共に親の介護に取り組んでいた姉を、乳がんで亡くした著者が、それでも書籍の執筆をやめなかったワケ《インタビュー》

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更新日:2023/5/12

お母さんは認知症、お父さんは老人ホーム 介護ど真ん中!親のトリセツ
お母さんは認知症、お父さんは老人ホーム 介護ど真ん中!親のトリセツ』(カータン/KADOKAWA)

 月間アクセス数800万超。コミカルなイラストで日常のネタを描く人気ブロガー、カータンさん。ここ数年は両親の介護についてのネタが多く、その奮闘の様子が多くの読者の共感を呼んでいる。そんな本格化した介護の日々を綴ったコミックエッセイ『お母さんは認知症、お父さんは老人ホーム 介護ど真ん中!親のトリセツ』(KADOKAWA)が、2023年2月に発売。執筆中にお父さん、介護を共に取り組んできたお姉さんを亡くされ、悲しみに暮れながらも書き上げた本書。サイン会は5分で完売、発売直後に重版になるほど反響を呼んでいる。今回は著者のカータンさんに、本書についての特別インタビューを行った。

――前著『健康以下、介護未満 親のトリセツ』から約3年。新刊も前著以上にご両親のことが赤裸々に描かれていましたが、勇気がいることだと感じました。お父さんがお亡くなりになり、心の支えだったお姉さんまで旅立たれ、精神的にも非常に辛かったかと存じます。なぜ出版しようと思ったのでしょうか?

カータンさん(以下、カータン):第2弾のお話は、2人が亡くなる前からいただいていたのですが、姉の余命宣告を受け、どうにか姉の存命中に出版したい思いがあり、発売日を早めていただきました。というのも、親の介護は姉とずっと2人でしてきたという思いでいたので、姉にも読んでもらいたかったからです。でも、結果は間に合いませんでした。姉が闘病中、そして、亡くなった後に、元気に2人で親の面倒を見てきた日々の話を描くのは、辛い気持ちになることもありました。でも、亡くなった2人のためにも書き残しておきたいという思いで乗り切りました。

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第5章「家族と両親の関わり」内「戦友の姉」(p.131)より抜粋
第5章「家族と両親の関わり」内「戦友の姉」(p.131)より抜粋

――新刊が発売して1カ月半が経過しました。発売後1週間で重版が決まるなど話題を呼んでいますが、読者の方の感想はどういったものが多いでしょうか?

カータン:親の介護というと、「大変、辛い」と思いがちだけど、笑いがあって救われたという意見が多かったです。また、これから親の介護を迎える方からは、考えると不安になることも多かったけど、読んで心の準備ができたことで心配が小さくなったとおっしゃっていただきました。

――長年介護の情報をブログで描かれているカータンさんのもとには、多くの相談も寄せられるのではないかと思います。皆さんが抱える悩みで、特に多いものは何でしょうか? また、その悩みに対して、カータンさんならどう対応されますか?

カータン:なんと言っても皆さんがおっしゃるのは、頼りになった親が徐々に怪しくなっていく段階が一番辛いようです。「まさかうちの親に限って…」という気持ち、「しっかりしてよ!」「どうしたのよ!」と、なかなか現実を受け止められないんですよね。ショックだし、悲しいし、情けなく思えてきたりして。私も経験があるからよくわかります。どうしようと思ったら、自分だけで悩まずにプロに相談してみること。まずは地域包括支援センターに行くことをお勧めしています。

第4章「母と介護サービス」内「介護は一人で抱え込まない」(p.110)より抜粋
第4章「母と介護サービス」内「介護は一人で抱え込まない」(p.110)より抜粋

――今現在のお母さんはどんなご様子でしょうか? また、お母さんとの関わりで今一番大変なことは何でしょうか?

カータン:認知症の母は、夫が亡くなったことも忘れてしまっていて、実家に行くたび「パパはどこに行ったの?」と聞いてきます(笑)。当然、長女(姉)が亡くなったことも理解できていません。なので、母は2人が亡くなる以前の生活を続けている感じです。それは母にとっては幸せなことかもしれませんね。大変なことは…そうですね、愚痴る姉を失ったことですね。母が何かしでかしたとき、いまだに「姉に言わなきゃ!」とスマホを手にする自分がいます。今まで愚痴もストレスもお互い吐き出して、支え合って来たので。だから、大きな声で空に向かって「もう、なんで逝っちゃったのよ!」と叫んでいます(笑)。

「エピローグ」(p.189)より抜粋
「エピローグ」(p.189)より抜粋

――カータンさんが、今後どのように介護に取り組んでいくか教えてください。お母さんに対してと、旦那さんや娘さんに対して。

カータン:まず一番は、自分が無理をしないこと。いつも介護のことで迷ったときは、「もし私が母だったら…」と考えるようにしています。自分の生活を犠牲にして、何から何まで面倒をみることは、未来の私が子どもに望んでいることだろうか? と。それはしてほしくないなぁと。

 なので、まずは自分の家庭や生活を一番に考え、その中で私が母にできることをしてあげるという感じです。時には、娘や夫に手伝ってもらうこともありますが、ベースは無理なくできることをする、です。

 今は、ヘルパーさんなどに助けてもらいながら、母も1人で生活できていますが、今後状況が難しくなったときには、ホームでお世話になることも視野に入れています。

――読者へのメッセージをお願いします。

カータン:とにかく1人で抱え込まない! プロの方に助けてもらってください。日本の介護制度はすごいです。ケアマネさんがついたら、そこから介護の1チームが作られます。どんな悩みにも応えてくれるプロが力強い味方になってくれて、サポートしてくれます。私はケアマネさんやヘルパーさんに言われたことがあるんですね。「大変なことは私たちプロに任せて、ご家族の方は、ご両親とはお茶を飲みながら、楽しかった思い出話をしていてください」と。

【著者プロフィール】
カータン
人気主婦ブロガー。2007年にブログ「あたし・主婦の頭の中」を開設。コミカルなイラストで日常を赤裸々に描き、主婦層を中心に人気が爆発。「Japan Blog Award 2008」総合グランプリ受賞、「livedoorブログOF THE YEAR 2015」最優秀グランプリ受賞、以降殿堂入り。月間アクセス数は800万超、ブロガーとして確固たる地位を確立。近年は親の介護を中心に記事を投稿。悩みながらも体当たりに取り組む様が多くの共感を呼んでいる。主な著書に『健康以下、介護未満 親のトリセツ』(小社刊)など。
Blog:https://ka-tan.blog.jp/
Twitter:https://twitter.com/katan703/
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