生きづらさと戦うロリータの咆哮 『戦うみみちゃんと不条理な世界』発売記念対談■うさぎのみみちゃん×青木美沙子

マンガ・アニメ

2019/8/3

 好きな服を着ているだけなのに、「恥ずかしくない?」「男ウケ悪いよ」なんて余計なお世話。「あなたのためを思って」と親切を装うクソバイスもいらねーよ! 痛快なひと言で、この世の不条理をバッサリ斬り捨てる“戦うロリータ”うさぎのみみちゃん。今やTwitterフォロワー数10万人を超えるみみちゃんの4コマコミックエッセイが、7月26日ついに発売! 単行本の発売に先駆け、6月16日にはロリータファッションモデル・青木美沙子さんとのトークイベントも行われた。来場者の約半数がロリータ服に身を包む華やかな会場で、二人がロリータの楽しさ&しんどさ、とっておきの美容法、“好き”を貫く姿勢について語り尽くす!

うさぎのみみちゃん●ロリータ服とうさぎを愛し不条理と戦うアラサー一般人。
Twitterアカウント @usagitoseino

あおき・みさこ●ロリータファッションモデルをしつつ、ナースとしても働く。2009年外務省任命カワイイ大使として25カ国45都市以上の国を歴訪。2013年日本発祥のロリータファッション普及目的に日本ロリータ協会を設立。ロリータファッションBOOKの発売やプロデュース業も行う。

仕事の疲れを癒すなら、大好きなロリータ服で!

──今日は、単行本にも描かれているさまざまなテーマについてお二人に話していただきます。まずは、ロリータの楽しさについてお願いします。

青木美沙子(以下、青木):私の場合、最初はお仕事でロリータファッションをするようになったんです。みみちゃんは、何がきっかけでした?

うさぎのみみちゃん(以下、みみ):小さい頃から、母の趣味でShirley Temple(レースやフリルを多用した、プリンセス感あふれる子供服のブランド)のお洋服を着ていたんです。中学生になってからは何を着たらいいんだろうと悩みましたが、そこからロリータ服の存在を知って、好んで着るようになりました。約2年前に私がTwitterを始めた頃は、ずーっとロリータのマンガばかり描いていましたね。私自身ロリータが好きだし、ロリータの世界で生きてきたので。楽しいことはもちろん、“ロリータあるある”もたくさん描いてます。

青木:今日もちょっと暑いけど、「ロリータに夏は大敵」とかね(笑)。

みみ:しかも神経質で細かい性格だから、「ロリータは夏、暑いよね」ということをものすごい話数を費やして描いているんです。ただ「暑いよね」だけでなく「どう暑いのか」ってところまで掘り下げていて。

青木:他には、「私たちって一般的な服のコーデが苦手だよね」っていう“あるある”も共感しました。普通の服をコーデすると、めちゃめちゃダサくなるんです(笑)。

みみ:変な猫のトレーナーとか着て、「中学生が着る服じゃん!」って言われちゃう。

青木:普通の服に大きめのスイーツのアクセサリーをつけたら、「えー!」と引かれたこともありました。感覚がマヒしてるのかも(笑)。

みみ:どんな服にもパニエ(スカートを膨らませるためのアンダースカート)を入れたくなるのも“ロリータあるある”ですよね。普通の服には入るわけないのに、それでも履きたい(笑)。

青木:こういう感じで、一般の人にわかってもらえるか不安なくらいマニアックなマンガなんです(笑)。でも、今日来てくださっている方なら「めっちゃわかる!」という“ロリータあるある”がいっぱい。私も、読んでいて面白かったです。特に“コーデ合わせ”に関するマンガは楽しかったですね。私たち、お茶会やディズニーランドに遊びに行くときは、友達と“コーデ合わせ”をするんです。今日の私たちも、双子コーデだしね。でも、それも一般の方からすると「え?」って感じらしくて。

みみ:そうなんです。私は普通の会社員なので、普段ロリータ以外の方々ともお付き合いがあるんですね。そういう人たちと「いちごのスイーツブッフェに行こうよ」って話していた時、「私、いちごのワンピース着ていくね。なにかいちごの服、持ってる?」って聞いたら「え、持ってないけど……」って。そうか、普通はいちごの服は持ってないし、コーデを合わせることなんて考えてもいないんだって気づきました。

青木:お洋服を楽しんだりコーデを合わせたりすることって、大人になると忘れがちじゃないですか。人の目が気になったり、仕事上どうしてもロリータ服を着れなかったりするけど、私は休日ぐらいは解放すればいいと思うんです。

みみ:仕事で疲れた体や心を癒すのは休日ですよね。ダラダラ過ごすのもいいし、お洋服を着る趣味があればそこで発散すればいい。私も「土日ぐらいは心を解放して生きてもいいんだよ」って思います。

イヤな目に遭っても“好き”を貫き通す! ロリータの反骨精神

──とはいえ、せっかく心を解放して楽しんでいるのに、とやかく言う人たちがいるのも事実です。コミックエッセイでも「ロリータvs社会」という章に、大きくページを割いています。

みみ:私たちのロリータ服は、普通の人からびっくりされるんですよね。「男ウケが悪い」とも言われがちです。

青木:外見のインパクトが強いお洋服ですからね。マンガにも描いてあったけど、「マカロンしか食べないの?」なんて言われることも。でも、マカロンばっかり食べていたら病気になるし、いろいろ食べるのが当たり前じゃないですか(笑)。そこをわかってほしいなと思うんです。そういうところも描かれていて、クスッと笑ってしまいました。

みみ:ロリータ服を着ない人って、私たちを何だと思っているんだろう(笑)。偏見がありますよね。

青木:私も「お茶会って何するんですか?」って聞かれるけど、ただ普通にお茶しておしゃべりするだけだもんね。話すことも、コイバナや仕事の愚痴。いたって普通なんです。

みみ:偏見の目は強いですよね。好意的に見てくれる人ももちろんいるけど、特に若い男の子は天敵。集団でいると、からかわれることが多くて。

青木:あとは酔っ払いにも絡まれますね。みみちゃんは、普段生活していてイヤな目に遭うことはありますか?

みみ:すごくあります。ロリータ服を着ていると、通行人に茶化されるじゃないですか。しかも面と向かって言われます。私たちって一般人だし、面と向かって好きなことを言っていい対象じゃない。それなのに「何こいつ、マジきもい」とか言われるのがつらいです。でも、ロリータ服を着るのはやめません。

青木:どうしてやめないの?

みみ:好きだから! 好きに理由はないので、「どこが好きなの?」と聞かれても「好きだから好き」としか言えないんですけど。好きだからやめない。イヤな目に遭っても、それを受け入れるわけではないけれど、でもやめない。それが私の信念なんです。

青木:マンガを描くのもそのため?

みみ:ロリータって罵声を浴びせられることもあるし、5歳児を相手にするような話し方をされることもあります。それが苦痛だったんです。私たちはお姫様でもお嬢様でもありません。焼肉だって食べるし、仕事で嫌な思いだってしてる。「ロリータも普通の人なんだよ、普通のことを考えて生きてるんだよ」と発信したいと思っていました。

青木:そこからだんだん過激になっていきましたよね(笑)。少ないコマ数でスパッと自分の意見を言うのって難しいじゃないですか。それが言えるようになったのは、自分の中で何か変化があったんですか?

みみ:ロリータはイヤなことをされ続けた分、反骨精神があると思うんです。私と同じような思いをした人が、「こんなふうに言い返していいんだ」「イヤな目に遭っても我慢しなくていいんだ」と思ってほしくて。だから、最後のコマに強いワードを入れているんです。

青木:毎日Twitterにアップするのは大変じゃない?

みみ:一度やめちゃうと、二度とやらないから。私、マンガを紙に書いて写真に撮って、それをTwitterに載せてるんです。紙と鉛筆さえあればどこでも描けるので。

青木:普通に生活していると、毎日そんなに事件は起きないじゃない? 毎日ネタを探すのもすごいなって思います。

みみ:これまで生きてきた中で、人から言われたイヤなことって覚えてません? 楽しいことより負の感情のほうが覚えていて。

青木:「デスノート」的なものに書き溜めてるの?

みみ:イヤなことを言われた時の負の感情って、いつまでも忘れません。それを自分の中からなくしたいから、マンガにしているんです。その分、読者のみなさんの心には負の感情が溜まっているかもしれませんけど(笑)。

ロリータ服を着ることが、究極のアンチエイジング

──外からの圧力も強いですが、ロリータ服を着るには体型維持、スキンケアなど努力も必要です。次は、美容をテーマに語り合っていただければ。

みみ:美沙子ちゃんは私が中学生の頃からモデルをしていますが、本当に変わらないですよね。

青木:そんなに美容に力を入れているわけじゃないんです。でも、ひとつ秘訣を挙げるとしたらロリータを着続けること。それが究極のアンチエイジングだと思っています。日本には「30歳になったらこういう服」とレッテルを張る人が多いですよね。それってどうなのかなと思っていて。私はアラフォーだけど、フリフリの服を着続けます。自分を若いと思ったことはないけれど、それが若さの秘訣かな。

みみ:私はアラサーですけど、職業も硬いし悩むことはあります。でも、「ロリータ服を着たいから努力しよう」という気持ちのほうが強くて。“雑巾”と呼んでいる普段着で生きている自分よりも、ロリータ服を着ている自分のほうが好き。だからダイエットもするし、化粧もするし、高級な化粧品も使って努力はしています。美沙子ちゃんは「ロリータ服を着ることがアンチエイジング」って言いましたが、私は「この服に似合う自分になる」という呪いを自分にかけています(笑)。それによって若さが保てるのかな、と思います。

青木:私はみみちゃんと知り合ってからまだ半年ぐらいだけど、こうやって本を出すことになって人の目に触れる機会も増えて、きれいになったと思うんです。やっぱり、見られることも大事なのかな。ロリータは罵声を浴びせられることもあるけど、普通の人より目立つし、人目にさらされるじゃないですか。そういう意味でも、ロリータはアンチエイジングなのかなと思います。

みみ:ロリータ服を着るからこそ若々しくいよう、心も若くいようという気持ちはありますね。自分のことをBBA(ババア)と言っちゃうこともありますが、それでも若くいようという気持ちは持ち続けたい。それが若く生きる秘訣なのかな。

人を利用する女、友達のふりをした敵…… 人間関係のお悩み、どう解決する?

──では、次のテーマは人間関係についてお願いします。

みみ:学校、職場で人間関係に悩んでいる方は多いですよね。人間って、他人のことをすごく気にするじゃないですか。どうしても人のことが気になっちゃう。人間関係の根本的な悩みは、そこにあると思うんです。

青木:生きている限り、それは防ぎようがないですよね。人間関係のトラブルって、必ずある。

みみ:私の場合は、マンガに描くことが解消法になっていますね。とっさに言い返せなくて悔しい時も、紙に描くようにしています。美沙子ちゃんはナースのお仕事もしているけど、人間関係は気にならない?

青木:ナースのお仕事を100%やっていた時は、女性ばかりの職場だったので困ったこともありました。夜勤の時に情緒不安定になる先輩がいたり、私が夜勤の時ばかり患者さんの容態が急変したりして。でも、ロリータで発散してたかな。

みみ:私、紙に描く前は母親に聞いてもらうことで発散していたんです。でも「イヤな話は聞きたくない」って言われちゃって。それで、紙に描くことを思いついたんです。

青木:みみちゃんは、親子関係もすごいよね。

みみ:「お母さんのこと嫌いなんですか?」って聞かれることもありますけど、別に嫌いじゃないんです。一緒に住んでいた頃は、お母さんに依存してたんですよね。でも、離れてみて「お母さんの言うこと=私の意思」ではないと気づいて。距離感って大事だなと思います。あとは、友達関係だと“利用する女”もきついですね。「あの子がこう言ってたよ」と他人を利用して、自分の押し通そうとする人っていませんか?

──マンガでは“フレネミー”という存在についても語っていますよね。

みみ:友達のふりをした敵、“フレンドエネミー”の略ですね。私、そういう人に目をつけられやすいんです。私は誰でも信じるし、友達だと思ったら何でもします。お金もかけるし、悪いホストに貢ぐ女みたいになっちゃう(笑)。だから、中には図に乗ってくる人もいるんですよね。

青木:みみちゃんと初めて会った時、緊張していたせいか、これまでのことをすべて自己紹介してくれたよね(笑)。私は聞いてないんですよ? でも、生い立ちや家族構成、卒業した大学まで、初対面なのに全部話してくれて。

みみ:そう、全部言っちゃうんです。知ってもらうことが、好きになってもらう第一歩という勘違いがあるのかもしれません(笑)。そういう情報も、利用されちゃうんですよね。私は「0か100か」なんです。話すなら全部話したくて。

青木:面白く話してくれるから、マンガ家としては素質があるんじゃない? 生い立ちをマンガにしたら面白いかも。

みみ:そんなことしたら、また叩かれちゃいます(笑)

 嫌いなもののことを限られたスペースで話すのは、全然問題ないと思うんです。でも、その感情をこっちに向けられると、「この人大丈夫かな。人間としてどうやって生きてきたんだろう」って心配になりますよね。

「私は私、あなたはあなた」──不条理から逃れるメンタルの鍛え方

──マンガでは、そういった世の中の不条理と抗う姿勢についても描いています。特に、描き下ろしはそういう話が多いですよね。

みみ:人は、どうしても人のことが気になります。それは逃れられないことだと思うんです。でも、それをひとりひとりが意識して「私は私だし、あなたはあなた」と思っておくことが大事。誰がどんな格好したっていいじゃないですか。それに対して、外野がとやかく言う筋合いはないですよね。あなたがロリータ服を着たくないなら着なければいいし、私は着たいから着る。アンチについても同じです。あなたが私を嫌うのはかまいません。それでも私は発信し続けます。「あなたと私は別の人間」と認識することが、不条理や理不尽から逃れられるいちばんいい方法だと思います。

 他人の気持ちを自分のものにすることって絶対にできません。そこは切り離して生きるしかないんです。学校でいじめられた時も「私は私、あなたはあなた」と気持ちをしっかり持てば、少しずつ沈静化していくのかなと思います。よく「個人を尊重しましょう」って言ってくる人がいますけど、それは自分に言い聞かせるべきですよね。個人を尊重する、自分を尊重する、あなたも尊重する。そのスタンスでいれば、生きるのがラクになるはず。

青木:日本は集団社会なので、私たちは「みんなと同じが正しい」という文化で育ってきましたよね。「私は私、あなたはあなた」という考えに到達するには、精神力が必要だなって思います。

みみ:私たちのようにロリータ服が好きな人は、そういう精神力が十分ついていると思います。何も言われずに生きてきた人が理不尽な目に遭った時は、私のマンガの中に出てくるようなセリフを心の中で言ってやればいい。皆さんも、心を強く持ってほしいですね。

質疑応答で、うさぎ誕生秘話が明らかに!?

最後に、会場に集まったファンからの質問コーナー。二人が鋭く答えてくれました!

Q1 絵を描く練習はいつからしていましたか?

みみ:絵は幼稚園の頃から描いていました。「セーラームーン」が大好きで、中でもプリンセス・セレニティのドレスを何百回も描いてました。

青木:うさぎのキャラクターが生まれたきっかけは?

みみ:高校時代の文化祭が、うさぎをテーマにしたタイトルだったんです。私にポスターの依頼が来て、そこで描いたのがあのうさぎでした。でも、担任の先生に見せたら「気持ち悪い」って言われ、すっごくムカついて。「このうさぎで絶対成功してやる!」って生きてきて、今に至ります。うさぎのフォルムも最初は丸かったのですが、長年の不条理でだんだん潰れていきました。

青木:いろんな呪いをうさぎが背負っているんですね(笑)。

Q2 娘がロリータモデルを目指しています。でも、モデル仲間のお母さんから「娘が活躍するようになったら、周囲の妬み、ひがみが酷くなった。悪口を広められたり、LINEやInstagramをブロックされたりしている」と聞きました。こうした場合、お二人はどのように対処してきましたか?

みみ:妬み、ひがみは確かにあります。仕事のうえで妬まれることもあったし、ロリータ服を着ているだけで「お金あるんでしょ?」みたいに妬まれます。ネットにも書かれますが、「かわいそうな人たち」という気持ちしか起きないですね。「人は人、自分は自分」なので。メンタルを強くしてください。

 

 人間は、他人のことを気にせずにいられない生き物。でも、人の目を気にしているばかりでは、周りに振り回されてしまう。「私は私、あなたはあなた」と割り切り、自分の人生を楽しんだほうがいい──。そんな二人のメッセージが伝わってきた、今回の公開対談。7月26日発売、『戦うみみちゃんと不条理な世界』を読めば、世間の不条理と戦う心構えが身に付き、さらに勇気づけられるはず。ロリータ女子はもちろん、生きづらさを抱えるすべての人は、このコミックエッセイでみみちゃんの思いを受け取ってほしい。そして、理不尽にブチ当たった時は心の中で叫ぼう。「外野はすっこんでな!」