パパと学校へ行くのは、わたしの一番好きな時間。『パパはたいちょうさん わたしはガイドさん』 【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

更新日:2024/3/31

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2024年2月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

わたしの目は、かすかに見えるけれど、パパの目は見えない。でもね、パパはだれよりもずっと、たくさんのものを見てる――。 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介する絵本は、『パパはたいちょうさん わたしはガイドさん』。描かれるのは父親と娘の豊かな心の交流、どんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

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そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

パパと学校へ行くのは、わたしの一番好きな時間。『パパはたいちょうさん わたしはガイドさん』

パパはたいちょうさん わたしはガイドさん

作:ゴンサロ・モウレ絵:マリア・ヒロン訳:星野 由美

みどころ

パパと学校へ行くのは、わたしの一番好きな時間。学校への道のりは、まるで音のジャングル。パパとわたしはいつだって、手をつないで探検に行くの。

「パパ、あっちにパンダ!」
「ジャガー!ジャガーもいたよ!」

通り過ぎる車は動物みたい。海の音を聞いたり、つえをたたいてステップをふんだり。オウムの数を数えたあとは、ドキドキしながら横断歩道の川を渡る。

わたしの目はかすかに見えるけど、パパの目は見えない。でもね、パパはこの世界の誰よりもずっと、たくさんのものを見ている。パパはわたしのことを、「ぼくの ガイドさん」って言うけれど、本当はパパこそ頼れる「わたしの たいちょうさん」なの。

二人の探検の道中には、にぎやかな音や彩り豊かな生き物がたくさん! だからこそ、毎日学校に着いた時、手が離れる瞬間に二人は悲しい気持ちをぐっとこらえるのです。大丈夫、5時間経ったらまた会える。

「わたし」の視点で語られる、パパとの大切な日常の時間。父親への強い信頼と、娘への深い愛情が、しっかりとつながれた二人の手、丁寧に交わされる会話のひとつひとつ、ユーモラスに描かれる生き物たちとは対照的な静かで美しい景色から伝わってきます。

2021年クアトロガトス財団賞受賞、2022年IBBY オナーリストに選出のスペインの翻訳絵本。視覚障がいのある娘と父親、二人の見ている世界を温かく包みこむ、楽しくて優しい一冊です。

編集長のおすすめポイントは……

かけがえのない時間と景色を

たいちょうさんとガイドさん。二人の探検にあるものは、かすかに見える光としっかり聞こえる音。そして、どこまでも広がっていく想像力。感覚を研ぎ澄ませ、緊張感をきらすことなく、それでも楽しむことを忘れない。そんな「パパ」の強い意志と、その時間をめいっぱい味わう「わたし」が生み出すかけがえのない時間。絵本を開けば、読者もその景色を少しでも一緒に体験することができる。そんな喜びを味わうことのできる一冊です。

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。