益田ミリ、4年半ぶりの書き下ろしエッセイ!「四葉のクローバー」/小さいわたし②
公開日:2022/6/14
子ども時代を、子ども目線でえがく。益田ミリ、4年半ぶりの書き下ろしエッセイ『小さいわたし』。幼い頃、胸に抱いた繊細な気持ちを、丁寧に、みずみずしくつづります。「入学式に行きたくない」「線香花火」「キンモクセイ」「サンタさんの家」など、四季を感じるエピソードも収録。かけがえのない一瞬を切り取った、宝物のような春夏秋冬。38点の描き下ろしカラーイラストも掲載!
四葉のクローバー
三角公園は三角形だから三角公園。名前をつけた人はわからない。おとなかもしれないし、こどもかもしれない。でもたぶんこどもと思っている。
三角公園にはシーソーがある。砂場もある。まわりに木があって草が生えている。
「クローバーの葉っぱは三枚だけど、前に四葉のクローバーを見つけたんだよ」
いっしょに遊んでいた子が言った。
「どこにあった?」
と聞いたら、「このあたり」と言うので探してみた。ずっと探していると「あった!」とその子が言った。
葉っぱが四枚あった。四葉のクローバーだ。わたしも四葉のクローバーがどうしてもほしい。また探してみたけれど、ぜんぜん見つからなかった。
「もうないみたい」
わたしは言った。
「葉っぱをのりで貼って四葉にすればいいんじゃない?」
その子が言った。
そんなことをしてもいいのかな。でも、すごくおもしろそう。わたしは三葉のクローバーをふたつ摘んで家に帰った。
「のり貸して!」
パパに言うと「なんか作るの?」と聞かれたけれど「内緒!」と答えた。それから「ぜったい、見ないで!」と言った。
三葉の葉っぱを一枚ちぎってもうひとつの三葉にのりで貼りつけた。本物の四葉みたいだ。ひっぱると取れてしまうけれど、そっと持てば大丈夫。
「三角公園に四葉のクローバーがあった!」
わたしはうその四葉のクローバーをパパに見せた。
「おお、すごい!」
「のりで貼ったんだよ。四葉と思った?」
「うん、ぜんぜんわからなかった」
パパは言った。
三角公園のクローバーをぜんぶ四葉のクローバーにしたら、みんなびっくりするだろう。
次の日、わたしはのりを持って三角公園まで走って行った。
それからうその四葉のクローバーを三個作り、たくさんあるからやっぱりやめた。
