だんごむし版の“ミュージカル「キャッツ」”として作った絵本。だんごむしの魅力を発信し続けるお笑い芸人にインタビュー

暮らし

公開日:2024/4/27

 2024年3月14日、ダンゴムシたちの不思議で優しい世界を描いた絵本『だんごむしまつり』(山﨑おしるこ/KADOKAWA)が発売された。著者の山﨑おしるこさんは、吉本興業所属のお笑いコンビ「ムームー大陸」として活動するほか、若手芸人たちと結成したバンド「ジュースごくごく倶楽部」ではボーカルを務め、ハンドメイドアクセサリーを販売するなど、今最も注目を集めるクリエイター芸人の一人。そんな彼女念願の初著書のモチーフに選んだのは、3年ほど前に運命の出会いを果たしたという、ダンゴムシだ。丸く可愛らしいフォルムが魅力のエビやカニの仲間ながら、時に「虫」として忌み嫌われることもあるダンゴムシへ、彼女が注ぐまなざしは、まさに生命賛歌と呼べるほどに温かだ。どこか懐かしくて、どこか切ない物語は、子どものみならず、幅広い人の心を揺さぶるはずだ。

だんごむしまつり
『だんごむしまつり』(山﨑おしるこ/KADOKAWA)

幼い頃から「いきもの」と「絵を描くこと」が大好きだった

――絵本出版のきっかけについて教えてください。

山﨑おしるこさん(以下、山﨑):吉本所属全タレントから本気で本を出したい人を募り、出版までをプロデュースする、吉本興業主催の「出版チャレンジ塾」というプロジェクトがありまして、そちらに企画を提出したところ、たくさんの出版社さんからお声がけをいただいたのがきっかけです。子どもの頃から、虫を中心としたいきものや絵を描くこと、そして絵本が大好きだったので、本当に嬉しいです。たくさんある夢のうちのひとつが早くも叶いました!

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――絵本の題材にもなったダンゴムシですが、山﨑さんとの出会いはいつ頃だったのでしょうか。

山﨑:子どもの頃から、虫をはじめとするいきものが大好きだったので、出会いとしては、かなり昔のことになりますが、ダンゴムシ愛に目覚めたのは、3年くらい前です。ある日、ゲームセンターのUFOキャッチャーの景品に、デフォルメされたダンゴムシのぬいぐるみストラップがあるのを見つけたんですが、その可愛らしさに胸を打たれまして…。丸くて大きな目と、まるっとしたフォルムで、「ダンゴムシってデフォルメしてこんなに可愛いんだ!」と衝撃を受けたんです。

 その日から、ダンゴムシのことで頭がいっぱいになって、家に帰ってインターネットで調べて、知れば知るほどすごい魅力の詰まったいきものだなって思ったのがきっかけです。庭や公園の石の裏にいる黒っぽいオカダンゴムシだけでなく、水玉模様のクラウンダンゴムシだったりと、いろんな種類がいて、奥深くって。ダンゴムシのことを考えるだけでテンションが本当に上がりますね。

「ダンゴムシってデフォルメしてこんなに可愛いんだ!」と衝撃を受けたんです

――3月14日に出版された、初の絵本『だんごむしまつり』は、どういった物語なのでしょうか。

山﨑:ある晩に開催されるダンゴムシたちのおまつりと、そこに現れた、一際美しい青い色のダンゴムシをめぐるお話です。私は、ミュージカル「キャッツ」が大好きなので、そのダンゴムシ版といったイメージで物語を作りました。実は、青く美しいダンゴムシは、イリドウイルスという病原体に感染している個体なんです。ダンゴムシを好きになって、その生態などをいろいろ調べていくうちに、青いダンゴムシのことを知って。こんなに美しいのに1~2ヶ月で死んでしまうこと、そしていきものの世界ではこうした営みが当たり前のように起こっていることに胸を打たれたことから、絵本のテーマの中心に青いダンゴムシを据えました。もし、絵本を読んでくれた子どもたちが、いつか青いダンゴムシを見つけた時に、優しくしてあげてくれると嬉しいですね。

初の絵本『だんごむしまつり』
絵本のテーマの中心に青いダンゴムシを据えました /><noscript><img height=
一際美しい青い色のダンゴムシをめぐるお話

――制作期間はどれくらいでしたか。

山﨑:企画から換算すると、半年以上は経ちましたね。イラストの清書は、2週間くらいで一気に描き上げた感じです。

――画材はどのようなものを使いましたか?

山﨑:パソコンとペンタブレットで描きました。子どもの時にサンタクロースにクリスマスプレゼントに贈ってもらって以来、ずっとペンタブ派です。

――こだわった部分がありましたら教えてください。

山﨑:やっぱりダンゴムシの可愛らしさを伝えるために、手足をちょっと短めに描いて、よちよち感を出しました。そして、子どもたちが公園などでだんごむしを発見した時、楽しい気持ちになってもらえるといいな、と思って、おまつりに集まってくるダンゴムシたちの中にも丸まっている姿を描いてみたり、満月をダンゴムシに見立てたりもしてみました。

――実際に完成した絵本を手に取られて、どんなお気持ちでしたか?

山﨑:やっぱり帯がついているのを見ると、テンションが上がりましたね。同じ事務所の大先輩でもある板尾創路さんや、絵本作家のひろたあきらさん、夢眠書店の店主である夢眠ねむさんといったコメントをくださった方々をはじめ、装丁を手掛けてくださった名久井直子さん、監修を担当してくださった九州大学総合研究博物館の丸山宗利准教授といった、超豪華な方々にご協力いただけたことにも心から感謝しています。

YoutubeやInstagramでもダンゴムシの魅力を発信中

――ダンゴムシ愛が高じて、今では一緒に暮らしているんですよね?

山﨑:はい! YouTubeでの「山﨑おしるこチャンネル」でもご紹介しましたが、アンバーダッキー(ネッタイコシビロダンゴムシ)という、オレンジ色が可愛いダンゴムシを最初にお迎えしました。めちゃくちゃキレイで可愛い、ダンゴムシ界のアイドルです。一緒に、白い体がキレイなオカダンゴムシ(T-アルビノ)も一緒にアンバーダッキーと暮らし始めました。そして、イボイボが特徴の小さなボルネオコブコシビロダンゴムシや、近所の公園で捕まえたオカダンゴムシ、しましま模様が美しいゼブラダンゴムシとも同居しています。

「山﨑おしるこチャンネル」では、私とオカダンゴムシ(T-アルビノ)とのピクニックの模様も観ることができますので、ぜひその美しさを確かめてみてください。Instagramでも、ダンゴムシ専用アカウントを作ってミニチュアに乗せたりと、ちょっとポップなダンゴムシ写真をアップしたりしているので、ぜひご覧になっていただきたいです。

ダンゴムシ専用アカウントを作ってミニチュアに乗せたり
ちょっとポップなダンゴムシ写真をアップ

――今後、絵本作家として描きたいテーマなどはありますか?

山﨑:本当に、ダンゴムシくらいしか描きたいと思うモチーフがないので、このシリーズで、今後も絵本を出版できたら嬉しいなと思っています。

取材・文=中村実香

【著者プロフィール】
山﨑おしるこ
1994年、福岡県生まれ。大阪芸術大学卒業。吉本興業所属のお笑いコンビ「ムームー大陸」として活動。イラストや似顔絵制作を得意とし、お絵描き芸人としても活躍。だんごむし愛好家でもあり、自宅で数種類のダンゴムシを飼育している。また、人気バンド「ジュースごくごく倶楽部」ではボーカルを務める。

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