緻密な「取材」と「観察」により描き出す、ライフルをめぐる青春――『ライフル・イズ・ビューティフル』サルミアッキ(原作)インタビュー

マンガ・アニメ

2019/12/1

『ライフル・イズ・ビューティフル』 毎週日曜23:00~ TOKYO MXほかにて放送中
(C)サルミアッキ/集英社・千鳥高校射撃部

『ライフル・イズ・ビューティフル』著:サルミアッキ 集英社「となりのヤングジャンプ」 「ヤンジャン!」「少年ジャンプ+」にて連載中 (C)サルミアッキ/集英社

最新5巻発売中
著者:サルミアッキ/発売元:集英社/価格:600円(税抜)
連載:https://tonarinoyj.jp/episode/13932016480028985966

 女子高生が「射撃競技」に挑む、『ライフル・イズ・ビューティフル』。その原作漫画を『となりのヤングジャンプ』『ヤンジャン!』『少年ジャンプ+』で連載している著者・サルミアッキ。はたして「射撃競技」を4コマ漫画に落とし込むときにどんな試行錯誤が行われていたのか。アニメ化を迎えた感想も含めて話を伺った。

何も知らなかった「射撃競技」に取り組んでみて

――アニメ化おめでとうございます。アニメ化が決まり、こうしてアニメがオンエアされている現在のお気持ちや印象をお聞かせください。

サルミアッキ:感無量というか。目標のひとつとして「アニメ化」があったので、それが実現したことが嬉しかったです。やはり「アニメ化」ということは、たいていの漫画家さんが夢に抱いていることのひとつでもあると思いますし、自分もそうでした。なので、現状は……なるべく平常心を心がけています。あまり舞い上がらないように。

――「射撃競技」を扱う作品を描こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

サルミアッキ:「射撃競技」は、編集担当さんから振ってもらった題材だったんです。担当さんと、いわゆる萌え4コマのような漫画にして、「アニメ化を視野に入れていきましょう」という話をしていました。最初に担当さんから「射撃競技」のDVDが送られてきまして。その時点では「射撃競技」の存在すら知らなかったんです。これまで漫画で銃を描いたことはあったんですけど、詳しく描き込んだこともなくて。ただ、武器と女の子という組み合わせは見た目としてインパクトがあるな、と思っていました。

――『ライフル・イズ・ビューティフル』は「射撃競技」をかなり真摯に描いている作品だと感じられるのですが、どのように調べていったのでしょうか。

サルミアッキ:最初はまったく競技のことを知らなかったので、手掛かりが何もない状態から調べ始めました。それで、DVDをいただいてから1ヵ月くらい後にビームライフルの講習会へ行きました。体育館で毎週日曜日にやっていまして、それにしばらく通っていたんです。その講習会には、小学生の男の子、女の子からお爺ちゃんくらいの年齢の方もいらしていて、年齢層が幅広い競技なんだなと感じました。小さい子が銃を持つと、すごくかわいらしいんです。銃が大きいので、小さい身体が際立つというか。

――講習会を体験してみた感想はいかがでしたか。

サルミアッキ:自分の普段の生活と全然違うせいか、ものすごく疲れる競技なんだな、と。でも、実際に体験すると、「撃つのって楽しいじゃん!」みたいな気持ちになるんです。きっと、射撃を体験した方はみんなそういうお気持ちを抱かれると思うんですけど。

――撃つのは楽しかったんですね。

サルミアッキ:全然上手くはできないんですけど。まったく楽しくなかったら、そこから通うことはなかったでしょうし、教えてくれる先生がすごく優しかったんです。かわいい女性の先生だったのですが、それがモチベーションのひとつになりました。

――講習会は『ライフル・イズ・ビューティフル』の執筆に役に立っているわけですね。

サルミアッキ:たとえば「ビームライフルのあるあるネタ」はいろいろな話を聞く中で集めていって、漫画の中に入れていきました。

――たとえば「ビームライフルの模擬銃声(発砲音)を変えたい」みたいなネタもありますが、そういうネタも取材の中で入手していったのでしょうか。

サルミアッキ:模擬銃声を変えたいって誰かが言っていたんですよね。自分は、あまり気にならなかったんですけど。連載序盤のころは、とにかくいろいろな人たちから聞いたことが、『ライフル・イズ・ビューティフル』のメインだったような気がします。

――高校の射撃部を取材したことはありますか?

サルミアッキ:行きました。今でも行くことがありますね。取材をしたのは大会で強い射撃部であったり、全国1位の射撃部にもお邪魔しました。射撃部の生徒のみなさんは、スポーツマンという感じはあまりしないし、かといって文化系という感じでもない、淡々としている感じがあるんですよ。もちろん練習のときは体幹トレーニングを積んで、走り込んだりもしているみたいなんですが、成長期が終わると身体のバランスを崩さないように、あまり筋力系の練習はしないようです。

――射撃部全体の雰囲気はどんな感じなんですか?

サルミアッキ:やはり「射撃競技」は突き詰めると個人競技という感じが強いので、あまりチーム感は強くないんです。大会だとひとりで参加している生徒もいますし、「応援しても意味ないじゃん」みたいなことを感じている生徒さんもいるみたいです。とはいえ、みんな部活動なので、朗らかな感じはありましたね。射撃の練習中に、後ろでお菓子を食べている生徒もいました。

――射撃部の顧問の先生はいかがでしたか?

サルミアッキ:学校によって取り組み方が違うと思うんですが、やはり強い射撃部の先生は真面目に指導されていて、ピリッとしていました。

ロケハンをして、登場人物のモデルを見つける

――「射撃競技」の試合や大会にも足を運ばれているんでしょうか。

サルミアッキ:サッカーのようにみんなで盛り上がるような試合ではないのですが、知っている選手(生徒)が出ている大会だと、すごく面白いんです。講習会に通っていたころ、講習を受けている横で、コーチの指導の下に練習している小学生がいたんです。彼が選手として出場している大会を見た時は楽しかったですね。そのとき彼は中学生だったんですが、大会では高校生と競い合っていて。「がんばれ!」と応援していました。

――そういう取材のときは、サルミアッキ先生はどんなスタイルで取材をされているんですか。

サルミアッキ:生徒のみなさんに質問したり、あとは写真を撮ったりですね。取材は男女共学の学校に行くことが多いのですが、質問する相手はたいてい女子です。

――登場人物のモデルになりそうな生徒さんに会いましたか?

サルミアッキ:そうですね。たいていのキャラクターはモデルがいるんじゃないかなと思います。たとえば、マスクを付けている生徒の方がいて。それはそのまま、榎本こまちというキャラとして作品に出していますね。

――漫画では「試合後に精神的にひどく疲れるせいか、マイナス思考になる」と書かれていますが、こういったネタも試合中に集めているんですか。

サルミアッキ:取材をしたときに教えてもらったネタのひとつです。全国大会の予選が終わった後、泣き崩れている男子選手がいて。それだけ試合中の緊張感は高いんだなと。試合が終わったあとは、どうしても後悔が頭をよぎるらしいです。「あのとき、こうしておけば良かった」と。走馬灯のように過去の思い出がめぐる、と生徒が言っていました。誰かと競い合っているわけではなくて、「自分に負けた感」が強いんでしょうね。

武器と女の子の組み合わせを描く面白さ

――『ライフル・イズ・ビューティフル』を描くにあたり、千鳥高校射撃部をどんなクラブにしようとお考えでしたか。

サルミアッキ:実は4コマ漫画を描くのは今回が初めてだったので、萌え4コマの作品をいろいろと読みまして、勉強させていただきました。そのうえで、いわゆる定番の組み合わせを意識して。ボケ2人、ツッコミ2人のぐらいのバランスが良いかなと。

――千鳥高校射撃部のメンバーを描いていて、一番筆が乗るのは誰ですか?

サルミアッキ:一番筆が乗るのは、五十嵐(雪緒)ですね。キャラクター的に射撃に向いている部分があるんです。最初、五十嵐は上手い選手(インターハイ県予選1位、全国大会個人戦に出場)にしようとは思っていなかったんですけど、「射撃競技」を調べていくうちに、寡黙で淡々とした性格が射撃向きだな、と感じたんです。逆に、(姪浜)エリカは最初から射撃の才能に長けているキャラクターにしようと思っていたんですけど、口うるさい性格は射撃に向いていないんだなと。やはり射撃は的に向かって集中しなくてはいけない競技なので、そういうところに個性が出て面白いなと感じていました。

――千鳥高校射撃部の4人は、幼いころから射撃経験を持っていますね。そういう生徒がやはり多いものなんでしょうか。

サルミアッキ:4人とも射撃経験を持っているバックグラウンドにしたのは、単純に射撃部に入部するストーリーの流れをスムーズにしたいと思っていたからで、実際の高校の部活動ではほとんど経験者はいないようです。中学校や小学校ですでに射撃経験がある生徒は、数える程度しかいない。

――主人公の小倉ひかりを描いていて楽しいところは、どんなところですか?

サルミアッキ:前向きなので、描いていて基本的に全部楽しいですね。自分自身が前向きな性格ではないので、ひかりには憧れみたいな気持ちを感じています。

――渋沢泉水、姪浜エリカ、五十嵐雪緒を描いていて、意識しているところはどんなところでしょうか。

サルミアッキ:(渋沢)泉水については「かわいさ」を感じてほしいなと思って描いています。エリカは、強いですし上手いですし、美人感がある。そこが伝われば良いなと思いつつ、なかなか表現できず苦戦しています。五十嵐に関してはシュールなギャグというか、お茶目な一面。ツッコミばかりさせて申し訳ないと思っていますけど。

――「武器と女の子の組み合わせの良さ」という話も先ほどありましたが、ご自身で描いていてこだわっているところはありますか?

サルミアッキ:「武器と女の子」は描いていてすごく楽しいんですけど、なぜでしょうね。自分であまり意識したことはなかったです。描いていてこだわっているところは……そうですね。ひかりの胸は大きいほうが良いな、と思っています。主人公の胸が大きいというパターンは、あまりないと思うんですが、そういうところは個人的な好みも含めて、描いていて楽しいところですね。

――胸が大きいと射撃の邪魔になったりしないんでしょうか。

サルミアッキ:どうでしょうね。胸は大きい射撃競技選手の女性に実際どうなのか聞いたことはないんです。男性の方から、銃が胸に当たるといけないので、撃ち辛いだろうという話は聞いたことがあるんですけど。

――アニメスタッフから問い合わせや質問など、アニメ制作の過程でどんなやり取りがあったんでしょうか。

サルミアッキ:アニメのことは、スタッフのみなさんにお任せするというスタンスなので、質問されたことは答えていますが、基本的にはお任せしています。質問は、ルールのことや、装備のことをすごくたくさん質問されました。自分としては、原作からストーリーを変えてもかまわない、と思っていたんです。そうすると、自分がアニメを観るときに楽しみがあって良いかなと思っていたので。でも、結果的にスタッフのみなさんが、アニメ版を原作に沿う内容にしてくださいました。

――アニメ化されたことで膨らんだな、と感じる部分はどこですか?

サルミアッキ:やはりキャラクターの動きですよね。走り方や日常の芝居にそれぞれキャラクターごとの個性が出ていて。「ああ、このキャラクターはこういう動きをするのか」と思うことがたくさんあります。キャラクターをより理解できるような気持ちになります。セリフも声優さんの声で聞けますから、キャラクターがよりかわいくなるなと感じています。特にMachicoさん(小倉ひかり役)の声はすごく印象に残っています。

――アフレコの見学をした感想をお聞かせください。

サルミアッキ:Machicoさんの顔がすごく小顔でびっくりしました(笑)。最初にお会いしたのがライフリング4(Machico、熊田茜音、南早紀、八巻アンナのメインキャスト4人によるユニット)のレコーディングの時なんです。小倉ひかりの声はこんな声なんだ、とびっくりしました。

アニメ化を経て、原作はいよいよ次のステップへ

――アニメ化したことで、ご自身の執筆に影響を与えたところはありますか?

サルミアッキ:アニメが漫画の執筆にすごく影響してしまうので、なるべく意識しないようにしています。アニメ版に影響されてしまうと、自分のペースが崩れてしまいそうになるんです。だから、射撃のように、平常心で執筆するようにしています。

――射撃の心で執筆されているわけですね。最近は射撃の腕前は上達されたんでしょうか。

サルミアッキ:最近はなかなか射撃に行けないんです。だから、下手になってるでしょうね。講習会や見学に行っていたころも、多少は上手になったかもしれませんが、ちゃんと記録を比較していないので、どこまで上手くなったのかはわかりません。

――原作漫画ではビームライフルから、エア・ライフルへ転向する展開になっていますが、この展開を描くうえで意識していることはどんなことですか?

サルミアッキ:もともと最初はエア・ライフルの漫画として『ライフル・イズ・ビューティフル』を始めようと考えていたんです。ビームライフルの存在を知って、そちらから始めたという経緯があって。ここまで続くとは思っていなかったんですが、ようやく描こうとしていた競技の世界に踏み込むことができたなと思っています。ただ、あまりエア・ライフルの競技面ばかりを本格的に描きすぎると、この作品らしくなくなってしまうので、そのバランスは心がけています。

――今後『ライフル・イズ・ビューティフル』で描いていきたいと思っていることがあればお聞かせください。

サルミアッキ:ゆくゆくは4人が五輪に挑戦する姿を描くというのが、最終地点に考えているんです。そこまで頑張っていけたら良いなと思っています。

取材・文=志田英邦

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