いかにして人は孤独から解放されるのか―― 『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE』佐渡島庸平インタビュー【前編】

文芸・カルチャー

2018/8/1


クリエイターのエージェント「コルク」代表として、数多くのヒット作を世に送り出してきた佐渡島庸平さん。インターネット時代の到来と従来のビジネスモデルが崩壊していく中、新たな可能性を“コミュニティ”に見出した佐渡島さんは、2017年1月にオンラインサロン「コルクラボ」を設立、今年5月にはその活動を通して考えてきた“新コミュニティ論”として新刊『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE 現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ』を刊行した。現代社会に生きる私たちは、どのようなコミュニティを必要としているのか。著者の佐渡島さんに聞く。

――佐渡島さんがコミュニティについて考え出したきっかけは何だったのでしょう?

佐渡島 堀江貴文さんが主催するオンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学」(HIU)に「編集学部」の教授を担当して、実際に参加者の活動を目の当たりにしたことです。みんなとくに“ホリエモン信者”というわけではなく、堀江さんが作ったコミュニティの中でそれぞれが自由につながって、いくつものプロジェクトを動かして形にしている。その行動を見て“新しいコミュニティの時代”が来ているな、と。

 もともと、コルクが作家をサポートしていくために従来のファンクラブとは異なる“ファン・コミュニティ”を作る必要があると考えていたので、HIUは大きなヒントになりました。そこで、改めて自分でもコミュニティについて学んでいこうと思って立ち上げたのが「コルクラボ」です。ひとりで本を読んで勉強してもすぐに飽きてダラけてしまいそうだったので、仲間を集めようと思って(笑)。まず、驚いたのは参加者の募集に予想をはるかに超える人数から応募があったこと。コルクラボを立ち上げてから1年半ほど経ちましたが、この間に新しいコミュニティの持つ力に多くの人が気づき始めている感触がありますね。

――そんなコルクラボでの活動が、今回の新刊『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE』につながったのですね。

『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜 』(佐渡島庸平/幻冬舎)

佐渡島 コルクラボはいわばコミュニティについての実験の場なんです。いくつもの仮説を立てながらさまざまな活動をしていますが、当然そのすべてにメンバー全員が参加しているわけではないし、掲示板の投稿なんかも全部読んでいるわけじゃありません。そこで僕がこれまでコルクラボの活動を通じて学んだことをフィードバックして、みんなが改めてコミュニティについて考えるきっかけにしてもらうために『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE』を書きました。僕自身、本にすることで、これまでコミュニティについて考えてきたことを体系化できたと思っています。


――新しいコミュニティの可能性は「インターネットの中で「好き」を中心にしてできたコミュニティ」にあると書かれていますが、これからコミュニティのあり方はどのように変化していくのでしょうか。

佐渡島 これまではリアルなコミュニティのあり方を変化させるためにITツールが使われてきましたが、現在ではオンライン上にもうひとつ世界が作られるような形で新しいコミュニティが作られるようになっていて、今後はリアルよりも先にオンラインコミュニティで人間関係が形成されることが当たり前になっていくでしょう。Facebookでたまに「友達申請はリアルの知り合いのみ」なんて人がいますよね。ちょっと言い方は悪いですが、そういう人はもうすでに旧世代に属しているといっていいと思います。江戸時代から明治時代へと変わっていく過程では、きっと古い価値観と新しい価値観がぶつかり合うようなことが起きたはずです。“「武士は食わねど高楊枝」みたいな生き様はもう通用しない!”とか(笑)。コミュニティに関しては、それと同じような状況がもう起きています。
ただ、現状ではオンラインコミュニティの作り方やマネジメント、情報共有の仕方や振る舞い方といったものはまだしっかりと確立されていません。リアルのコミュニティの仕組みをオンラインに持ち込むと面倒でうまく機能しないし、逆にすべてを自由にオープンにしてしまうと今度はコミュニティ形成に重要な“安全と安心”が確保されないんですね。コルクラボでは、どうすればみんなの心地よい居場所になるようなコニュニティを作ることができるのか、積極的に試行錯誤しています。

――リアルなコミュニティではなく、オンラインコミュニティに可能性があると考える理由はどんなところにあるのですか。

佐渡島 リアルだと多くの人と長期的に深い人間関係を築くことって、意外と難しいんですよ。いろいろなことを熱く語り合った学生時代の友人も就職して別々の業界に行けば次第に話すことがなくなっていくし、同じ会社で友人ができても社内での立ち位置が変われば同じような付き合い方はできなくなっていきます。恋人同士も、血のつながりのある家族も、常に良好な関係が続けられるとは限りません。でも、オンライン上で「好き」という価値観でつながったコミュニティだと、長期的に安心して維持できる人間関係が築きやすいのではないかと考えています。そこには住んでいる場所やリアルな社会での立場といった制約もありません。きっと3~5人ぐらいは「好き」という価値観を共有できる仲間が見つけられるはずです。そこで信頼できる関係性を作ることができれば、その3~5人のそれぞれの周りにいる数十人とも健全な関係を結べるでしょう。今は急激に時代が変化していて、多くの人が誰ともうまくつながれず、自分の居場所がないと感じています。しかし、こうした新しいコミュニティを作っていくことがうまくいけば、その先にはみんなが孤独から解放される時代が待っていると思います。

取材・文:橋富政彦
写真:山本哲也

|| インタビュー後編はこちら ||