ハイヒールを履いたオネエ3人が歌とダンスで魅せるENVii GABRIELLA、リーダー&ボーカルのTakassyが語る「自分だけの幸福論」の見つけ方と歌い方

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公開日:2023/5/11

私は私の幸福論を歌うから、あなたはあなたの幸福論を歌えばいいの
私は私の幸福論を歌うから、あなたはあなたの幸福論を歌えばいいの』(Takassy/KADOKAWA)

 幼少期から「自分が他の人とちょっと違う」自覚はあった。友達の少なかった学生時代、個性豊かな友人に恵まれた大学時代……どんな時も「歌手になる」ということだけは決めていたTakassy(タカシ)は2017年、ENVii GABRIELLA(通称・エンガブ)を結成。2021年、キングレコードよりメジャーデビューを果たし、全国ツアーでは満席を連発。YouTubeチャンネル「スナックENVii GABRIELLA」は登録者20万人を突破(2023年5月現在)。そんなTakassyが自らの半生を交えながら人生哲学を赤裸々に語った初の著書が『私は私の幸福論を歌うから、あなたはあなたの幸福論を歌えばいいの』(Takassy/KADOKAWA)だ。

Takassyに「ゲイであること」について尋ねると、「性的指向のことは、自分の人生の悩みのトップ3にも入っていない」という答えが返ってきた。もちろん、苦悩はあった。心ない言葉をかけられたり、周囲にカミングアウトすべきか悩んだり。しかしTakassyは言う。「どうしても手に入らないものにいつまでもこだわるほど、人生は暇でもないし長くもない」。さまざまな壁を打ち破り、コンプレックスを脱ぎ捨て、ENVii GABRIELLAとして快進撃を続けるTakassyの「幸福論」について聞いてみた。

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ENVii GABRIELLAとして快進撃を続けるTakassyの「幸福論」

――初著作には非常に赤裸々にご自身の経験やご家族のことなどを書かれていますが、つらかったことや悲しかったこと、うまくいかなかった恋愛の話などまで書くことに、ためらいはなかったのでしょうか?

Takassy 実はもともと、後先考えないで面白いと思ったらやり始めてしまうタイプなんです。書籍を出さないかというお話をKADOKAWAの編集担当の方からいただいた時にためらったことといえば、「こんなほぼ無名のオネエの話誰が聞きたいんだよ」ってことくらいで。結果つらつら調子に乗って書きまくったんですが、発売前日の夜中に急に、「やばい色々書きすぎたかもしれない。消される。存在を!」って不安に駆られました。そういえば、「本当にここまで書いていいんですか?」って何度も担当の方に聞かれた気もします(笑)。ただ、私が考えていることや伝えたいことが、「どうしてそういう答えになるのか」ということを解ってもらうには、私自身が格好つけていたりしたら変な自己啓発本が誕生しそうだと思ったんです。だから、その考えに至ったエピソードをセットにすることにしました。

――「幸せを追い回すのって、ありもしない埋蔵金を探し回るようなもの」というのは、ちょっとぞっとしましたが、目から鱗が落ちました。

Takassy 本のタイトルにもあるように、幸福論は一人一人違って当たり前だと思います。私が誰か他の人になろうとしてもがいてもその人にはなれないし、幸せにもなれない。もっというと、「幸せになろう」というその試み自体が、私には無謀というか、「それって目標として成立してる?」という違和感があって。「なんか食べたい」って漠然と思いながら永遠にスーパーの中徘徊してる感じですよ。幸せってそんな大層なものじゃなくって、毎日の小さな満足を積み重ねた「結果」。私はそう捉えています。

――幸せとは「毎日の小さな満足を積み重ねた結果」……。となると、Takassyさんの毎日はさぞかし充実して、キラキラしているのでしょうか?

Takassy いいえ。キラキラしてるとしたら、昨日の夜に寝ぼけて目から取り出して放り投げたコンタクトレンズが朝日に当たって床で輝いてる時くらいですかね。曲や歌詞が思いつかない日には、デリバリーした食事の残骸で飾り立てた机に頭突きをし、もはや何曜日かも解らないくらい引きこもっています。

長年の夢だった歌手になってからも、ステージで華々しくスポットライトを浴びるのはほんの一瞬。その他の大多数の日々、私はああでもないこうでもないと苦悩しては、気分転換とか言って推しのMVやら動画を観て夜が明けたりしていますよ。でも、どんな時でも姿勢だけは美しくすると決めています。そしていつかは紅白に出たい(急だな)。

――エンガブの曲の中でも人気の楽曲、「豪華ネェサン」や「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」の歌詞はとびきり前向きで聞くだけでテンションが上がりますが、作詞作曲しているTakassyさんは、生まれつき歌詞にあるように前向きな性格なのでしょうか?

Takassy いいえ。真逆です。エンガブとして活動するまでは、自分より歌がうまい人を妬んだり、「事務所が歌えって言うからぁ~」などと平然とのたまうタレントを見るのがつらくてテレビを見られない時期もあったほど。明るい曲を作るのは何かの拷問か、前世から背負っている業か何かだと思っていました。

でも今は、エンガブの活動を通して、私たちが誰かの役に立てるということを感じています。だから前向きなメッセージの曲は、ネガティブな自分に言い聞かせる=闇を抱えている人たちのために作っています。

――近年、LGBTQへの関心が集まっていますが、それについて思うことは?

Takassy その流れでお声がかかることはたしかにあります。でも私たちはもともと、LGBTQの旗振り役になろう、ましてや代表として振舞おうなんていう気持ちはさらさらなくて。むしろ、自分たちの経験以上にLGBTQについて語ることは避けているくらいなんです。LGBTQって括るけれども、同じ悩みなんて無いですよね。私はただ、ゲイでオネエの私たちが、毎日ハイヒール履いて躍って歌ってこんなに楽しく生きているんだよっていう姿を、ジェンダーについてとか生について悩んでいる誰かに見て感じていただけたらいいなという想いで活動をしています。

――最近、一番幸せを感じた瞬間はどんな時ですか?

Takassy 本当こういう書籍を出しておいてあれなんですけど、思いつかないわけです。結局そういうことが。でも昨日も悪くなかったし、先週も悪くない1週間でした。だから私、幸せなんだと思いますよ。――あ、あった。この書籍の初回の印税が入ったことです。

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