グローバル社会で活躍できる人に共通する6つのポイントとは? “全米最優秀女子高生”の母・ボーク重子さんに聞いた!【前編】

出産・子育て

2019/3/27

「全米最優秀女子高生」の母・ボーク重子さんの教育法が注目されている。学力より大切な「子どもの資質」を説いた著書『世界最高の子育て』も、正解のない問題を解決できる人間力の育み方を伝えた『「非認知能力」の育て方』も話題となり、講演にも多数登壇。さらに、このたび発売された『世界基準の子どもの教養』(ポプラ社)では、グローバル社会で活躍する人に共通する6つの教養の身につけ方を力説している。ボークさん自身が「海外での苦い経験からその必要性を強く感じた」と語る教養が、今なぜ日本人に求められているのか話を伺った。

■日本人がなかなか培えない「3つの教養」

――『世界基準の子どもの教養』の前書きには、ボークさんご自身が、外国人のコミュニティに入れず辛い思いをした頃の体験談が綴られていますね。

ボーク重子(以下、ボーク) 私がアメリカに移住した頃は、どこの集まりに参加しても「壁の花」になって友だちができなかったんです。「他の人も私とそれほど経歴は変わらないのに何が違うんだろう?」と思い悩んだ時期が2年間ほど続きました。また、今はやっていないのですが、当時運営していた女性の応援サイトのQ&Aコーナーにも、同じような悩みを持つ女性から真剣な相談がたくさん寄せられて、これはいい加減には答えられないぞ、と思ったんです。

 そこでまず、海外に住む日本人共通の悩みの原因を知るための基盤として、ライフコーチの資格を取りました。さらにギャラリー経営者として起業したことがきっかけで、外国人と日本人の違いがいろいろと見えてきたんです。その中でも特に重要なポイントが、私たち日本人が生まれ育った環境ではなかなか培われない3つの教養だと気がつきました。

 ひとつはリベラルアーツです。日本でもリベラルアーツを学べる大学は増えてきましたけど、教養教育のようなニュアンスが強くて意味合いが違います。本来、リベラルアーツというのは、自由とは? 経済とは? 正義とは? 国家とは何か?といったさまざまな問いを立てて、専門書で著者の思考プロセスと対話しながら自分と向き合い、自分の考え方や生き方についての意見を構築していくための学びです。つまり、本は自分の考えを深めるためのツールであって、ただ知識を身につけて終わるのでは意味がないんですね。

 2つ目は、社会に対する関心を持ち、自分とのつながりを持つこと。日本の子どもたちは小さい頃から、将来の夢を聞かれることがよくあります。それはそれで大切なことなのですが、グローバル社会で活躍する人たちは常に、「自分は社会をよりよくするために何ができるのか?」について考えています。そのため、ボランティアや社会貢献活動に参加するなどして、社会に関心を持ち行動しているんです。

――従来の日本のように、勉強していい大学に入るとか、いい会社で働くといった自己実現だけでは、社会がまわらなくなっているんですね。

ボーク その通りです。特に、アメリカのトップの大学に通う学生たちは、「21世紀をよりよくするにはどうすればいいか?」ということに考えがシフトしています。「どうやったら自分を社会に役立てることができるか?」という意識がなければ、取り残されていってしまうからです。

 3つ目は、グローバル社会におけるコミュニケーションで求められるメンタリティーです。このメンタリティーには3つありまして、1つは人や社会に対して公平、公正で差別や偏見を持たないこと。賛同するか反対するかは別問題で、まずは相手の存在を認めて立場を思いやる共感力のことです。2つ目は男性が対象で、女性を同等の人間として尊敬すること。3つ目は女性が対象で、日本でよく使われる「女子力」よりも、独立した強い存在としての意味が強い「ガールパワー」を身につけることです。

■「女子力」より「ガールパワー」

――それはポークさんご自身も、アメリカに移住してから身につけたのでしょうか。

ボーク 私も日本にいる時は、勉強だけしていればいいと言われて育ちました。でも勉強は嫌いだったので、家計を助けるためにアルバイトでもしようと思ったら、「バイトなんかしなくていいから勉強しなさい!」と言われました。そうやって無理矢理勉強させられて、親の言うことを聞くのが当たり前と思って育ったので、自分で考えることができない指示待ち人間になってしまったんです。

 その後、大学を出て外資系企業に勤めましたが、30歳で辞めてイギリスでアートを学び、主人と出会ってアメリカで結婚、出産しました。そしてワシントンDCにアートギャラリーを開きたいという夢を持つようになり、ようやく自分がやりたいことに自信を持って、この新刊本に書いたような教養を少しずつ身につけていったのです。同時に娘のことも、私のように自信のない指示待ち人間になってほしくないという一心で育ててきました。

■「非認知能力」を育てる条件

――特にボークさんが子育てでこだわってきたことは何でしょうか。

ボーク 実はアメリカも20年近く前までは、IQや学力テストなどの認知能力ばかり重視する日本と似たような教育が一般的でした。そこで、娘には私と同じ経験をさせないために、4歳から9歳まで非認知能力の教育法を行っている学校に通わせたのです。非認知能力を育てる条件は、「存在を認める」「個性を認める」「楽しい」「パッション」の4つですから、家庭でも日々そのことを意識しました。親子で会話する時も、娘が言いたいことを言いやすい雰囲気で、娘の意見に全力で耳を傾けてきました。娘が何かで失敗しても、それまでのプロセスや頑張りを認めて励ましました。習い事のバレエを楽しそうに頑張っていた娘のパッション(情熱)も尊重しました。

 アメリカではこのパッションという言葉をよく聞きました。勉強が目的のはずの学校の先生にも、「パッションが一番大切です」と言われた時はびっくりしましたけど、「学校は自分の生き方を見つける場所だから、子どもの好きなことに対するパッションを育まなければならない」と。その言葉にとても共感しました。その後、バージニア大学と米政府の共同研究で、「非認知能力」を伸ばすと自然と学力が上がることが証明されて、今この教育法が一般に広がりつつあります。

――日本の義務教育とはまるで異なりますね。

ボーク 日本も、トップクラスの中高一貫校は非認知能力の教育にかなり力を入れはじめていますよね。今までは、そういう一部の学校に通う生徒さんにしかチャンスが与えられてこなかったわけですが、文部科学省は2020年に非認知能力の育成を取り入れた教育改革することを決めました。そのインパクトは結構大きいと思っています。実際どうなるかは、はじまってみないとわかりませんし、改革が定着するまでの移行期の問題もあると思いますが……。

――それだけに、これからますます家庭教育が重要になりそうです。

ボーク やはり子育ての基本は家庭です。家族というのは、社会における最少にして最強のチームで、子育てのベースとなるコミュニティですから。そこで子どもが、自分は生まれてきてよかった、自分は認められている、話も聞いてもらえる、社会の役に立つ人間なんだ、と思えるようになることが何よりも重要なんですね。そのように自己肯定感が高く、自分の考えや意見も言える人間に育てることが、親の一番の役目です。しかも家庭教育はお金が一切かかりませんから、今日からすぐにでもみなさんにこの本で伝えたことを実践していただけたらとても嬉しいです。

後編は4/4(木)公開予定です。

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取材・文=樺山美夏 撮影=内海裕之