春を感じる昆虫の絵本(2024年4月 新刊&おすすめ絵本)

文芸・カルチャー

更新日:2024/4/22

植物が芽吹き、生きものたちが冬の眠りから目を覚ませば本格的な春の到来! 周囲の自然にじっくり目を凝らしてみると……チョウにアリ、テントウムシ、虫たちも元気に活動をはじめています。舞ったり飛んだり運んだりと働き者の昆虫たち、小さな体からみなぎる息吹に、なんだか私たちもパワーをもらいますよね。

そんな虫たちの世界への想像力をかきたてられる、楽しい絵本をご紹介します。 カエルとの対峙がリズミカルなことばと躍動感ある版画で描かれた『ジロッ』。生きものたちに大人気「がたん もにょん がたん もにょん」と野を走る姿が楽しい『いもむしれっしゃ』。図鑑とはひと味違う昆虫へのやさしいまなざしが魅力の『昆虫とあそぼう』。生命力あふれる春を描いた絵本のなかで、昆虫たちの存在はひときわ光を放っているように感じます。

外に出たら、原っぱに、街路樹や道端の草花に、そっと視線を向けてみてください。絵本で出会った昆虫たちが、みなさんのすぐそばにいるかもしれません! 

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カエルが『ジロッ』、さなぎをパクッ、まんぷくでお昼寝ケロケロスー。テンポいい擬音語と躍動感あふれる版画、生きものたちから目が離せない!

ジロッ

文:おおなり 修司絵:たけがみ たえ

みどころ

野原にカエルが一匹、ぴょこん。
『ジロッ』とにらんで、サナギを『パクッ』。
まんぷく、お昼寝『ケロケロスー』。
そしたらこんどは、ヘビが『ジロッ』!

擬音語だけで描かれる、カエルを襲った大事件!!

ヘビに追われて崖から落っこち、あわやと思えば、まさかのペリカン!? 空中でパクリと丸呑みされて、それでも終わらぬ大騒ぎ!

擬音語だけで描かれる物語はテンポがよく、次々におそいくる意外なできごとも相まって、その目まぐるしさに思わず笑ってしまいます。

主人公のカエルは、寝息が『ケロケロスー』!? 崖から落ちれば、悲鳴は『ケーロー』! ときおり発せられる独特の擬音語で、おかしさ、可愛さ、さらにマシマシ!

初めの『ジロッ』と終盤の『ジロッ』で、同じ擬音なのに印象がまるっきりちがうのも、おもしろいところ。カエルがそれぞれなにを思って『ジロッ』としているのか考えると、かわいそうだけど、やっぱりおかしい!

『ジロッ』ではじまり『ジロッ』で終わる、にぎやかな一瞬の大冒険!

がたん もにょん がたん もにょん『いもむしれっしゃ』はお客さんを乗せ今日も出発!ところが突然大グモが現れて!?虫たちの姿や表情が隅々まで楽しい

いもむしれっしゃ

作・絵:にしはら みのり

出版社からの内容紹介

細部まで描かれた虫の様子や表情、動きに注目の一冊! 見ているだけでも楽しめる絵本です。

がたん もにょん がたん もにょん。いもむしれっしゃは、虫のお客さん達を乗せ今日も元気に発車します。

もうすぐ次の駅。「はらっぱだんち はらっぱだんちでございまーす」ブロックアパートに住んでいる虫達は続々と降りていきます。さて次は…。「のうえんまえ のうえんまえでございまーす」いもむしれっしゃは、駅にいるカナブンおじさんに元気よく声をかけました。次は真っ暗なトンネルの中。「つちっこよこちょう つちっこよこちょうでございまーす」モグラちかがいでは、ミミズソフトが売られ、カラオケ大会が開かれ、とってもにぎやかです。終点までもうすぐのところで、突然目の前に大グモが現れました。いもむしれっしゃも、お客さんも大きな悲鳴をあげましたが、かみきりレンジャーがとんできて、大グモをやっつけてくれました。

身近な26種の虫たちが登場!戸田幸四郎さんの繊細なタッチの絵と手描き文字で描かれた昆虫への優しいまなざしが唯一無二の絵本『昆虫とあそぼう』

昆虫とあそぼう

作・絵:とだ こうしろう

出版社からの内容紹介

カブトムシ、トンボ、バッタ、チョウなど身近に生息する26種の昆虫を、実物の大きさを示しながら丁寧に紹介します。

まず目を奪うのは、繊細なタッチで描かれた昆虫のイラスト。自然がデザインする生きものの素晴らしさを、見事に表現しています。
そして、作者の幼い頃の体験をもとに書かれた文章もとても魅力的です。すべて手描きの文字は、お兄さんの絵日記のよう。子どもたちと一緒に虫とりに行くような目線で、昆虫たちの生態を優しく語りかけます。

生きものへの思いやりがあふれ、図鑑や写真集とは違った楽しさに満ちた作品になりました。

がたこんがたこん、『はるに でんしゃが とうちゃくです』乗っているのは誰だろう?ページを広げると個性豊かなお客さんたち!春夏秋冬を感じられる楽しいしかけ絵本

はるに でんしゃが とうちゃくです

作:丸山 誠司

みどころ

「がたこん がたこん がたこん がたこん」

桜やチューリップが咲くうららかな春に電車がやってきました。

「のっているのはだれだろう」

窓を見るとヒントがあって、だれが乗っているのか予想がつきます。どうやら季節にぴったりのものたちが乗っているようです。パタっと右側のページをたおすとしかけページが広がって、おひなさまとさくらんぼが現れました。

「のっているのはだれだろう」

他にもお客さんが乗っているようです。さらにパタっとページを広げると、これまた春らしいものたちが。そして長い電車が出現するという楽しいしかけです。

春夏秋冬、それぞれに電車がやってきて、季節ならではの乗客たちが顔をのぞかせます。丸山誠司さんのユーモラスでカラフルなイラストは、個性的で賑やか。とても楽しい気分にさせてくれます。

日本の四季や行事を楽しむのにもぴったりの絵本です。一緒に読めば親子の会話も広がりそうですね。しかけを広げる前は手のひらサイズなので、かばんに忍ばせておくのも良さそう。この楽しいしかけ絵本をいつでもどこでも楽しんでください。

どこ行くの?生きものたちに聞かれても『こうまくん』は走る、走り続ける……!のびのびと野を疾走する姿がまぶしい春のよろこびあふれる一冊

こうまくん

作:きくち ちき

みどころ

馬の群れの中から、走り出した「こうまくん」。
こうまくん はしる はしる。
てんとうむしさんや、うさぎさんに「どこいくの?」と聞かれても、
おがわさんに「あそぼ あそぼ」と言われても。
こうまくんはただひたすらに走り続けます。
転んでも、強風が吹いても、大雨が降り注いでも、
こうまくん はしる はしる。
一体、こうまくんは何故走っているのでしょうか?
こうまくんが走った先に待っているものはなんなのでしょうか?

この作品のみどころは、なんといってもこうまくんが楽しそうに走っているということ、そして、きくちちきさんの勢いのある筆のタッチから描き出される、こうまくんのエネルギッシュな疾走感とすがすがしさ、それに尽きるのではないでしょうか。
読み終わったら、こうまくんのように走り出していきたくなる一冊です。

動画公開中

文:竹原雅子 編集:木村春子