トイレに行くのが楽しくなる“うんぴー”が誕生するまで。原あいみさんインタビュー(パイ インターナショナル)

文芸・カルチャー

公開日:2023/8/21

「トイレのさきは、どこにつながっているんだろう?」
楽しくトイレトレーニングできる絵本『うんぴー』が発売となりました! 本作の主人公で、可愛くてたのもしい“うんぴー”誕生の秘密を作者の原あいみさんにうかがいました。

子どもにとってはうんちは分身? それともお友達?

現在、私はフリーランスのイラストレーターですが、昨年までデザイン会社に所属をしていました。チームメンバーと「書籍会議」という定例会をしていて、書籍や絵本のアイデアを持ちより、みんなでブレストして提案書にする、という作業を繰り返していました。
そこで、あるパパ社員から「トイトレが楽しくなるような絵本が作りたい」というアイデアがあがり、うんちのキャラクターが、トイレから流されるたびに色々な世界に行く絵本という企画の種をもらいました。私は「これは面白い!」と直感的に思ったので、そこからうんちのキャラクターを考えたり、どんな世界に行くかを考えたりと、実際に絵を描きながらみんなに意見をもらい、提案書の形に仕上げていきました。
 
 私の娘もそうだったのですが、トイトレを始めた頃の小さな子って、流れていく自分のうんちに向かって「バイバーイ」と手を振りますよね。メンバーは育児真っ最中のパパ、ママが多かったのですが、「うちもする!」「うちもする!」とみんなが言っていました。
この頃の子どもにとって「うんち」は、自分の分身、もしくはお友達のような存在なんじゃないかなぁと感じていたので、毎回トイレで自分のうんちを色々な世界に送り出すお話、というのは、子どもにとっても親近感を持って楽しめるんじゃないかと感じました。
(ちなみに提案書のタイトルは「うんぴー きょうもいってらっしゃい!」でした。)

『うんぴー』より

うんぴーができるまで

小さな子どもたちが自分の「うんち」を、「汚いもの」とか「臭いもの」というマイナスな印象ではない感情でとらえているなと子育て中に感じていたのが、うんぴーというキャラクターづくりや、物語に反映されていると思います。
子どもは毎日のうんちの形を何かに例えたり、バイバイと声をかけたりします。立派なうんちが出たことも、大きな声で教えてくれたりします。この頃ならではの、「子ども」と「うんち」の貴重な関係を、大切にお話にとじ込めたいなぁという思いで考えました。
うんちのキャラクターを考えるにあたって、まず名前がほしいなと思いました。そこで、娘がうんちのことを「うんぴ」と言っていたのを借りて「うんぴー」という名前をつけました。
今まであまり見たことのないうんちのキャラクターがいいなぁと思い、なるべくカタチは、いわゆる「ウンコ型」ではないものにしようという思いがあり、いろいろとスケッチを描いて、メンバーに意見をもらいながら詰めていきました。

advertisement
うんぴーの初期スケッチ。右上の子に注目!

最初のスケッチの右の方にある、たらこ唇の子が人気があったので、その子を進化させて、提案書の「うんぴー」になりました。提案書のうんぴーは、ほぼ実際のうんぴーと同じです。

提案書より。最終的に今のうんぴーの形になりました

好奇心旺盛で怖いもの知らず、いつでもマイペースでのんびりやさん

次に、物語を考えるにあたって、うんぴーの性格や特技などを考えていきました。
当初は、ページをめくるごとに、「トイレから色々な世界に行く!」というだけの単純なお話を想定していたのですが、編集さんと協議していく中で、ひとつの世界をクローズアップして、ちゃんと「冒険」させたいね、ということになったので、うんぴーが冒険をする理由や、冒険の中でどんな立ち位置で振る舞うのか、というのを考える必要があったからです。
絵本の物語を考えるのは初めての経験で、限られたページ数、短い言葉で表現することの難しさを改めて感じました。うんぴーにどんなピンチがやってきて、どんな冒険をするのか、を色々なパターンで考えては、娘に聞いてもらっていたのですが「そんなの、冒険じゃないよ」とか、厳しいダメ出しをもらい、考え直す…というのを繰り返していました。「◯◯ちゃん(娘)なら、うんぴーの冒険はどんなのだと思う?」といろいろとヒントももらって助けてもらいました! 言葉の部分では、編集担当さんと何度もキャッチボールをして、たくさんサポートいただきました。

うんぴーは幼い子どもたちの「分身」のような存在でありたいと思っていたので、好奇心旺盛で怖いもの知らず、いつでもマイペースでのんびりやさん、という設定にしました。(私の娘がスーパーマイペースで物怖じしないのんびり屋なので…(笑))
そして、うんちの特性(例えば、形が変わる、色がかわる、大きくなる、細くなる、固くなるなど…)を使って、みんなのためにピンチを切り抜ける、というパターンを考えました。

丁寧に設計されたうんぴーの物語と性格。うんぴーへの愛着がぐっと 湧いてきます!

原あいみさんがお気に入りのシーン

せっかくおトイレから旅立ったのに、カイくんがオムツに戻ってしまうシーンが好きです。(子育て中のあるあるだ! と思って入れました。そんなスムーズにトイトレいかないよねって(笑))
カイくんに応援の手紙を描くシーンがお気に入りです。ちょっとした遊びで、うんぴーからのメッセージをトイレットペーパーに入れたのですが、うんぴーの文字は、拙さが出るように、実は娘に書いてもらいました。

『うんぴー』より

あと、それぞれの世界に行ったうんぴーが「あなたはなにがい(貝)?」とか「なにいも(芋)?」とか、その世界の住人だと思われて、種類を質問されているのに、どこへ行っても「ぼくはうんぴーだよ」と答えるところがとても好きです。何気なく浮かんだ会話だったのですが、後から読み返すと、まるでうんぴーが「ぼくは何者でもない、ぼくはぼくだ!」と言っているようで、好きです。

『うんぴー』より

『うんぴー』の楽しみかた

この絵本は、決して「トイトレがんばろう!」という絵本ではありません。ただただ、読んでくれた子どもたちが、自分の「うんぴー」に対して、「今日はどこに行くのかな??」と想像したりして、親子でお話をしながら、楽しくトイレに行ってくれたらうれしいなと思っています。

『うんぴー』より

うんぴーがでかけていく世界は、ちょっぴりうんぴーに似た子たちがいる世界にしました。みんなの「うんぴー」はどんな世界に行ったのか、どんなお友達に会って、どんな冒険をして帰ってきたのか、ぜひ一緒にお話してみてください! 園でみんなで読んだら、先生やお友達と、おうちで読んだら、お父さんやお母さん、おにいちゃんおねえちゃんと、そんな話をしてくれたら嬉しいです。冒険物語を考える時に、色々な世界の色々なパターンのアイデアを出しましたので、ぜひシリーズ化を目指したいです! みなさん、うんぴーの応援を、どうぞよろしくお願いします!

うんぴー

作:原あいみ

出版社からの内容紹介

うんぴーはカイくんのうんち。ある日、きゅうくつなおむつの中からトイレへ飛び出しました。トイレのトンネルは、おいもやおばけなど、色々な国とつながっています。パンの国では、うんぴーがパン達の手助けをすることに。トイレにいくのが楽しみになる絵本。

あわせて読みたい