「君のことを思う人たちがたくさんいる」。子どもたちに14万冊の本が集まる「ブックサンタ」の活動で広がる優しい輪

文芸・カルチャー

PR公開日:2023/12/17

「本で子どもを励ましたい」という気持ちを引き継いでいく

——「ブックサンタ」は今年で7年目。始めて良かったと実感するようなことは。

清輔:昔から、チャリティーサンタの活動について話すと、多くの方がポジティブに受け止めてくれたんです。みなさんそれぞれ、サンタクロースにまつわる思い入れがあるんですよね。だから、この活動が広がるたびに、自分たちの力というよりサンタクロースの歴史に助けられているなと感じています。

 サンタを信じて楽しみに待つという文化が、過去から、このネット社会においても大切に受け継がれている。そこに自分たちが携われているのは嬉しいことですし、逆に言えば、多くの人を喜ばせてきたこの文化を自分たちの力で捻じ曲げてしまってはいけない。主催者として方向性を決めていくことはできますが、おそらく、書店さんや寄付者のみなさんが感じている以上に、慎重に物事を進めるようにもしています。

advertisement

——その想いがあってこそ、ブックサンタは、寄付をする側も、寄付をされる側も、喜びがあふれる活動なのだと感じます。

清輔:寄付される方々を見ていると、みなさん本が好きなのはもちろん、本に救われているんですよね。「大変な家庭環境で育ったけれど、本があったから望んでいた仕事に就いた」とか、「人間関係でくじけそうになった時、本の中にだけは居場所があった」など、思っている以上にそういう方が多いんですよ。本で子どもを救いたい、励ましたい、と考える人たちのバトンを、私たちは受け取っているのだと感じています。

ブックサンタ

——チャリティーサンタの取り組みでは、本だけではなく、手紙を贈るという活動も進められています。

清輔:保護者からの言葉をサンタの手紙として伝えることもありますし、もう一つは、サンタの種明かしをする手紙を準備しています。お子さんがだいたい10歳や11歳になる頃ですね。「サンタはいないかもしれないけど、君のことを思う人たちはたくさんいるんだよ」「どこかの誰かの優しさが巡り巡って君のところにきたんだよ」と、私たちが伝えたい大切な想いをそこにギュッと詰めて。小さな組織で、なんでそこまで…と思われるかもしれませんが、ありとあらゆる角度から、大切に、この取り組みに携わっているつもりです。

——サンタを卒業した後まで、誰かを想う気持ちが伝染していくのですね。

清輔:チャリティーサンタの活動として、手紙をお子さんに贈っていただくと、その収益によって、経済的に困っている子どもにもサンタから手紙が届く、という取り組みも行っています。その子がいるから、他の子にも手紙が届く。そこには「実は君もすでにサンタの一部になっていたんだよ。次は君の番だよ」というメッセージが込められています。かつてサンタからプレゼントをもらったお子さんが、10年、15年経って、今度は自分がサンタになる…という現象も少しずつ起き始めています。

——チャリティーサンタでも、ブックサンタでも、どこかの誰かを幸せにする、その行動をつないでいくという想いが、同じように根底にあるのですね。

清輔:そうですね。チャリティーサンタを始めたばかりの15年前は夢物語だったことが、今こうやって実現していると思うと感慨深いです。

——「ブックサンタ」の今後の展望をどのように考えていますか?

清輔:毎年100万冊集めるプロジェクトにすることが現在の目標です。日本でさまざまな事情で困窮している家庭の子どもを想定すると約200万人。そのうち、私たちのことを知ってもらえるのは最大25%くらいかなと。25%である50万人の子どもに誕生日とクリスマスに本を1冊ずつ届けるには、100万冊必要なんです。

 そうなると、僕らだけではとても追いつきません。書店やオンラインの仕組みも整いつつあり、今は十分に良い取り組みになっていると思いますし、集まった本は大切に扱い、ちゃんと子どもたちに届いていると自負しています。これからできることといったら、いろんな角度から新しいみなさんに「ブックサンタ」を知ってもらうこと。そのためのチャレンジを続けていくつもりです。

ブックサンタ

\ブックサンタ活動に携わる現場スタッフの声をご紹介/

支援全般担当:河津泉さん

——この活動に関わって良かったことは?

 寄付者の方々から届いた本の入った箱を開くたびに、1冊1冊にさまざまな想いが乗っているのが伝わってきて、「自分もサンタになりたい」という想いを持った人が増えていることに幸せを感じます。

——お届けした家庭では、どんな声があがっていますか?

「子どもが本を読むようになった」「本のおかげで子どもの夢が広がった」という声がありました。親御さんからも「いつも図書館の本だったから、自分だけの本を宝物のようにして、ずっと読んでいます」というお話をよく伺います。

出版社・書店との窓口:舟井恵さん

——「推薦図書リスト」作成では出版社とどのようなやり取りがありましたか?

 一般的な推薦図書では出版社さんの売れ筋が紹介されることが多いのですが、私たちはブックサンタを通して新たな名作を発掘したい気持ちがありました。その意図をお伝えすると、出版社の方も理解してくださり、売れ筋ではなくても、子どもが読んで楽しめるような本を教えてくださいます。

——書店とは、どんなお話をされることが多いですか?

 寄付者さんの声が、書店を通じて届くことが多いですね。書店さんには毎年アンケートを実施していて、10件以上同じ改善要望があれば改善する、ということを繰り返しています。「推薦図書リスト」も、寄付者さんの声を反映したものの一つ。このリストができてから「どんな本が必要?」という問い合わせが少なくなってきました。

選書や管理の責任者:Rさん

——以前はチャリティーサンタを利用する側だったそうですね。

 はい。ですので、運営側に回ってから、こんなに少人数で活動していることに驚きました。ご家庭の方からお預かりした応募動機を読むと、当時の自分を思い出して共感します。

——利用している当時はどんな喜びがありましたか?

 当時はまだ若かったので、子育ての相談をできる相手もいなくて、しんどかったんです。生活費を優先すると、誕生日のプレゼントも買えなくて。子どもに何もしてあげられない自分が嫌でした。だから本を届けてもらった時は、子どもはもちろん、私自身も「しんどい時は誰かに助けを求めてもいいんだ」と実感して、すごく元気づけられたことを覚えています。

選書や管理のスタッフ:Sさん

——オンラインで寄付された本はどのように配送されていますか?

 岡山の倉庫から直接送るほかに、日販さんにお願いする場合もあります。数千冊という冊数の多いものになると、倉庫から送るのが大変なので、届けてもらっています。

——寄付者へのメールマガジンも作成されているそうですね。

 はい。その年に届けた冊数や、ブックサンタを届けた家庭からの声、チャリティーサンタが実施する他の事業についても紹介しています。SNSにも載せますが、SNSを見ていない方もいらっしゃいます。寄付者の方はやはり、ご自身が起こした行動によって相手のお子さんがどう喜んだか、どう変化したのかを知りたいと思うので、ご家庭の声を多く届けられるように工夫しています。

チャリティーサンタが「誕生日」をテーマに進めるプロジェクト「シェアケーキプロジェクト」とは?

 NPO法人チャリティーサンタが新たに始めたプロジェクトの一つ。寄付金を募り、賛同してくれる洋菓子店に支払いをすることで、子どものお祝いを購入するのが難しい家庭に、誕生日ケーキを1ホール届けてくれる。そこには、誕生日という“自分を大切にできるタイミング”を子どもたちにきちんと味わってもらいたい、という気持ちが込められている。誰かのために何かをしたい、でも何から始めたらいいのかわからない、という人にとって、次の寄付や社会貢献につながる良い機会となりそう。

ブックサンタ公式ホームページ >


あわせて読みたい