ことわざがつながって、物語が動き出す! 『むげんことわざものがたり』【NEXTプラチナブック】

文芸・カルチャー

更新日:2024/4/3

絵本ナビがおすすめする「NEXTプラチナブック」(2024年2月選定)から、ご紹介する一冊はこちら!

「犬も歩けば棒に当たる」からはじまり、ことわざがどんどんつながって、物語が動き出す! 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『むげんことわざものがたり』です。ことわざ・慣用句が50個も登場するこの絵本、どんな内容なのでしょう?

NEXTプラチナブックとは…?

絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。

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そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。

ことわざがつながって、物語が動き出す! 『むげんことわざものがたり』

むげんことわざものがたり

作:大串 ゆうじ

みどころ

「むげんことわざ」、いったいどういうこと!? そう思いながら絵本を開けば、本当にそのタイトル通り、ことわざと慣用句が無限につながって、物語が進んでいくのです。

始まりは「いぬも あるけば ぼうに あたる」。そのあたった棒の先に乗っていた「たなからぼたもち」が落ち、ぼたもちにあたっただるまが「ななころびやおき」し、びっくりした「とんびがたかをうむ」。そうこうしているうちに、やっと主人公の登場です。

「ねるこは そだつ」というけれど、「ねみみに みず」でついに起き出した男の子が、おばあさんとおじいさんの家へ手にした宝を届けにいくことに。さて、道中ではどんな出来事が待っているのでしょう。

犬もあるけば棒にあたる→棚からぼた餅→七転び八起き……言葉を聞いただけでは、つながりそうもないことわざなのに、絵を見ればちゃんとつながっている!? 

それが、ひとつのおはなしの世界観の中で展開されていくのもまた驚き。多少まわりくどいところはご愛敬。

いくら「ことわざ絵本」だからといって、一見開きに3つも4つもことわざが登場すれば、読んでいても頭が混乱してしまいそうなもの。ところが、目で追っていくだけで、ことわざの響きや意味までがすんなりと理解でき、それどころか思わぬ展開の連続に笑ってしまうのです。

浮世絵のような雰囲気で見せてくれる絵、大胆な画面構成、コミカルな登場人物たちの動き。独自の世界が広がる大串ゆうじさんの作品の魅力満載、なんと充実した内容なのでしょう!

……これだけ説明しても、どんな絵本かわからない? 「ひゃくぶんは いっけんに しかず」です。今すぐ手に取って、ページをめくって確かめてみてくださいね。ことわざ・慣用句が50個掲載されています。

編集長のおすすめポイントは……

読み終えたあと、実感するのは?

むかしから伝わる物事の教訓や風刺、真理などを含んでうまれる「ことわざ」と、二つ以上のことばが組み合わさることで、とくべつな意味をあらわす「慣用句」。つまり、それぞれ単体の「ことわざ」や「慣用句」にもストーリーや教訓がたくさん含まれているわけです。それらが組み合わさっていけば、さぞかし重い物語になっていくかと思いきや、案外カラッとしていて、軽快でユーモラス。普遍的な雰囲気も漂っています。それは「ことわざ」と「慣用句」が日常から生まれてきているからでしょうか。この壮大かつ親しみやすい物語を読み終えたあと、誰もが実感するのはきっとこの一言でしょう……「れきしは くりかえす」!

磯崎 園子(いそざき そのこ)

絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。