映画『 しん次元 !クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』公開!ゲスト声優・松坂桃李インタビュー

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公開日:2023/8/4

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年8月号からの転載になります。

松坂桃李さん

 今年の『クレヨンしんちゃん』の映画は、シリーズ初の3DCG!
今作では、しんちゃんと鬱屈としたものを抱える青年・非理谷充と対峙する姿が大迫力で描かれる。
非理谷役の松坂桃李さんは、本作に、そして『クレヨンしんちゃん』という作品に、どんな魅力を感じているのか。

(取材・文=許士明香 写真=冨永智子)

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松坂さんが演じた役

非理谷充

非理谷 充

平成と共に生きた33歳の男性。顔色が良くない。派遣切りに遭い職を失うなど、ふんだり蹴ったりな日々を過ごしていた。身に覚えのない罪で警官に追われていたところ、突然空から降ってきた暗黒の光を受け、悪の超能力者となる。

野原しんのすけは太陽のような男の子

「『クレヨンしんちゃん』は小さい頃から観ていた作品ですし、まさかお声がけいただけるとは思ってもいませんでした。これまでゲスト声優を務めている方々を見て、いいなぁと思ってはいましたが、どこか別世界のような感覚でした」

 絶賛上映中の『しん次元!クレヨンしんちゃんTHEMOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』に、ゲスト声優として出演する松坂さん。演じる役は、空から降ってきた暗黒の光を浴び、超能力を手に入れた青年・非理谷充だ。仕事を失い、鬱々とした日々を過ごしていた非理谷は、強力な力を手に入れて無敵になった気分。鬱憤を晴らすかのように力を使い、悪に染まっていく。

「理不尽を感じたり、不安になったり。ストレス状態が続いたり。程度の大小はあるけれど、非理谷の気持ちに似たものを多くの人は知っているはず。そんなモヤモヤしたものを、非理谷はうまく消化できずに爆発させてしまった。でも、非理谷はしんのすけに出会うことができました。それはきっと、彼にとって幸運だったと思うんです」

 時を同じくして、白い光を浴びたしんのすけもまた、超能力者になっていた。最初は不思議な力を面白がっていたしんのすけだが、非理谷の非道な行いを目にして、立ち上がる。

「劇中で非理谷としんのすけが戦うシーンもあるんです。欲を言えば、僕も共に戦いたかったです(笑)。でも、熱いシーンをできて、素直に嬉しかったです。アフレコ中、しんのすけは太陽のような男の子だと感じました。しんのすけの明るさや熱さが、凝り固まったものをほぐしてくれるような。それに、彼は最強の自由人ですよね。小さな悩みから大きな恐怖まで、ポーンと空中に飛ばしてしまえるパワーがある。その根底には、温かさや優しさがある。これがしんのすけの魅力で、愛される理由のひとつなんだろうな、と」

「今回の映画ではしんのすけのもちもち具合にも注目してほしい」と松坂さん。今作は、『クレヨンしんちゃん』シリーズ初の3DCG作品でもある。

「一足先に完成映像を観て、『さすが白組さん(*)』と膝を打ちました。しんのすけのお尻のぷりぷり感も絶妙なんです。自分の声が入ってくることに小っ恥ずかしさもありましたが、それ以上に、映像の迫力に惹き込まれました」

松坂さんはこれまでにも声の出演の経験があるが、今作の非理谷役には、苦戦することも多かった。

「声のお仕事で悪役を務めるのは初めてで、心の機微を声のみで表現することの難しさを痛感しました。非理谷の過去のシーンでは、幼少期や思春期などの年齢感の出し方に悩んだりもして。いくつか声のパターンを録り、監督と相談しながら、どの声が一番合うのか探っていきました」

松坂桃李さん

野原一家は誰一人として欠けてはいけない存在

松坂さんはかねてより、シリーズ第15作目となる映画『嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』を〝泣いた映画〞として挙げている。ケツだけ星人が仕掛けた爆弾が、ひょんなことからシロのお尻にくっついてしまうことから始まるこの作品では、しんのすけとシロの逃亡劇が描かれた。

「追っ手から逃げるシーンは、本当に泣けました。お尻の爆弾が取れなくなったシロは、地球を滅ぼす危険な存在として宇宙に飛ばされそうになるんです。けれど、シロと別れるなんてありえない。しんのすけはシロを連れて逃げ出しました。しんのすけが泥だらけになりながら走る姿、れてふらふらしながらも〝シロ〜、シロ〜〞と声を掛ける姿、そして、諦めない姿。普段あまり泥臭さを見せることがないしんのすけの姿に胸が熱くなるのと同時に、しんのすけにとって、野原家にとって、シロは欠かせない存在なんだと再認識させられたんです」

自分のためにボロボロになったしんのすけを見て、シロは自ら捕まる選択を取る。それを知ったしんのすけら野原一家は、シロを救いにロケットのある基地に潜入していった。

「しんのすけだけじゃなく、みさえもひろしも、ひまわりも、シロを大切な家族だと思っているんですよね。野原家は誰一人として欠けてはいけない存在で、みんなが家族を守ろうと思っている。親が子を守るだけではなく、子も、犬も家族を守る。それが、野原家にとっての当たり前。とても素敵だと思います。これまで野原家はたくさんのピンチを経験していますが、一丸となって脅威に立ち向かう姿はいつだってかっこいい。ひろしの臭い靴下で攻撃したり、みさえのお尻で下敷きにしたり、技としてはイケていないかもしれないけれど……(笑)、熱くて勇ましくて、自然と応援したくなるんです」

今回の映画でも、野原一家の奮闘が見られるという。改めて松坂さんに、『クレヨンしんちゃん』の魅力を伺った。

「緊張と緩和、シリアスと笑いのバランスが絶妙ですよね。ジェットコースターのような展開の後、必ず心に残るものがあって、僕は毎回〝名作だな〞と思うんです。今回の映画も、子供から大人まで楽しめる物語になっています。ぜひ、しんちゃんの熱さに触れていただいて、ほっこりしたり、スカッとしていただけたらなと思っています」

*映像制作プロダクション会社。映画『シン・仮面ライダー』や『STAND BY ME ドラえもん2』などのVFX(CGを使った視覚効果)を手掛けている

ヘア:AZUMA(M-rep by MONDO artist-group) スタイリング:猪塚慶太

まつざか・とおり●1988年、神奈川県生まれ。2009年ドラマ『侍戦隊シンケンジャー』で俳優デビューし、注目を集める。近年の映画出演作『流浪の月』や『耳をすませば』では主演を務めるほか、Netflix『離婚しようよ』が現在配信中。また、TBS日曜劇場『VIVANT』にも出演中。今後は映画『ゆとりですがなにか インターナショナル』(10/13公開)への出演が控えている。

映画『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』

映画『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』

原作:臼井儀人(らくだ社) 監督&脚本:大根 仁 声の出演:小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ ほか 特別出演:松坂桃李、空気階段、鬼頭明里
●2023年のある夜、宇宙から白と暗黒の光が降ってきた。白い光はしんのすけに命中し、熱くなったお尻に力を込めると、超能力が発動するエスパーに。一方、暗黒の光を浴びたのは、バイトも推し活もうまくいかず、さらには暴行犯に間違われ警察に追われる青年・非理谷充。世界の破滅を望み、暗黒のエスパーとして力を使い始めた非理谷に、しんのすけはどう立ち向かうのか――3DCGで描かれた、大迫力の超能力対決が開幕!
ⓒ臼井儀人/しん次元クレヨンしんちゃん製作委員会