2ndアルバム&ライブも決定! ますます研ぎ澄まされる、早見沙織の音楽世界――早見沙織インタビュー

エンタメ

2018/9/19

 少し時間はさかのぼるが、5月29日に東京キネマ倶楽部で開催された『Hayami Saori Birthday Special Live 2018』における早見沙織のパフォーマンスは、とても鮮烈だった。ワンマンライブは、1stアルバム発表後のツアー以来、およそ1年半ぶり。その日、会場全体に満ちていたのは、表現すること・音楽を作ること・歌うことへの衝動と欲求だった。天性の声に恵まれているだけでなく、自らが過ごす日常から表現のきっかけをすくい取り、形にしていく早見沙織の音楽には、聴き手の心を動かす情熱が詰まっており、まっすぐに届いてくる。5月のバースデーライブは、その情熱がふつふつと感じられるステージだった。そして届いた最新シングルが、『劇場版 はいからさんが通る 後編 ~花の東京大ロマン~』の主題歌、『新しい朝(あした)』(9月19日リリース)。『はいからさん』前編の主題歌“夢の果てまで”に続き、作詞・作曲を竹内まりやが手掛けた“新しい朝”は、「自分の心が揺さぶられること」を大切にしたという早見のアプローチにより、ひとりの人間の感情をエモーショナルに表現した懐の深い名曲になっている。そして、早見自身が作詞・作曲を担当した、カップリングの“メトロナイト”と“SUNNY SIDE TERRACE”。いずれも、キネマ倶楽部で見せた表現への衝動と、作り手としての「早見沙織らしさ」が存分に詰まった佳曲である。12月には2ndアルバムのリリース、その後にはスペシャルライブと二度目のツアーも控えている早見沙織が音楽に向かう感性は、さらに研ぎ澄まされつつある。その現在に迫った。

(“新しい朝”は)全部、自分の中に返ってくる歌だったんです

──『劇場版 はいからさんが通る 後編~花の東京大ロマン~』の主題歌で、5枚目のシングルとなる“新しい朝”を聴かせてもらったんですが、名曲すぎてちょっと震えました。

早見:泣けますよね。わたしも、リスナーとして泣けました。歌ってるときもちょっと泣きそうになって、マスタリングした曲を聴いて、また感動しました。

──“新しい朝”は『はいからさんが通る 前編』の主題歌“夢の果てまで”と同じく、竹内まりやさんの作詞作曲ですけど、前回以上に曲として大きいし、包み込むような力があるじゃないですか。歌う側としても「どうすれば?」ってなるんじゃないかと想像したんですが、スケール感をことさらに出すのではなく、結果大きな曲にしないといけない、というところが難しかったのではなかろうか、と。

早見:そうです、そうなんです。そのとおりなのです(笑)。

──(笑)となると、今まで歌ってきたどんな曲とも向き合い方が違ってくるのかなと思うんですけど、“新しい朝”を自分の中に浸透させて、いい曲に仕上げるためにしたことって何だったんでしょう?

早見:それが、一個あるんですよ(笑)。改めて、「そうだよね」と思ったことがあって。この曲って、リスナーの誰もが壮大だなって感じてくれる曲で──わたしも初めて聴いたときにそう感じたし、だからこそ寄り添ってくれるし、包み込んでくれる曲でもあって。わたしがひとりの聴き手だったら「それが最高!」って思って聴くんですけど、次にそれを伝えていく、歌う人になったときに、はじめは「どうしようかなあ」って考えてたんです。けど、歌ってるときって何も考えないんです。これって、いいことなのか悪いことなのかわからないんですけど、自分が歌っていて、めちゃめちゃ自分の心が揺さぶられたというか。

──なるほど。

早見:全部、自分の中に返ってくる歌だったんですね。歌っていて、自分のこれまでのことをいろいろ考えて、込み上げたりするものがあって、「うわぁ……」ってなりました。すごくスケールが大きくて、万人に届く普遍性を持った歌だと思うんですけど、最終的には自分の内側の揺さぶりに返ってきたんです。

──それはディレクションの結果ではなくて、自分でそういう歌にしていった?

早見:はい。歌っていて、うるーってなったときがあって、そこで思いましたね。誰かに届けよう、誰かの心を感動させよう、みたいな歌い方をしようとするのではなくて──歌の技巧的な部分はわからないですけど、結果、歌っていて一番感動したときのテイクを採っているっていう感じです。今回、リンクしているなと感じたのですが、日々の自分のいろんなことを思い返すというのはお芝居でも同じです。最近感じつつあることなんですけど、頭で考えて出したものと、台本からぐわーっと感性に訴えかけてもらって、自分の心を揺さぶられて出したものって、もしかしたら届き方は同じかもしれないし、感性で出したものじゃないほうがよかった場合もあるかもしれないですよね。「考えて出したお芝居のほうがよかった」って思う人も、いるかもしれない。だけど、わたしの場合は最終的には、心を揺さぶられて出したときのほうが精神衛生上いい、というか(笑)。自分の心としてもすっきりするし、「だからいいんだ」「そうだったからいいもん」みたいな(笑)。

──(笑)今の話、まさにこの“新しい朝”に感じることとリンクしますね。この曲はスケールがデカいけど、スケールがデカいから感動するわけじゃないんですよ。なぜ感動できるかというと、ひとりの人間、『はいからさん』の紅緒の生き方が、ここに描かれてるからであって。

早見:そうなんですよね。そして、それが根本じゃないですか。感情の根本が描かれてるから、どんな人にもしっくりくる曲になってると思います。

歌っていたら《もっと騒いで/もっと働いてよ》っていう歌詞が出てきて、自分でも「なにこれ?」みたいな(笑)。

──“新しい朝”という名曲が誕生した一方で、早見さん自身の作詞・作曲によるカップリングが、ハンパじゃないことになってるな、と思ったんですけども。

早見:ほんとですか。“新しい朝”の並列で、流れでいくのは照れくさいですけど(笑)、カップリングも頑張りました、はい。

──まずざっくり訊くと、カップリングの2曲はこのシングルのために書いた曲ですか。

早見:タイミング的には、“新しい朝”を録った頃くらいに作ってますね。両方同じタイミングでできあがって、シングルに入れるかもしれないし、入れなかったら、のちのちどこかで入れるかも、くらいの塩梅でした。いくつか候補を出した中で、「カップリングに入れるなら、これ」っていう。

──つまり最新モードである、と。

早見:けっこう、新しい感じではありますね。

──なるほど。まあそうでしょう!

早見:何かを見抜かれた!(笑)。

──(笑)音楽を作る感覚が、さらに研ぎ澄まされた感じがしますね。まずM-2の“メトロナイト”は、これまでの音楽活動の中でも話に出てきたように、いわゆる日常の断片が曲になった最たる例だと思うんですけども、この歌詞をどのように着想していったのかを聞きたいです。

早見:これは、歌詞を書いてたときネオンの中を歩いてたわけではないんですけど(笑)、これまで数多歩いてきた場所の記憶などを活かしてます。最初は、普通に曲をつるっと作ってたんですけど、サビに《もっと騒いで/もっと働いてよ》っていう歌詞があって、歌っていたらなぜかそこだけ出てきて。メロディを考えてるときに、わけわからない英語とか、わけわからない日本語が出てくることがあるんです。たぶん、音の響きで選んでるんだと思うんですけど。今回はそれが《もっと騒いで/もっと働いてよ》っていう歌詞で、自分でも「なにこれ?」みたいな(笑)。

──ははは。

早見:「なにこれ?」ってなって、「まあ、別にいいか。どうせ使わないし」って思っていたんです(笑)。だって、ある意味矛盾したことを言っているし。

──確かに。

早見:歌詞全体の流れがあると意味がわかるんですけど、《もっと騒いで/もっと働いてよ》とだけ出てくると、「え、どうした?」「大丈夫かな、自分」ってなって。サビの部分だけそうやって出てきたんですけど、ひとまずは歌詞なしで提出しました(笑)。

──(笑)原曲は、ピアノで作ってるんですか。

早見:ピアノです。ピアノで作って、提出して、カップリングに入れることが決まって、歌詞を書こう、となりました。アレンジは、イントロのメロディをギターのリフにしてカッコよくしてほしいです、みたいなお願いをしました。

──ギターを基調にした感じにしたいというイメージを、自分から発信した、と。

早見:そうです。なんとなく、テンポ的にも速めのものを作りたくて。“新しい朝”のシングルに入ることを考えると、「バラードじゃないほうがいいな」って思っていたんです。それで、ちょっとテンポを速めにして、さらに「リフのところをちょっとギターっぽくして」って考えたら、プロデューサーに突然話がめちゃめちゃ通じて「これ、カッコいいかも!」ってなって、ふたりで盛り上がって。それで倉内さん(編曲の倉内達矢)にお願いしたら、もうイメージほぼ100、みたいな曲が返ってきて、「これです」ってなったんです。

──確かにアレンジがすごくカッコいいし、同時にメロディが素晴らしいんですよ、この曲は。

早見:ええっ、そんな! とてもありがたいです。倉内さんの編曲を聴いて、「はっ! もしやあのときの謎のサビの歌詞、使えるかも!」って突然思って。わたし自身アーバンっぽいものが好きだし、こじゃれた感じがいいです、とお願いしたところ、それを倉内さんが汲んでくださったんです。編曲を聴いた瞬間に、たとえば新宿の金曜日の靖国通り、みたいなイメージが浮かんできて。人がいっぱいいて、タクシーもいて、ネオンもあって、地下鉄や電車も動いていて。休みなく働いてる人と、休みに向けて騒いでる人がいて、みたいなイメージがバーッと広がって、「はっ! あのときのわたしの謎の深層心理、ありがとう!」みたいな(笑)。

──それが《もっと騒いで/もっと働いてよ》に──。

早見:つながりました。それでもう、「わぁぁーっ!」ってなって、歌詞を作りました。

──頭の片隅にあったビジュアルイメージが言葉として出てきて、曲によって呼び覚まされて歌詞が膨らんでいった、と。

早見:ほんとにそうなんです。

──言葉選びもいいですよね。《着膨れる東京》《指先だけで/捩じ伏せる感傷》とか。

早見:ははは。わたしがただ、こういう抽象的な言い回しが好きっていう。ある種直接的な曲ではあるけれども、それこそ《着膨れる東京》は、別に人々がいっぱい着込んでるわけじゃないけど、いろんなものをいっぱいもらうんだけど全然足りなく感じる人たち、みたいな。電車の中でスマホをいじって退屈を紛らわしているんだけど、でも心の中はどこか……、みたいなことも、直接的には書いてないですが、イメージしてますね。

──“メトロナイト”の歌詞は、早見沙織節、らしさが確立されたことを感じさせる曲だなあ、と思いますね。おしゃれな曲を心地よく聴いていたら、急に強いワードを放り込まれる、みたいな。「えっ、今、命令されたんだけど!?」って(笑)。

早見:ははは。「すみません!」ってなる感じ。確かにそれはあるかも。

──M-3の“SUNNY SIDE TERRACE”は、これまでの本人曲の中で、一番ポップでアッパーな曲だなあ、と思いました。前作の“Jewelry”のときも「明るい曲を作りたい」という狙いがあったけれども、今回の場合は今の気持ち、モードとして、こういう明るい曲が自然に出てきたのかなあ、と想像してまして。

早見:確かに、こういうアッパーな曲のほうが書きやすかったかもしれないですね。作ってる途中くらいから考えてたんですけど、まりやさんの曲が表題になるシングルに入ってくれたら嬉しいな、みたいな気持ちがあって。勝手なイメージですけど、まりやさんの曲にはいろんな歌があって、応援してくれる曲や、悲しい曲もありますけど、女性から女性へのエールのような曲も、たくさんある気がしていて。女性が憧れる、遠すぎず近すぎないカッコいい女性像、みたいな。“SUNNY SIDE TERRACE”から想像できる世界観も、そういうところにマッチしているから、今回のシングルに入ってくれたら、より意味があるものになっていくなあ、とは思いました。

──1年前、同じディスクの中で自分も作詞・作曲とクレジットされることにビビってた人とは思えない発想に聞こえるんだけど(笑)。

早見:いや、ほんとですよ! 今もビビってますけど、「もう、1枚やっちゃったから」みたいな(笑)。でも、カップリングまで聴いてもらえたら、すごく嬉しいですね。好きな曲を入れられました。

──この曲の歌詞も、聴いたときに驚きましたね。言葉数が多いわけではないし、難しい言葉も使ってないんだけど、すごく物語性があるんですよ。

早見:ありがとうございます。カメラアングルは、すごく意識しましたね、映画っぽいイメージは持ってました。

──高低差があるっていうのかな、ふわっとしたところと、グサッとくるところがあって、1曲の中でわりと上下動するんだけど、聴いてる側は全然不安にならない感覚があって、そこが面白いなあと思って。寄り添う感じと突き放すような感じが、同居しているというか。

早見:あっ、面白いですね。そう考えると――ちょっと“メトロナイト”に戻ると、レコーディングのときに「どういう歌い方をしようか?」って相談したことがあって。曲が、無機質でわりと硬めなんですよね。歌詞もある種無機質な部分があるけど、歌い方も硬い感じでやったほうがいいのか、感情面を感じさせるようなニュアンスがいいのか、ということで、何度も何度も歌ったんですよ。そうしたら、ある種どっかで突き放したような感じ、Sっ気のあるニュアンスというか(笑)、そういうものが入っていたほうが、無機質すぎるよりも歌声としてはいいんじゃないか、という話になって。そういう共通性はあるのかもしれないですね。

──カップリングの話を聞いてると、これまで以上に曲や歌詞に関するビジョンが明確ですよね。ただ「これがやりたい」ではなく、言葉もメロディもあって、全体としてこんな曲にしたいっていうビジョンがクリアになってる感じがする。スタート地点は《もっと騒いで/もっと働いてよ》みたいに、一個ゴロッとした塊が出てきて、それを膨らませていくんだけれども、そこから完成形への道筋は、以前がボコボコしてる道だったとしたら、今はわりとストレートに到達できてる、みたいな。

早見:そうなってくれたら、すごく……いいかも。でもまだ、全然です。それこそ、ちょうど今はアルバムを作ってるので、「うーわあー!」みたいになって、濁流に呑まれたりしてます(笑)。

──1年前、「音楽活動を始めたときの自分がゼロ歳児で、今は3歳児か4歳児」という話があったけど、今回のシングルを作り終えた今は、何歳児の感覚なんですか。

早見:そういう意味では、歳はとったり若返ったりするんだな、って今回思いました(笑)。突然、「なんでこんなものが自分から出てきたんだろう?」って思うときもあれば、1週間後に「もうダメだ、マイナスに戻った」ってなるときもあって。60代になるときもあれば、胎児に戻るときもある、みたいな。

──飛距離がすごい(笑)。

早見:(笑)60まではいってないかな。30くらいかな? いや、20くらいかな。いや、15くらいかも(笑)。中学生くらいからゼロになるときは、よくありますね。

──今回のシングルの充実ぶりを見ると、12月の2ndアルバムも楽しみですよ。

早見:アルバムは、絶賛……。

──大丈夫。このカップリングの2曲を聴いたら、大丈夫としか言えないですね。

早見:そう、募集して、来た曲がめっちゃカッコいいです! 「歌うの超楽しみ!」みたいな曲もあって。でも、わたしの曲もある程度入れてもら──えるかも? その中で、いろいろやってます。

『劇場版 はいからさんが通る 後編~花の東京大ロマン~』の公開にあわせて、主人公・花村紅緒として『はいからさん』を語る早見沙織インタビュー「声優編」も配信予定!

早見沙織『Jewelry』インタビューはこちら 
早見沙織『夢の果てまで』インタビューはこちら

取材・文=清水大輔