DAOKO『ワンルーム・シーサイド・ステップ』特設サイト

2017/8/18

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌に抜擢されたことで話題を集めているミステリアスなシンガー、DAOKOさんの初小説『ワンルーム・シーサイド・ステップ』。その関連情報をまとめた特設サイトです。

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あらすじ


イラストレーターとしての成功を夢見て、渋谷へと引っ越してきた〈渚〉。はじめての一人暮らしで心細さを感じる中、ひょんなきっかけから同じマンションに住む良仁と知り合う。次第に膨らんでいく恋心。ところが、彼には恋人がいるという噂を耳にして――。写真、絵も自ら手掛けたDAOKOの初小説。

試し読み

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インタビュー

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌に抜擢されたことで話題を集めているミステリアスなシンガー、DAOKO。女子高生でメジャーデビューし、数々のクリエイターと共演してきたDAOKOは、映画公開に先駆けた8月10日に初小説を刊行する。

小説に挑戦したことで 新たな景色が見えてきた

DAOKO

 歌手として着実にステップアップを重ねているDAOKOはまだ20歳。その姿は、表舞台を目指す若者たちのゴール地点に見えるかもしれない。しかし、彼女は決して現状に満足していない。誰もがうらやむような道を歩みながらも、挑戦することをやめようとしない。彼女が自己表現のフィールドとして次に選んだのは“小説”だった。その処女作となるのが、雑誌『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)で連載中の『ワンルーム・シーサイド・ステップ』だ。

 しかし、歌詞と小説は異なる。メロディにのせるフレーズを巧みに生み出せる者が、素晴らしい小説を書けるとは限らない。それはDAOKO自身も感じていたことだった。その一方で、自身と向き合ったとき「やっぱり私は“言葉”が好きだ」とも実感したという。

「小説を書くと決めてから、吉本ばななさんの『キッチン』を読んだんです。作中に流れている空気感がすごく美しくて、魅了されました。その読書体験が私の血肉になっていて、作品に奥行きをもたらしてくれたのではないかと思います。もちろん、小説は言葉の海のようで、先が見えずに怖気づくこともありました。でも、ぐんぐん進んでいきたいという活力にも満ちあふれて、音楽投稿をはじめた14歳の頃を思い出しました。それと同時に、歌詞でしか表現できないものもあることに気がついて。小説を書いたことで、制約のある歌詞の美しさを知ることができたんです」

連載誌面や単行本に使用されるイラスト、写真もDAOKO自らが手掛ける

自分の価値を認め 守るために表現をしてきた

〈絵を描くことは、自己防衛〉。これは『ワンルーム・シーサイド・ステップ』の主人公であるイラストレーターの〈渚〉が内面を吐露するシーンに登場する印象的な一文だ。〈渚〉は自分を守るために、創作活動に没頭する。

「私が歌うようになったのは、自己肯定をするためだったんです。そのためには自己表現をしなければならないと思っていて、つまりは生きるためでした。そう考えると、私自身も自己防衛をしているのかもしれませんね。根本的に自分に自信がないんです」

 フラストレーションに苛まれていた10代の頃、DAOKOは音楽投稿をはじめた。生み出したものが評価されることで、生きる意味が見出だせると信じて。しかし、それは苦しみを伴った。創作のために自分の弱さと向き合うなんて、つらい。誰だって、穏やかに生きていきたい。

「渚もそう願っていますが、私自身、『心が凪になれたらいいのにね』と言われたことがあるんです。でも、心に波風が立ち、情緒があるからこそ作品が生み出せるのだとも思います。もちろん、穏やかであることへの憧れもあります。ただ、そうなってしまったら表現しようとは思わなくなってしまいそうで……」

 きっとDAOKOにとって、表現できなくなってしまうことは“死”とイコールなのだろう。だからこそ、凪よりも嵐を求める。それは本作の〈渚〉も同様だ。ラストシーンで〈渚〉は、信じられないような行動に出る。そこには、アーティストとして生きるDAOKOの覚悟が滲んでいるようにも読める。

「定期的に刺激を与えないと、私は単調化してしまうと思うんです。それは生きづらいことでもありますが、安定を求めて作品を生み出せなくなってしまうことのほうがつらいので、表現者はあえて自分を追い込んでしまうものだと思います」

 DAOKOの夢はまだまだ道半ば。最終的には「トータルセルフプロデュースできるアーティストになりたい」という。小説のカバーに使用された写真やイラストを自ら手掛けたことからも、その目標への志は確かに感じられるだろう。

「長編小説もまた書いてみたいですし、短編集や詩画集にもチャレンジしてみたいと思っています。ファンタジーな世界観が好きなので、絵本も書いてみたいですね」

だをこ●1997年、東京都出身。ラップシンガー。中学3年生よりニコニコ動画に楽曲を投稿しはじめ、各界のクリエイターたちの注目を集める。2014年には映画『渇き。』に挿入歌『Fog』を提供したことでも話題に。15年3月に1stアルバム『DAOKO』にてメジャーデビューを果たし、以降、音楽のみならず活躍のフィールドを広げている。

取材・文=五十嵐 大

PV

『ワンルーム・シーサイド・ステップ』のPVをDAOKOさんのYouTube公式チャンネルでご覧頂けます。
daoko_jp