「超ドMです(笑)」大横綱の家に生まれ、勝つことにこだわる花田優一さん。その“自信”はどこから生まれるのか?〈インタビュー〉

エンタメ

2018/1/17

 平成の大横綱貴乃花親方の長男の花田優一さんは、15歳で単身アメリカに留学し、18歳でイタリアの靴職人に弟子入り、現在東京で自らの工房を構える「職人」だ。このほど『夢でなく、使命で生きる。―根拠なき自信で壁を乗り越える68の言葉―』(ポプラ社)、『生粋(ナマイキ)―生きる道は自分で決める―』(主婦と生活社)の2冊の著書を同時出版。自らも「まだまだ未熟」と語る今、なぜ本を書いたのか? 熱い胸の内を聞いた。

■大事なのは「今、どうはじけるか」

――『夢でなく―』の方は、68の印象的な言葉で構成されています。こうした言葉はどんなふうに生まれたんでしょう?

花田優一氏(以下、花田) あまり頭では考えずに、その場で出てきた言葉なんです。その意味を説明しようとしたのがそのまま本になった感じですね。ただ、これを作ったのは少なくとも1ヶ月前の自分なので、今同じ出来事を語っても全然違う言葉が出てくるかもしれません。日々自分は変わっていくものですから。最初は本の中にもある「背水の陣おたく」をタイトルにするイメージで、そこに向かって言葉を出していきましたね。

――そうだったんですか。自分を追い込むのが好きってことですよね?

花田 好きですね。中毒、依存症なくらい超ドMです(笑)。崖の一番端っこに行くからこそ絶景が見えるってありますけど、「ああ、これ落ちたら死ぬな」みたいな所にいる時が一番幸せですね。僕は15歳で海外に出たんですが、その時に“行くとこまで行ってもまだ求めている自分”がいるのを自覚して、「これはただのMではないな」と。

――なんと! もともとMっ気はあったんですか?

花田 家の中には親というSがいましたからね。その存在から教育されてきたわけですから、強い者の前に立って“受ける”ことに愛を感じるように細胞ができていたんだと思います。ただ、15で家を出た時には、いつまでも「子どもに教育をしなきゃいけない」とSっ気を出させる親のままではいさせたくないとも思っていたんです。それがいざ親から離れてみたら「え? 自分で求めてる?」って気がついて(笑)。

――本には強い言葉が多いですが、それには自分を奮い立たせる面もあった?

花田 まさにそうですね。頭の中では常に自分の人生や立ち居振る舞い、考えとかの紐をほどいてはもう一回結んで…と何回もやっているのですが、この本はそれを具現化したようなもの。だからそのまま自分を奮い立たせるものでもあるんです。

 今回、『生粋』という本と2冊を出しましたが、なぜ今かといえば、生意気にも今だからこそという思いがあったから。たぶんもっと経験を積むと、言葉の幅に規制ができていくというか、経験という壁ができてしまうのかな、と。ある程度見えていることを「どうきれいに伝えるか」みたいになってしまうかもしれない。それより「今、どうはじけるか」「形にならないものをどう形に残すか」…そこが本を出す上で一番重要だと思ったんです。

■職人とは人生の重みをのせる仕事

――どちらの本もすごく力強くて、好きなものがわからないとか夢が決められないとかいう若者が多い中で、理想に邁進していく花田さんの姿はかなり刺激的です。

花田 僕の同世代は大学4年で就活が終わったばかりで、確かにそういう人もいると感じます。おそらく決められるのではじゃなくて、決めようとしないだけでしょうね。今は決めなくても生きていけるシステムができていますから。ただ、学校で教えられたままを社会だと思っている人、そしてそのままシステムの範囲の中だけにいる人たちには、「人生ってそうじゃない」と伝えたい。僕は「職人」の世界にいますが、その精神をもっと理解してもらえれば、より楽しい人生があるのをわかってもらえるのではないかと思っています。

――その「職人」とは、ご自身の中でどんな存在ですか?

花田 どこか「職人=工房で何かを作る人」みたいに思われていますが、僕は「自分を捧げて、何かを追い求める姿」を体現しているのが職人だと思っています。たとえば専業主婦は職業とはされていないかもしれないけれど、それに真剣に取り組んでいるなら、それも職人だと思います。

――いわゆるアーティストとは違う?

花田 アーティストというのは「アートを作る者」だと個人的には理解していて、仮に僕がアーティストと語ってしまうと、自分の心が甘えを出し始めると思います。これもアートだ、あれもアートだって言い始めたら、すべてアートになってしまいますからね。職人というのは「目に見えないものを具現化する存在」でもありますが、ポイントは「作る側の人生が作るものにすべてのしかかってくる」ということ。そこにはエゴと信念の違いがあるように思います。たとえば100万円の皿と100円の皿があったとき、芸術的価値なら100万円の皿が高いかもしれないけれど、100円の皿に思いがつまっているなら、そちらが価値あるものになる。人生の中で生まれる価値が大事なのであり、職人の世界とはそういうものなんです。人生の重みをのせるのが職人の仕事。それが面白さであり辛さですね。

■負けたら勝って、勝ち続けるしかない

――夢を追うのは素晴らしい。ただ夢だけ追っていると不安になることもある。そういう人にアドバイスするとしたら?

花田 たとえば「モテる」ってことで考えてみるといいと思います。おそらくたくさん人がいる所よりも、人が少ない所にいた方がモテる。もしその人がその世界にひとりしかいないんだったら、人に媚びなくたって絶対にメシは食えますよ。誰もしてないことをやり続けるカッコよさって、たぶんどんな美女にも魅力的ですからね。バカみたいなことに一生懸命になる無邪気さ、カッコよさをもっと追い求めれば、結果としていい仕事ができるし、カッコいい男になると思います。

――ヘタに妥協せず、我が道をすすめと。

花田 欲をどこかに発散するのではなくて、発散する場所をひとつに決めたほうがいい。たとえば好きな人がいるのに、他の子にも好きだとか言ってたらダメですよね。夢や仕事も一緒で、絶対に欲求は生まれるんだから、その欲求を一滴もらさずに一点に注げた人だけがたぶん成功していく。別に職業はなんでもいいんですよ。決めたらそれにしか注がない。それを決めてしまえば、仮に何かをやったって本職に戻ってくると思います。今回、僕は本作りに捧げたように見えるかもしれませんが、経験したことが結果として靴作りに返ってきますから。

 タイトルがなぜ「夢」ではなく「使命」かといえば、何かを始める時に曖昧な決断だけで突き進んでも到達できない世界があると思うからです。一生懸命になる前に、もっと夢自体を探すのに奔走するのも大事で、それで確固たる信念で決めたなら誰もが理解してくれるはずです。あとは自分さえ信じていれば自信はいつでも生まれてくる。その自信を消さないために一生懸命がんばるしかない。自信はつけるものではなくて、守るものだと思います。

――根元に「自尊心の高さ」というか「自分を信頼する気持ちの強さ」をすごく感じます。そこには育ち方の影響があると思いますか?

花田 どうでしょう。僕は自尊心がない人たちは、自分に嘘をついているだけだと思っています。自分に嘘をつかずに生きていたら自分の善し悪しはわかるし、悪いところは直していけばいい。そうすればナルシストになるし、それが自尊心にもなるんだと。僕はこれまで、自分の中の悔いや「ああしておけばよかった」ということはすべて処理して生きてきたし、自分の信じた道を1歩でもいいから突き進んできました。それが自分の中に自尊心を生む元になると思っています。負けをそのままにしていたら、負けて覚えることはありません。負けたら勝って、そして勝ち続けるしかないと思う。

――そういう考え方のベースは、何かに影響されている?

花田 もう、父親しかいないと思います。特に何かを言われたわけではなくても、やっぱり学校を卒業したあとは親が教科書になっていたんだと。「あの時なんでお父さんはああいう行動をしたんだろう」とか、それを理解しようとすることで自分の人生の使命もわかってきますから。職人の世界ではそれが師弟関係なわけで、「師匠は何をしたいのか、何を考えているのか」を考えるというのが重要だとも思います。

 親の仕事柄、小さい頃から大人に囲まれていたし、そんな中で大人たちとどう接したらいいのかとか、いろいろ環境から得てきたことは確かに多いです。その中で僕にしかわからないこと、僕しか知らないことを、今回は本という作品で見せることができたのかな、と。賛否両論はあるでしょうし、もしかすると腹が立つかもしれません。でも、それはそれだけ「感情」が動く本だということ。毒がクスリになるかもしれませんので、ぜひ読んでもらえたらと思いますね。

取材・文=荒井理恵 写真=山本哲也