ちょっとだけ夜が待ち遠しくなる…『きみだけの夜のともだち』 【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/3/30

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年2月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

ガスパールは、くらやみがこわいのです。そんな時、彼は思います。ぼくに、夜だけのともだちがいてくれればいいのに。 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『きみだけの夜のともだち』。フランスからやってきた、”夜の時間” をテーマにした美しい翻訳絵本。どんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

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ちょっとだけ夜が待ち遠しくなる…『きみだけの夜のともだち』

きみだけの夜のともだち

作:セング・ソウン・ラタナヴァン訳:西加奈子

みどころ

ガスパールは夜になると、ちょっぴりこわがりになります。みんなが眠っているあいだも、ガスパールは眠ることができません。心の中でどんなに素敵な冒険に出ても、終わりがきます。その後、考えてしまうのです。なくしもののこと、「ずっと」の向こう側にあるもののこと、夜にひそんでいるおばけのこと。

「なにか、きこえた?」

ガスパールは、くらやみがこわいのです。そんな時、彼は思います。ぼくに、夜だけのともだちがいてくれればいいのに。そのとき。

「わたしをよんだ?」

ベッドの下の扉からあらわれたのは、小さなネズミ。ネズミは、驚いているガスパールを家の中のあらゆる部屋につれていき、夜のともだちに会わせてくれます。それぞれに悩みをかかえていた彼らとガスパールは、すぐに仲良くなっていき、楽しい時間を過ごします。やがて……。

小さな、そしてとても居心地のいいガスパールの部屋。ところが、夜になっても眠ることのできないガスパールの心は、旅にでるのです。

ネズミ、モグラ、ウサギの次に会ったのは、お風呂場でふるえているペンギン。「あたし、水がこわいの。ジャンプするのもこわいし、まっくらなのもこわい。クモも雪もほうれんそうも……」。なにかをこわいと思うその気持ちがよくわかるガスパールは、もうペンギンの夜だけのともだちです。

誰かに相談するほどではないけれど、泣いてしまうほどでもないけれど。でもやっぱり、夜はちょっとこわくて苦手。そんな悩みをかかえている子どもたちにぴったりな絵本が届きました。眠れない夜の世界は心細いけれど、こんな風に自分だけの友だちが待っていたとしたら、ちょっとだけ夜が待ち遠しくなるかもしれませんよね。

想像力豊かな子どもたちの頭の中の、そのほんの少し先の世界を、彩り豊かに、美しく、愛らしく、そして楽しげに描いてくれるこの絵本。フランスの名高い文学賞、2021年ランデルノー賞作品『Gaspard dans la nuit』の日本語翻訳版です。訳者は、自身も一児の母である作家の西加奈子さん。うっとり眺めるために、あるいは小さな友だちに会うために。枕もとにおいておきたくなる優しい一冊です。

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編集長のおすすめポイントは……

静かに、そしてにぎやかに。

想像をふくらませれば、ふくらませるほど。たくさんの冒険や物語を知っていれば、いるほど。その終わりに不安をいだき、なんだか心細くなり、まっくらになる夜が怖くなってくるものなのかもしれません。この絵本は、そんな繊細な心に強い言葉をかけるわけでもなく、克服をするようにさとすわけでもなく。ただ近くにそっと寄りそって、一緒におしゃべりしたり、遊んだり。静かに、そしてにぎやかに、「大丈夫だよ」とささやき続けてくれるのです。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

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