関係になることもなく、10代のうちに出会った熱血師匠のような存在がハンバーグです。
――熱血師匠?
滝沢:「丁寧に作れば、わしはへそ曲げんぞ」と伝えてくれたような気がして。それからハンバーグとはいい仲になりました。
――前回のインタビューでラザニアは特別なお気に入りと話していましたが、2位、3位として浮かぶものはありますか?
滝沢:みんな大好きな料理たちですが、特別な存在の中の2位、ということなら「豚の角煮」、3位は「グリーンカレー」かなと思います。平和な毎日にちょっとしたチャレンジをみんなからもらっています。

――以前、「食材を選ぶときに野菜たちが暴れだす」とおっしゃっていましたが、「私たち相性いいな」と思うことの多い野菜はありますか?
滝沢:相性で言ったら、長年野菜室に居座る玉ねぎかと思います。どんなに新人野菜が入ってきて自分の順番が後回しにされたり居場所を狭くされたりしてもじっと耐え抜く生命力には、いつも感謝しています。玉ねぎとは切っても切れない仲になっているのだと思います。
――次回作は考えていますか?
滝沢:考えていません。『カレンの台所』は、私にとっては強いきっかけがあり歩き出したことでした。きっかけややる気は自分の中の扇風機のスイッチのようなものです。誰かに何かを届けるとき、挑戦するときはいつも強風でいたいです。なので次にくる強風に備えます。でも、野菜たちが主役の世界で絵本を描いてみたいです。絵と文字が混ざり合う世界に私が加われたら、こんなに幸せなことはありません。

食材とも本とも真摯に向き合う滝沢さんが作る料理たち。筆者もそんな滝沢さんの描くストーリーを追い、感覚に誘導される料理を体験してみたいっ……! ということで、本書の中から滝沢さんが一番よく作るという「ハンバーグ」を作ってみた。
■「ハンバーグ」(P.18~P.23)作ってみた!
まずは、このハンバーグの作り方が書かれたページ(一部)を見てほしい。

材料の部分だけでも「当たり前に混ざり合う合いびき肉、目つぶし覚悟の玉ねぎ、そして食品界のダイヤモンドな卵、あとは湯に入れるとふやけるお麩」と思わずその様子を想像してしまう表現が並んでいる。この滝沢さんの表現を脳内に落とし込み、自分の脳内に浮かぶ映像と共鳴させていく感覚は、まさに小説を読み進めているような気分だった。
こんちくしょうと混ぜて食べたい形にまとめてお片付けをし、フライパンに全員が窮屈じゃなく話せているなという間隔に並べて、茶色のあったかそうな服を着ていたらひっくり返す。そんな物語に沿って作りできあがったのがこちら。

ソースは2種類紹介されていたが、今回はバター、醤油、酒、みりん、砂糖と大根おろし、大葉で作る和風を選択した。筆者は普段つなぎにパン粉を使っているのだが、お麩を使ったハンバーグはいつもより肉感がしっかり、それでいてジューシーに仕上がったような気がする。おいしい……! 肉々しさがありつつも、和風の香ばしいソースと大葉、大根おろしのさっぱり感でいくらでも食べられてしまいそう。
分量は一切書かれていないのに、なぜかイメージが頭に浮かんで分かってしまう不思議なこの『カレンの台所』。滝沢さんの描く食材たちの物語を楽しみつつ、食材たちと一緒に作っていくという新たな料理の世界を堪能しては?
調理、文=月乃雫