大人も楽しいクリスマス絵本&児童書(2023年12月 新刊&おすすめ絵本)

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/14

子どもと一緒にカウントダウンを楽しもうとクリスマスの絵本を開いてみると……わが家のものよりずっと大きくてきらびやかなクリスマスツリーや、本格的なクリスマス料理が並ぶ食卓、耳を澄ませば聞こえてきそうなサンタクロースを乗せたソリの鈴の音……。気がつけば、子ども以上にクリスマスの世界に浸っていることがあります。指折り数えながらサンタクロースを待ちわびた幼い頃のワクワク感が蘇ることも。

童心に戻って大人の方が夢中になってしまう、クリスマス絵本や物語を集めました。
ママ・パパたちも小さい頃から親しんできた『星の王子さま』や『スノーマン』、クリスマス映画の原作になった物語、クリスマスの本場フィンランドの童話……シュールな笑いがあれば幻想的で美しいクリスマスあり、味わうほどにクリスマスの奥深さに魅了されます。

お子さんと一緒に読むのはもちろん楽しいのですが、あえて大人ひとりでじっくりと本を開くひとときもおすすめ。クリスマスまでの一日一日を心ゆくまで楽しんでくださいね。

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金星人にさらわれたり、日にちを間違えたり、こんな困ったサンタ、いる!? 佐々木マキさんのシュールなクリスマス絵本『あんたがサンタ?』

あんたがサンタ?

作:佐々木マキ

出版社からの内容紹介

待望の佐々木マキのクリスマス絵本!サンタにもいろんなサンタがいる…?

のりものよいをする、
ソリからおちる、
金星人にさらわれる、
日にちをまちがえる、
酒場にたちよる、
トナカイにこきつかわれる、
おなじ家になんども行ってしまう、
北極へ帰れない…。
そんなサンタたちをたくさんご紹介する絵本。
まさしく「こまったサンタの実例集!」

よみおわったときに言いたくなるひとことは、え~っ!「あんたがサンタ?」
さあ、今年のクリスマスはユーモアいっぱいで過ごしましょう。

ふわりひらり、雪! 冬が来たらぼくは何をすればいい? さまざまな動物と交わりながら若いキツネがはじめて迎える冬を描く『キツネのはじめてのふゆ』

キツネのはじめてのふゆ

作:マリオン・デーン・バウアー 絵:リチャード・ジョーンズ 訳:横山和江

みどころ

ひとひらの雪がキツネの鼻の上に落ちてきました。

主人公のキツネはまだ親から離れたばかりの若いキツネ。
表情はあどけなく、はじめて迎えた冬に興味津々。
「ぼく なにかしなくていいのかな?」って、毛虫や、森の動物たちに聞いていきます。

おはなしの中で森の生き物の冬越しの様子がわかるのもこの絵本の魅力の一つ。
キツネは森の仲間たちと違って眠くないし、なんだか森の中のいたい気持ちなのです。
どうしてなのでしょう。それは、とてもとても素敵な出会いが待っているから。

原題は「WINTER DANCE」
作者のマリオン・デーン・バウアーさんは、雪を楽しむ機会の多いミネアポリス在住とのこと。
雪景色の中で踊るキツネたちを見てこの作品の着想を得たそうです。
おはなしも素敵ですが、何と言っても絵が魅力的です。
リチャード・ジョーンズさんの絵は静かで温かみを感じさせてくれます。
冬を表現する色がこんなにも温かく感じるなんて。

表紙のキツネの表情のとても可愛らしいこと。読み聞かせの時は表紙をたっぷり見せます。
はじめはあどけなかったキツネが、メスのキツネと出会ってからはりりしい若キツネの表情に。
なんだか胸がキュンとします。

冬の読み聞かせの定番になりそうです。
小さいお子さんと親子で、小学校低学年へクラスの読みきかせにもいいですね。

見張り番以外は出入りできないかげぼうしの国と、街でマッチを売る少女。交錯するふたつのおはなしを安野光雅さんが幻想的に描く『かげぼうし 新装版』

かげぼうし 新装版

作・絵:安野光雅

出版社からの内容紹介

まちに冬がきた。野山にも冬がきた。
山のむこうのずーつと、ずーつとむこうにある秘密の国、「かげぼうしの国」にも冬がきた。
マッチ売りの少女と「かげばうしの国」のみはり番がくりひろげる、ふしぎな、ふしぎなお話。

池澤夏樹さんの新訳で絵本になった『絵本星の王子さま』子どもに読みやすく、原作の言葉や絵の魅力がストレートに伝わる

絵本星の王子さま

作・絵:サン=テグジュペリ 訳:池澤夏樹

出版社からの内容紹介

池澤夏樹の新・新訳で絵本になった王子さま。
5歳から10歳までの子供が自分で読める、親子で読める、声に出して読める新しい形の『星の王子さま』。絵本にすることで一層際立つ言葉の本質、物語の骨格、絵の魅力は大人の王子さまファンも必見!

エピソードを再編纂、子どもにも楽しめる『絵本で出会う星の王子さま』工藤直子さんのあたたかな詩と名場面が相まった新たな世界

絵本で出会う星の王子さま

原作:サン・テグジュペリ 訳:工藤直子

みどころ

日本をはじめ、世界中を魅了するサン・テグジュペリの名作『星の王子さま』。
100ページを超す長編が、小さいお子さんにも手に取りやすい、絵本になって登場です。

絵本になったら、大好きなあのエピソードが削られてしまうのでは……。
『星の王子さま』の独特な雰囲気が失われてしまうのでは……。
そう、心配する『星の王子さま』ファンも多いと思います。
でも、ご安心ください!
絵本の翻訳を担当した工藤直子さんは、
『のはらうた』や『てつがくのライオン』など、
子どもの心にピッタリよりそう詩を書く、詩人のひとり。
さらに、工藤さん自身も、幼い頃に『星の王子さま』と出会い、そのときの感覚を
「どこかで なにかが カタンとはずれて はればれしたような…
どこかで なにかが はらりと ほどけて ほのぼのしたような…
そんな うれしい 気持ちになりました」と綴るほど、
『星の王子さま』に魅了されたひとりなのです。

工藤さんのシンプルでいて、あたたかな詩が、
『星の王子さま』の名場面と相まって、原作とはまた違った、
絵本『星の王子さま』の世界を私たちに楽しませてくれます。

全世界で翻訳出版、NYタイムズベストセラーに選ばれた『まほうのよるに はじめてサンタのそりをひいたトナカイのおはなし』トナカイとサンタのはじまりが美しく描かれた一冊

まほうのよるに はじめてサンタのそりをひいたトナカイのおはなし

作:マット・タバレス 訳:前沢明枝

みどころ

トナカイがサンタのそりを引くのは有名ですが、実はずっと昔、シルバーベルという名前の馬がたった一頭でそりをひいていました。
このおはなしは、どこにでもいる普通のトナカイの家族が、シルバーベルに変わってサンタのそりを引き、クリスマス・イブに世界中の空をかけめぐるようになるまでの奇跡の物語です。

それはダッシャーという名の、一頭のトナカイから始まります。ダッシャーは母親から、自由で楽しいという北極の話を聞くのが大好きでした。

「いつかここを出て、ママとパパの生まれた北極に行けますように」

そう願い続けたダッシャーは、やがてサンタクロースと出会い、自ら一生懸命働くことで道がひらけていきます。

クリスマスに望みが叶うという夢のあるストーリーと、色鮮やかなイラストがドラマチックな雰囲気を演出。気品漂う作品に仕上がっています。子どもたちへはもちろん、大切な人や自分への贈り物にもおすすめのクリスマス絵本です。

心温まるクリスマス物語の新定番! 2021年公開された話題映画の原作『クリスマスとよばれた男の子』サンタクロースはどのようにして生まれたんだろう?

クリスマスとよばれた男の子

文:マット・ヘイグ 絵:クリス・モルド 訳:杉本詠美

出版社からの内容紹介

愛情いっぱいに育てられた11歳のニコラス。数々の事件と悲しみを乗り越え、成長していく。サンタクロース(ファーザー・クリスマス)はどのようにして生まれたのか? 愛すべき新しい古典の誕生です。

レイモンド・ブリッグスの名作絵本に児童文学作家マイケル・モーパーゴが物語を紡いだ『スノーマン クリスマスのお話』クリスマスの夜、少年に起きた冒険と奇跡

スノーマン クリスマスのお話

作:マイケル・モーパーゴ 絵:ロビン・ショー 原作:レイモンド・ブリッグズ 訳:佐藤見果夢

みどころ

ジェームズは、お父さん、お母さん、牧羊犬のバーディと一緒にいなかの農家で暮らす男の子。毎年クリスマスにはおばあちゃんがやってきて、大好きな『スノーマン』の絵本を読んでくれます。クリスマスイブが明日に迫った日、いつものように絵本を読んでもらったジェームズは、ベッドの中で『スノーマン』のお話のことを考え、雪が降って『スノーマン』のお話のようにならないかなあ、と考えます。でもいくら窓の外をながめても雪は見えません。

しかし眠っているうちにいつの間にか雪が降りはじめて、目が覚めた時には、外は真っ白。ほんとうの雪が降ったのです。ジェームズも犬のバーディも、こんなに積もった雪を見るのははじめてでした。雪でたくさん遊んだ後、ジェームズは庭の中で一番好きな「ナラノキ畑」にスノーマンを作りはじめます。はじめは小さかった雪の玉はだんだん大きくなって雪の体となり、頭部分ははしごを使わないと届かないほど大きなスノーマンに。耳にはリンゴ、鼻にはミカン‥‥‥。さらにうれしそうな笑顔になるようにあるものを加えるとスノーマンが完成しました。

「ぼくは、このうれしそうなスノーマンがなによりも大すき!」
そしてその晩ジェームズに起きたある奇跡とは!?

子どもにとっての願いや幸せがたくさん詰まっている、やさしくて温かな物語。うまくできたスノーマンを家族が見に来て褒めてくれる場面、『スノーマン』の絵本をいつも読んでくれるおばあちゃんと共有したある体験、クリスマスプレゼントに欲しいものが届くかどうかを心配する気持ち。欲しいものの理由に隠れたジェームズの一番の切なる願い‥‥‥。

1978年に発表されて以来、世界中で愛されているレイモンド・ブリッグズの絵本『スノーマン』が、絵本の雰囲気そのままに、『スノーマン』の世界に憧れる男の子の物語としても誕生しました。お話をつけたのは、イギリスを代表する児童文学作家マイケル・モーパーゴ。さらに、アニメ『スノーマン』を担当したロビン・ショーによるたくさんのイラストが満載の豪華な一冊です。なぜ、文字のない絵本に敢えて物語をつけたのか? について、マイケル・モーパーゴの思いがつづられたあとがきも必見です。さらに巻末には、「世界のクリスマス」を紹介するページや、「かんぺきなスノーマンをつくるには」というスノーマンの作り方が紹介されているとびきり嬉しいページも! このお話を読んだ後、もし雪が降ったら、スノーマンづくりに挑戦してみませんか。

子ども時代に『スノーマン』のお話と出会ったならば、想像の世界が心の中に作られて、大人になっても「スノーマン」と耳にするだけで、きっとその場所のことを思い出せるはず。そんな貴重な場所が作られることを願って、ぜひ小学生に届けたいお話です。

関連書籍

スノーマン とびだすアコーディオンブック

作:レイモンド・ブリッグズ

新装版 スノーマン

作:レイモンド・ブリッグズ

百貨店のおもちゃ売り場のサンタクロースとして雇われた老人はサンタにそっくりで……アメリカで読み継がれるクリスマス物語『34丁目の奇跡』

34丁目の奇跡

作:ヴァレンタイン・デイヴィス 訳:片岡しのぶ

出版社からの内容紹介

こんなにも心のあたたまる物語があっただろうか!アメリカでは半世紀もの間読みつがれてきたクリスマス物語。映画原作本、初邦訳。

およそ100年前から愛されるフィンランドの「童話の女王」アンニ・スヴァン珠玉の作品集、色とりどりの美しい13篇『岩波少年文庫 夏のサンタクロース フィンランドのお話集』

岩波少年文庫 夏のサンタクロース フィンランドのお話集

作:アンニ・スヴァン 絵:ルドルフ・コイヴ 訳:古市真由美

出版社からの内容紹介

フィンランドの「童話の女王」アンニ・スヴァンの作品集。民話的なファンタジーと、現実の風景や暮らしを融合させた童話は、およそ百年前から人びとに親しまれてきました。春をむかえにいくお話、妖精や魔物の登場するお話、ドラマチックな愛のお語など、色とりどりの13編をえりすぐり、美しい挿絵とともに紹介します。

【動画公開中】冬をあたたかく過ごす一冊 絵本・児童書

文:竹原雅子 編集:木村春子

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