視覚障害者の男性を支えた小学生たちの心温まる実話絵本『バスが来ましたよ』<ブランニュープラチナブック>

文芸・カルチャー

公開日:2023/3/9

『バスが来ましたよ』と声をかけて視覚障害者の男性をサポートした「小さな手のリレー」

バスが来ましたよ

文:由美村 嬉々絵:松本 春野

みどころ

「バスが来ましたよ」
この一言が、病気で全盲となった山崎さんの通勤を10年以上支えました。
声をかけたのは山崎さんと同じバスで小学校に通う、さきちゃん。さきちゃんが卒業してもその声掛けはさきちゃんの妹や他の子へと引き継がれ、続いていきました。

もしかすると、「その話知ってるかも」と思われた方もいるかもしれません。それもそのはず、これは実際にあった出来事で、テレビやラジオで話題にもなりました。この話をオンラインニュースで知った作者の由美村嬉々さんは「ぜひ絵本にしたい」と思い立ち、絵を担当した松本春野さんと一緒に、山崎さんの住む和歌山へ何度も赴いて取材を重ねたのです。

穏やかなタッチで描かれた子どもたちは、みんなやさしい笑顔をしています。ひょっとしたら山崎さんも、こんな風に心の中で子どもたちの姿を思い描いていたのかしらと想像すると、その心にそっと触れるような感覚になります。

実は、さきちゃんをはじめとする小学校の子どもたちは、自発的に山崎さんへの声かけを引き継いで、続けていたそうです。また、さきちゃんが通っていた学校と山崎さんが交流する中で、さきちゃんよりも先に山崎さんを支えてくれた児童がいたことや、いつも助けてくれる子がお休みのときは、別の子が助けてくれていたこともわかったそう。

思いやりのバトンを渡し続けてきた子どもたちの優しさ、そしてその親切に支えられた山崎さんの幸せな気持ちを、ぜひ絵本でかみしめてください。

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レビューのご紹介

現実世界もこんなにすてき

うちの子どもは、「本の世界はすべてフィクション」だと思っていました。でも、このおはなしは実話をもとにしたもの。そのことに何より驚いていました。 本は空想上の事だけではなく、本当に起きたことが書かれていることもある。そして、まるで作られたかような完璧に素敵なお話が現実に起きている。

このことを知らせてくれたこの作品によって、よりリアリティをもつ深い読書体験をさせてくれたと思っています。

学校の勉強ができるできない、誰かより力をもつもたない、そんな価値観以外にもこんな人間力が存在するよ、という教科書のようなおはなしです。

(だっこらっこさん)

意外にお気に入り

やさしい絵のタッチ、ほどよい長さの文章に惹かれ、4歳の子供に読みました。 はじめは「白杖」の意味もわからず、腰の曲がったご老人が使う杖と混同していたようです。ただ、「目の見えない人が、道になにか危ないものがないか確かめるために使うものなんだよ」と簡単に説明したところ、黙って深く頷いていました。(こんな説明でよかったか自信はありませんが…)

どこまで伝わったかわかりませんが、何度もこの本を読み返しているうちになんとなく伝わっているのではないかと期待しています。少なくとも、最初に読んだ時にしていた「こういうやつ?」と杖をついて歩くご老人の真似をすることは、それ以降なくなりました。 小さいうちから白杖の存在をふわっと意識させるにはとても良い本かと思います。

4歳になりたての子には難しいかな~なんて心配していましたが、意外にも気に入ったようで、読み聞かせだけでなく自分なりに一生懸命音読していました。 子どもなりに、絵本に出てくる子どもたちのやさしさの連鎖を受け取って感じているのかな…とほっこりしました。

(たちばなさん)

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