ようこそ、タイクツの時間の中へ 『なんにもおきない まほうのいちにち』 【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

公開日:2023/7/4

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2023年5月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

雨の庭では、世界中のタイクツがぼくを待ち構えている。おまけにゲームをなくしてしまった!毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『なんにもおきない まほうのいちにち』。ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞している本作品、どんな内容なのでしょう。

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

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ようこそ、タイクツの時間の中へ 『なんにもおきない まほうのいちにち』

なんにもおきない まほうのいちにち

作:ベアトリーチェ・アレマーニャ訳:関口 英子

みどころ

お休みの度にママと来る森の中の家。毎日書きものをしているママの横で、ぼくは何時間でもゲームをする。

「いいかげん、ゲームはやめたらどう? 今日も一日中、何にもしないつもり?」

いつもの通りママが怒り、ゲームを取りあげる。そしてぼくは、いつもの通りゲームを取りかえし、外へ出る。雨の庭では、世界中のタイクツがぼくを待ち構えている。おまけにゲームをなくしてしまった! ゲームなしで、ぼくはどうすればいい? するとその時、ぼくの前を通りすぎていったのは、大きなカタツムリたちの行列。そっちには一体なにがあるのだろう。山道を歩いていってみると……。

世界が注目するイタリア生まれの絵本作家ベアトリーチェ・アレマーニャの代表作である本書は、世界10か国以上に翻訳され、ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞。タイクツを持て余していた少年が、自然の不思議に出会って心が躍動していく様子を、美しく印象的に描き出します。

地面がきらきらと輝きだし、太陽の光はシャワーのように降りそそぎ、自分の心臓の音に驚いて、転がって見上げた世界が全て新しいものに見える。こんなに楽しいことを、どうして今までしてこなかったんだろう!

本当にそう。くるくると変化する少年の表情、目が離せなくなるほど魅力的な森の景色の数々、そして訪れるママとぼくの何にもしない静かで幸せな時間。それらを味わいながら、心から共感してしまうのです。

本作品を「絵本ナビ」で購入 >

 

編集長のおすすめポイントは……

タイクツって自由!

したいことなんて、ゲームのほかには何にもない。ただ火星人をやっつけるだけ。それなのに、ゲームなしでどう過ごしたらいい? そんな風に思っている子どもたちは、世界中にたくさんいるでしょう。でも、ためしに今手にしているゲームを置いて、タイクツの時間の中に飛びこんでみて! 何もすることがないって、すごいこと。タイクツにこそ、自由があるってこと。自分が動けば楽しみはいくらでも見つけられるってこと。そんな素敵なことに気づかせてくれる絵本です。大人にもおすすめ。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。

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