波瑠さんが選んだ1冊は?「読むたびに最初は気づけなかった人の温もりを感じる大人の青春物語」

あの人と本の話 and more

公開日:2023/10/13

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年11月号からの転載になります。

波瑠さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、波瑠さん。

(取材・文=倉田モトキ 写真=TOWA)

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 波瑠さんが「絶対に手放せない一冊」と話す『めぞん一刻』。「部屋をお掃除していて迂闊に手に取ると、もうダメ。最後まで読んじゃいます(笑)」

 出合いは大人になってから。

「高橋留美子先生の作品は幼少期から大好きで。入り口になった『犬夜叉』も『らんま1/2』も最初に触れたのはアニメでした。そうしたなか、マンガの『めぞん一刻』は“大人の物語”に思えたんですよね」

 でも、いざ読み始めると変わらぬギャグに大笑いしつつ、いつまでもすれ違う主人公たちの恋模様や、彼らを取り巻く登場人物たちの人情の厚さに夢中になったそうだ。

「以前はアクの強いキャラにしか見えなかった人たちも、歳を重ねて読み返すと、彼らの温かさがすごく伝わってくる。それに、大人になるにつれて人付き合いってどんどん限られていくと思うんです。《一刻館》にいる人たちも、一見すると傍迷惑なんですが(笑)、そうした人たちに包まれて生活する時間って実はすごく価値のあるものだと、今だと分かる。大人の青春物語としても楽しめますし、昔好きだったという方はぜひ読み返してほしいですね。きっと新たな気づきや感動があると思います」

『めぞん一刻』の連載終了は1987年。まだネットもスマホもない時代。波瑠さんが次の出演作『アナログ』で演じる女性も、携帯電話を持たない、少しミステリアスな人物だ。

「不思議な映画で、前半と後半では雰囲気が大きく変わるんです。こうした取材で話したいことがたくさんあるのに何も言えなくて。そのもどかしさは役にも通じるところで、今、すごくみゆきに共感しています(笑)」

 行きつけの喫茶店で出会った悟とみゆき。二人は毎週木曜日に会う約束を交わし、やがて恋に落ちていく。

「二宮和也さんとは初共演でした。相手の表現を全て受け止めてくれる方でしたね。みゆきは過去を抱えながらも毎日を一生懸命に生きている。幸せになることに戸惑いを見せ、でもユーモアもあって。そうした複雑な人間性は、二宮さんによって引き出してもらえた部分も大きいです」

 また、アナログな世界だからこその恋愛模様にも新鮮さを感じたそう。

「今の私たちには、人を好きになることへのいろんな邪魔があるんだなって思いました。簡単なメールのやり取りの外側の部分だけで人を判断したり。本当に大事なのは相手の本質をしっかりと感じること。この映画で描かれるシンプルさこそ、本当の純愛なのかもって思いました」

ヘアメイク:犬木 愛 スタイリング:黒崎 彩 衣装協力:ブラウス4万700円、パンツ4万6200円(全てルッシェルブルー総合カスタマーサービスTEL03-3404-5370)(アイレネ)、上イヤカフ7万4800円、下イヤカフ7万2600円(全てm&associatesTEL03-6451-1483)(GIGI)

はる●1991年、東京都生まれ。2006年、ドラマ『対岸の彼女』でデビュー。15年、NHK連続テレビ小説『あさが来た』でヒロインを務める。最近の代表作にドラマ『わたしのお嫁くん』『魔法のリノベ』『愛しい嘘〜優しい闇〜』、映画『ホテルローヤル』『弥生、三月-君を愛した30年-』など。

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原作:ビートたけし(『アナログ』集英社文庫) 脚本:港 岳彦 監督:タカハタ秀太 出演:二宮和也、波瑠ほか 全国にて上映中 配給:東宝、アスミックエース
●デザイナーの悟は自身が手掛けた喫茶店で謎めいた女性・みゆきと出会う。携帯電話を持たないと知り、彼女とは毎週木曜に同じ場所で会うことに。やがて互いに惹かれ合い、悟はプロポーズをすることを決意するのだが、その日を境に彼女は突然姿を消してしまう……。
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