間違った“しつけ”していませんか?「ついガミガミ…」が子どもの伸びる芽をつみとっている!?

出産・子育て

公開日:2018/12/14

 “ママの3大悩みを絵本で楽しく解決!”をテーマに、自身がプロデュースしたキャラクター・クマタンのしつけ絵本を8月に発売し、11月には第11回ペアレンティングアワードの文化人部門も受章したタレント若槻千夏さん。今回、絵本の監修にも携わった東京大学名誉教授の汐見稔幸先生と、子育ての悩み、特にしつけについて対談しました。

しつけは言わば“しつけ糸”。
世間にどうやって合わせるかを親がざっくり教えてあげること

 そもそも子どものしつけは、どう捉えればよいのでしょうか?

汐見先生「親が子どもに対して、世間でやってはいけないこと、すると恥ずかしいことの判断を“要求”していくことなんです。子どもの行動は2つ、やりたいようにやるか、世間に合わせて行動するか、だけ。しつけは、後者の行動ができるように“求める”ことです」

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若槻さん「しつけは何歳からすればいいんでしょう?」

汐見先生「0歳からですね。ただね、しつけは“しつけ糸”のようなもので、親は世間のルールに合わせるように、ざっくりと枠組みをつくるだけでいいんです。最初は本当の意味を分かっていませんが、行動しているうちにピンときて、そのうちやっていいことと悪いことが子ども自身でわかるようになるんです。例えば“赤信号は止まるもの”ということとかね。自分で良い・悪いを判断し、世間に合わせることができるようになったとき“しつけ糸”をスッと抜く。親の導きから手を放し、行動を子どもの判断にゆだねる時期ですね。思春期、反抗期くらいかな」

若槻さん「すごい!“しつけ糸”ですか!」

汐見先生「大切なのは、しつけ糸を“抜ける”ようにしておくこと。強く縫いすぎると抜けなくなる、自分で判断ができなくなってしまいます」

若槻さん「でも実際どう子どもに伝えていけばいいのでしょうか?」

汐見先生「最初からがっちり厳しく、固めないこと。自分で自分の行動が決められなくなってしまいます。親に反抗するくらいの子の方がいいんですよ。そういう子は、自分でモラルを作るから。ですが、逆にゆるすぎると考えや行動が定まらないので、その塩梅は考えなくちゃいけないんですけれど。子どもの性格をよく見るといいかもしれません」

6歳と1歳の2児を育てる若槻さん。
“うちはパパが厳しく言う係 私は怒らずほめる係”

 では実際に、若槻家では、どのようなしつけをしているのでしょう。

若槻さん「うちは共働きなので、パパと私と半々で育児をしている感じです。しつけに関しては、ふだん無口なパパが冷静に伝える言葉に、子どもはドキっとするみたいで。その様子を見て、私が言うよりも効果があるなって思ってから、私は何も言わないようにしています」

汐見先生「日本の育児は、何でもママに集中することが多くて、ママがガミガミするでしょう。それがないのは、若槻さんにとってもすごく楽ですよね。ガミガミするとね、子どもの心にチクチクチクチクって小さな傷がついていくんです。それができるだけ少ないほうが、心が丸い子になる」

若槻さん「そういえば……幼稚園でも今のところ、何の問題もないんです。私がぼーっとしているからかもしれませんが(笑) あと、あれダメこれダメとセーブしないからか、何でもしゃべってくれます。幼稚園での些細なできごとも、ママこれどう思う?と意見を聞いてくることがあって。そういうときはまずは娘の意見を聞いて、間違ってなさそうだったら否定しないくらい。特に何もやっていないんですよね」

汐見先生「それは結果としてすごくいいですよ」

若槻さん「下の子が生まれる前に仕事復帰したので、パパが積極的に手伝ってくれます。私に育児ストレスが少ないぶん、子どもの話を聞こうとか、少し余裕があるのかもしれないですね」

いつでも親が守ってあげる、
という安心感を子どもに与えることも必要

汐見先生「親っていうのは、子どもに対して“要求する役割”と“どんなことがあってもあなたを守るよ”っていう役割と2つある。きっと、若槻さんのお嬢さんはママには何言っても叱られないって分かっているんです。守ってもらえるって感じたくて、たくさんおしゃべりしてきているのでしょうね。それを、あなたそれなに?どうだったの!ってきつく返してしまうと、それは“要求”になって、子どもはだんだんしゃべらなくなります」

若槻さん「私がほめられて伸びるタイプで、怒られて伸びた試しがないから……」

汐見先生「普通そうです(笑)」

若槻さん「いつも、小さいことでも大げさにほめています」

汐見先生「ほめて伸ばすことの先には、自立させることが必要になります。“それは自分でやってね”というように、だんだん手を放していくんです。小学校高学年、中学生くらいかな」

若槻さん「もっと厳しくしたほうがいいのかな、って自分の子育てに悩むことがあったのですが、こんな感じでも大丈夫なのかも(笑)って、思えてきました!」

 ついガミガミ言ってしまう日本のお母さんたちが多いと汐見先生も話していましたが、怒らずどんなときも話を聞いてあげるという若槻さんのスタンスに、若槻家のほんわかした日常が見えた気がします。

 クマタンのしつけ絵本は、若槻さんも直面した子育ての悩み「トイレ」「食べ物の好き嫌い」「寝かしつけ」をテーマにうまれました。若槻さんの“ほめて伸ばす”子育て感を、絵本でもぜひ感じてください。クリスマスプレゼントにもぴったりです!

取材・文=田中 希 撮影=廣江雅美