【特別企画!】 第22回電撃小説大賞 受賞者鼎談―三作・三様の個性 その魅力に迫る

インタビュー

2016/3/7

【大賞】角埜杞真×【メディアワークス文庫賞】星奏なつめ×【銀賞】結月あさみ
2月25日発売のメディアワークス文庫新刊は、第22回電撃小説大賞の受賞作が目白押し! メディアワークス文庫編集長・佐藤達郎が聴き手となり、受賞者3名を迎え座談形式で作品の魅力に迫ります。


(中)かどの・こま●東京都生まれ。心のふるさとは岐阜県関市。誰もいない山中でひっそりと暮らすのが夢。第22回電撃小説大賞〈大賞〉を受賞し作家デビュー。
(左)せいそう・なつめ●愛媛県出身、東京都在住。臨床心理士を志した経験を活かし、人を笑顔にする小説を書くのが夢。第22回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉を受賞し作家デビュー。
(右)ゆづき・あさみ●山口県出身、大阪府在住。趣味は料理とフラワーアレンジメント。会社勤めの傍ら小説を書き続ける。第22回電撃小説大賞〈銀賞〉を受賞し作家デビュー。

三作・三様の個性 その魅力に迫る

佐藤 『トーキョー下町ゴールドクラッシュ!』は、罠にはめられ証券会社をクビになり、すべてを失った35歳のバツイチ女性・立花が、下町で出会った人々とともに真相究明していく話。どうやって逆転に導くのかとハラハラしながら読んだので、最後は心の底からスカッとしました。

角埜 サスペンスを書きたかったので、どうせなら大きな事件をと、巨額のお金を動かせる外資系証券会社を舞台に選びました。下町をもう一つの舞台に選んだのは、コントラストをつけるため。下町の垣根の低さや隣近所の交流というものに憧れていたのもありますね。

佐藤 かたやお金だけはあるけどビジネスライクで冷たい世界、かたやお金はないけど人情だけは溢れたあたたかい世界。その対比は鮮やかでした。それぞれの世界を代表する、主人公の立花と、下町青年の一樹も対照的ですよね。

角埜 立花は自分からガンガン動いていきたいタイプの女性なので、一緒にいてバランスがいいのはほわんとした男の子なのかなって。

佐藤 ただのサスペンスにとどまらず、コメディーとしても楽しめたのは、その対比があったからだと思います。コメディーといえば『チョコレート・コンフュージョン』。お礼のつもりで渡した義理チョコを本命と勘違いされ、社内一凶悪顔の龍生と付き合うことになった千紗。ド直球のラブコメです。

星奏 私、ラブコメを書くのは初めてで……その直前に書いていた小説が、人がばっさばっさ死ぬ話だったので、反動で明るい話をと思ったらこうなっちゃいました。

佐藤 えっ、お得意路線なのかと思っていました。可愛らしさにときめきますし、二人の視点が交互に描かれる演出もよかったです。

星奏 最初は龍生ひとりを主人公にするつもりでしたが、両サイドから描いたほうがすれ違い感が深まるかなと思って。でも、女性目線で書いたこともなかったので、世間の女の子はどんなことを考えているんだろう、とずいぶん悩みました。しかも千紗はゆとり世代で、年齢も違いますし。35歳の龍生のほうが、同じ年頃の兄がいるのでイメージしやすかったです。

佐藤 『恋するSP 武将系男子の守りかた』は、受賞作の中でもっとも意外性のある設定で、いい意味で度肝を抜かれました。戦国時代から城ごとタイムスリップしてきた長尾景虎(上杉謙信)、織田信長、武田晴信(武田信玄)。彼らを警護することになったSPの千奈美が景虎に猛アタックされる、戦うラブコメファンタジーですね。

結月 私も、直前に書いていた小説が悲恋物だった反動で、コメディー要素が強くなったクチです。その悲恋物というのが、今作にも出てくる景虎と彼のかつての恋人・由岐の物語だったんですよ。景虎が現代にタイムスリップしたらどうなるだろう?と思いついたとき、一番接点がありそうな警護人、つまりSPに、由岐そっくりな女性をヒロインとしてあてることにしたというのが書き始めた経緯です。

佐藤 それにしても城ごとタイムスリップしてくるというのが斬新ですよね。しかも三人も。

結月 彼らには殿様スタンスを崩してほしくなかったんです。天下を狙う武将然としているからこそ、現代の価値観とのギャップが面白くなるわけで。でも、異世界のような場所に一人で放り出されたら、さすがの殿様も心細いでしょうから、だったら家来も全部引き連れてきてしまえ、と。本当は今川義元も出そうかと思っていたのですが、さすがに4人は収拾つかなくなるのでやめました(笑)。

佐藤 案外ドジな千奈美のキャラに感情移入しやすかったせいもあり、驚きの設定ながら、疑問を感じている暇を与えられず一気に読み切ってしまいました。迫力と勢いのある筆力が見事でしたね。

『トーキョー下町ゴールドクラッシュ!』ポスターイラスト/阿弥陀しずく

正反対だから補い合う 想う強さが生む面白さ

佐藤 一番書きたかったシーンや台詞はありますか?

結月 武将同士が会話するところですね。信長と景虎が対話するなんて、本来はありえないことですから。あと、武将たちには絶対合コンに参加させようと最初から決めていました(笑)。未知なる現代に遭遇した彼らの姿が、書いていて一番楽しかったです。

佐藤 恋愛部分じゃないんだ(笑)。

結月 彼女自身にそれほどの思い入れはないので(笑)。彼女が恋する上司・氷川さんは大好きです。なので、氷川さんが×××るシーンは一番書きたかったところかも。

佐藤 それ、ネタバレ! 

結月 あとは、改稿するときに“守る”ことの意味を改めて考えたので、大きく言えばその部分ですかね。

佐藤 星奏さんはやっぱり恋愛要素ですか?

星奏 そういう描写はむしろ、恥ずかしさのあまり腸捻転を起こしかけました。千紗が龍生にハンドクリームを塗ってあげるシーンでは、「なんてことをしてしまったんだ!」と恥ずかしがっている彼女と同様に私も「なんてことを書いてしまったんだ!」って悶えていて。でも、書くからには振り切ってやろうと、勢いで突っ走った気がします。どんとこい、腸捻転!

角埜 (笑)。私も星奏さんと同じで、立花が一番書きにくかったなあ。わりとくよくよしがちなタイプなので、どんな状況でもめげずに立ち向かっていく彼女に憧れを託したところはあるけれど、そんな彼女がどんな思考回路を備えているのかが不思議で。

佐藤 では、一樹のほうが好き?

角埜 一樹は……嫌いなんです。

一同 嫌い!?

角埜 嘘です。好きです(笑)。でも、食堂の前で行き倒れてそのまま住みついたり、顔はいいけどふらふらしたフリーターだったり、もうちょっとがんばれよとは思います。ただ、そんな彼だからこそ、立花には必要なんですよね。人情とは無縁に生きてきた彼女だからこそ、優しさと思いやりしかないような一樹のような男の子がそばにいてくれるということが。

佐藤 真逆だからこそ惹かれあい、補い合う。龍生と千紗にもそういうところがありますね。ゆとり世代と馬鹿にされることの多い千紗に、龍生が「会社側にゆとりがないのかもしれないね」と話すシーンにはぐっときました。

星奏 ゆとり世代だからって一緒くたにされるのは可哀想だなあってずっと思ってたんですよ。新人なんてミスするものなのに、何かあれば「これだからゆとりは」って言われて。お互いをむりやり従来の型にはめこんで、ぎくしゃくしちゃってる気がしたんです。そういう垣根を取っ払って、自信をもって言いたいこと言えばいいよ、というエールもこめました。

佐藤 景虎と千奈美も、ある意味で時空を超えて垣根を取っ払ったからこそ、それぞれの“守るもの”が見えてきたんだと思います。三者三様に個性の強い小説ですが、源流には共通した強さもあるのかもしれません。それぞれの持ち味を生かしてぜひこれからも書き紡いでいってほしいです。

取材・文=立花もも 写真=富永智子

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