岡村靖幸「吉川晃司、尾崎豊と知り合えたことは幸福だった」。対談集『幸福への道』で語った“人と会う情熱”【インタビュー】

文芸・カルチャー

更新日:2024/12/22

岡村靖幸さん

岡村靖幸が、ゲストに「幸せとは何か?」について話を聞く「週刊文春WOMAN」の連載をまとめた書籍『幸福への道』(文藝春秋)が発売された。2018年からコロナ禍を経た現在に至るまで、神田伯山、千原ジュニア、オードリー・タン、吉川晃司といった多彩なゲスト22人と対談。芸能から政治、社会問題までさまざまなテーマについて語り合う時間に、岡村はどう向き合ったのだろうか。取材にかける思いや、岡村が考える幸福の形まで、幅広く話を聞いた。

幸福への道
幸福への道』(岡村靖幸/文藝春秋)

幸福は十人十色。「幸福とは?」はみんなのテーマだから面白い

――「幸福」というと岡村さんのアルバム『幸福』が思い出されますが、あのジャケットの絵を見た時、岡村さんが、結婚や子育てというありふれた幸福を、畏怖を抱くものとして捉えていると感じました。

 あの絵を描いてくださったのは会田誠さんなんですけど、僕は『幸福』というタイトルを伝えただけで、何のリクエストもしなかったんですよ。会田さんが、僕自身がああいうものを望んでるのではないかという想像のもとに描いてくれたんだと思います。

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――あの絵をご覧になった時はどう思われましたか?

 ああいうささやかで、簡単そうで手に入らないプライスレスな瞬間が幸せなんだろうなと思いました。僕があの絵を描いてくれと言ったわけではないけど、それに気づかされましたね。会田さんは僕と同い年で、彼はお子さんがいますけど、いろんな経験をして、いろんなことを感じて至った心境で、あれを描いたんだと思います。

――あのアルバムは、なぜ、「幸福」というタイトルをつけたのでしょうか。

 幸福って十人十色ですよね。たとえば、いいマンションに住むとか、いい車を持つとか、物質的なものに依存してる人や、恋愛を最上の幸せと考えている人もいて。家族を作ることや子育てを最上の幸福と思ってる人もいるし、社会的な地位や、趣味を楽しむことを最上と思ってる人もいる。幸福というのは、人によっても違うし、年齢によっても変わっていくものなのかもしれませんね。だから面白いし、みんなが「幸福ってなんだろう」ということに共感するだろうなと。それに、わかりやすいタイトルなのにあまり聞いたことがないから、これはいいなと思ってつけました。

「結婚」の先にある「幸福」とは何かをみんなに聞いてみたい

――2018年に「週刊文春WOMAN」で「幸福への道」という連載をスタートされましたが、幸福というのは、それ以前から興味のあるテーマだったのでしょうか。

 以前、マガジンハウスの雑誌「GINZA」で6年、「結婚への道」という連載をやっていて、毎月、いろんな人に結婚について聞いたんです。「結婚とはどういうものですか?」とか「子どもを作ることをどう感じていらっしゃいますか?」とか、何度も結婚されている方に「離婚って?」ということを聞いたりして、それをまとめた本も2冊出したんですけど。それがいち段落した後、今度は文春WOMANさんが「連載をやりましょう」と言ってくれたんです。そこでまたひとつ、ステージを変えて、結婚の先にある「幸福」についていろんな人に聞いてみましょう、ということで始まりました。

――この連載では、幸福に関してだけではなく、芸能や宗教や政治、社会問題などの幅広いテーマに言及されていますが、連載開始時から、これほど話題が幅広いテーマに及ぶとイメージされていましたか?

 週刊文春WOMANでの連載なので、文春らしい連載になるとは思ってはいました。「結婚への道」はファッション誌での連載で、華やかさや写真も大事にしていたのに比べると、この連載は、もっと記事の内容に力を入れたものになるだろうなと。スターや有名人だけでなく、週刊文春WOMANの読者が興味を持つようないろいろな方にお話を聞くことになると思っていましたし、実際、そうなりましたね。

相手を楽しませるためインタビューを盛り上げようと腐心

――岡村さんは以前も取材のための勉強が楽しいとおっしゃっていましたが、各ジャンルの専門家の方へのインタビューは、事前準備が特に大変ではありませんでしたか?

 そうですね。でも、歳を重ねるとだんだん勉強する機会が減っていくので、隔月のインタビューをきっかけに勉強させてもらえるのは恵まれていると思います。普通、勉強するとしたら、自主的に学校に行ったり本を読んだりするんでしょうけど、仕事のために勉強しなければならないというのは有難いことだし、どのジャンルの方に関しても勉強するのは楽しくて。特にこの連載は、対談相手が芸能関係ではない方が多いので、勉強のしがいがあります。僕があまり気を使われることもないのも良いです。別に週刊文春WOMANに載らなくてもかまわない、という方もいるでしょうし。

――岡村さんのことをご存じない方もいるかもしれないですよね。

 僕を知らない人もいらっしゃるので、相手の方もこの連載に興味を持ってくれて、話すのが楽しいと思ってもらえるように、インタビューをなるべく盛り上げようということには腐心しましたね(笑)。

――この本の冒頭に収録されている神田伯山さんとの対談も、かなり事前準備をされましたか?

 そうですね。インタビュー前に講談とはどういうものなのかをいろいろ調べましたし、伯山さんの寄席も見に行きました。それもとても勉強になりましたし、実際に話すと、彼の人となりは「歯に衣着せぬ男」というパブリックイメージとはまた違っていて、それを知れたのも面白かったですね。

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