ありのままでいるって、どんなこと? 『ネコになりたかったクモのルイージ』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

更新日:2024/3/28

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2024年2月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

ネコのふりをするのも、いいかもしれません。ほんのしばらくならね……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『ネコになりたかったクモのルイージ』。名作『としょかんライオン』のコンビによる待望の絵本、いったいどんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

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そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

ありのままでいるって、どんなこと? 『ネコになりたかったクモのルイージ』

ネコになりたかったクモのルイージ

作:ミシェル・ヌードセン絵:ケビン・ホークス訳:福本 友美子

みどころ

毛がもじゃもじゃの大きなクモが、住むところにぴったりだと見つけたのは、ベティおばさんの大きな古い家。古めかしいソファーの下の薄暗い場所に糸をかけ、眠ります。ところが、次の日の朝。

「なにかしら、これ? こネコみたいよ!」

目が覚めるとクモはベティおばさんの手の上に。ずっと仔猫が欲しいと思っていたおばさんに、クモはルイージと名付けられ、ネコとして飼われることになったのです。朝ごはんを用意してもらい、おもちゃで遊び、おばさんと一緒に映画を見て。

最初はとまどっていたけれど、ネコになるのも悪くない気がしてきたルイージは、ネコらしくがんばるようになっていきます。ところがある日……。

「ルイージって よんでいいかしら?」

クモは困ってしまいます。だって自分の名前はどう考えても、ルイージではありませんし、どう考えても、ネコではないのです。それでも、なんだか悪い気もしないのです。

おばさんが喜ぶなら、もっとネコらしくしてみるのもいいかな。ふさふさの足を耳みたいに折りまげ、4本足みたいに走って、丸くなってみて。ああ、なんて健気なルイージ。まるで本物のネコみたい!

『としょかんライオン』の作・絵コンビによる、17年ぶりの新作絵本の主人公は、毛がもじゃもじゃのクモと、一人で暮らすおばさん。少しずつ心を通わせていき、お互いがお互いのことを喜ばせようとするうちに起こる小さな事件。喜びと悲しみの間で揺れ動く二人の気持ちが丁寧に描き出されていきます。

健気にふるまうルイージも可愛いけれど、もちろんルイージはルイージのままでいるのが一番です。気がつけば、私たちはすっかりルイージの虜に。

「そのままの あなたが すきなの」

そんな声をかけたくなってしまう、心あたたまるおはなしです。

編集長のおすすめポイントは……

喜んでくれるから…

一緒にいるのは楽しいし、喜んでくれるのはもっと嬉しい。無理しているわけでもないのです。実際にルイージは、毎日知らなかった世界を体験していたのです。けれど、ベティおばさんが望んでいなかったとしたら、それは別。ネコのふりなんておしまいです。誰もが一度は体験したことがあるであろう、心がギュッと痛む瞬間です。でも、大丈夫。ベティおばさんは、ルイージをちゃんと抱きしめます。おばさんの方だって、そうしたかったんです。気持ちを伝えあうことって、ちょっぴり難しいけれど、こんなにも素敵なことなんですよね。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。