「二世信者」として育てられた女性が語ったあの頃…「異常だったけれど母のことを否定するつもりはない」――衝撃作『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』著者インタビュー

マンガ・アニメ

2017/12/29

『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』(いしいさや/講談社)

「とある宗教」に傾倒する母親との日々を、「二世信者」である娘の視点から描いた実録マンガ『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』(いしいさや/講談社)。100%実話として描かれた本作の内容は、実に衝撃的だ。

 世間の子たちと同じようにオシャレすることも恋をすることも禁じられ、毎週、「聖書の教えを勉強する」集会や「奉仕」と呼ばれる布教活動に駆り出される。そこには選択の自由などない。物語の主人公、そして著者であるいしいさやさんの幼少期は、きっと想像がつかないほど苦しいものだっただろう。本作を描こうと思ったきっかけから、幼少期のエピソード、そして今後の展望までをご本人に広く伺った。

■マンガ家としてのデビューは予想外の出来事だった

 いしいさんは、本作でデビューしたばかりの新人マンガ家だ。しかし、本人にとってデビューの話は予想外の出来事だったという。きっかけとなったのは、Twitterへの投稿。本作第1話の原案となるわずか8ページの作品をアップしたところ、瞬く間に拡散され話題になったのだ。

「作品をアップしたら、どんどんリツイートされていったんです。当時、フォロワー数は400人程度だったんですけど、いいねやリツイート数が100を超えたあたりからドキドキしてしまいました(笑)。朝まで通知が鳴り止まなくて、このままどうなるんだろうって……。リプライやDMもたくさんいただいたんですが、否定的な意見はほとんどありませんでした。特にDMでは似たような体験をした人からのメッセージが多くて、『みんな同じように苦しんでたんだ』とツラい気持ちになってしまいましたね」(いしいさん、以下同)

 いしいさんの投稿は、最終的に3.5万リツイートまで伸びた。それがきっかけとなり、出版社から連載の話をもらったという。そこからいしいさんのマンガ家としての人生がスタートした。しかし、当の本人はそんな状況をいまだ信じられないでいる。

「子どもの頃から絵を描くことは好きでしたし、マンガ家に憧れもあったんです。でも、自分には無理だと思っていて。Twitterへの投稿作を描いたのも、マンガ家になるためではなく、自分の過去と向き合って自身の傷を癒すため。認知行動療法のひとつなのですが、過去を客観視して絵や文章で表現することは非常に意味があるらしいんです」

 自分のために描いた作品だったからこそ、よりリアルで具体的な内容となった。それが傷を癒すことにつながるからだ。とはいえ、過去と向き合うのは相当ツラかったのではないだろうか。

「描いていて最も苦しかったのは、『鞭打ち』のシーンです。特に、他の子が打たれているシーンを描くのはしんどくて……」

 いしいさんの母親が信じている宗教では、聖書に反する行動をとった子どもに対し、「鞭で打つ」という教育を施す。そして、ここでいう鞭とは、ベルトやゴルフのグリップなどだ。それらを用いて、子どものお尻を打つのである。

img01
(C)いしいさや/講談社

img01
(C)いしいさや/講談社

 また、この体罰以外にも異常性を感じさせるエピソードがある。それが「禁止事項の多さ」だ。

「主に言われているのが、偶像崇拝、輸血、婚前交渉の禁止です。偶像崇拝にはアイドルやスポーツ選手も含まれているので、音楽番組でアイドルの歌っている姿を観るなんてもってのほか。そういった番組は、一切観させてもらえませんでした。また、他人との争いも禁止されているので、運動会での応援合戦や騎馬戦なんかに参加するのもNGでしたね。そうそう、国家や校歌も偶像崇拝に定義されてしまうので、行事でそれらを斉唱することも禁じられていました」

img01
(C)いしいさや/講談社

img01
(C)いしいさや/講談社

 思春期にも関わらず、アイドルや恋愛の話ができない。学校行事では悪目立ちをする。ともすれば、それがいじめのトリガーにもなるだろう。

「私は運が良くて、いじめられたことはなかったんです。ただ、同級生からの『触れちゃいけない』という目線は感じていました。それに、私自身も宗教のことを聞かれたくなくて、壁を作っていたんです」