声優・梶裕貴が、西尾維新ワールドの魅力を語る!「言葉のリズムが自分の体と心の中に響きわたる感じ」

小説・エッセイ

公開日:2020/12/5

詠唱劇『新本格魔法少女りすか』
イラスト:西村キヌ

 2020年10月、『新本格魔法少女りすか』の完結を2カ月後に控え、たちあがった詠唱劇。声優を変えて、本作の第1巻をリレー形式で詠み上げていく生配信企画だ。トップバッターの声優は、OVA『クビキリサイクル』で主人公を演じた梶裕貴とヒロインを演じた悠木碧。二人に出演時の印象と西尾維新作品ならではの魅力を訊いた。

 

朗読を前提として書かれたと思えるほど、詠み上げると立体感を増していく

 アニメ『クビキリサイクル』で、“ぼく(いーちゃん)”を演じることになったとき、「あの個性的な西尾先生の言葉の海の中に、自分も潜れることが嬉しかった」と梶さんは言う。

「アニメ『化物語』を初めて観たとき、美しい映像、そして音楽と折り重なって響く声のお芝居が“聴こえる”というより、“情報として脳に直接入り込んでくる”ような感覚がありました。でも不思議なもので、いざ読み手としてその言葉に触れてみると、今度は、そのリズムが自分の体と心の中に響きわたる感じがしたんです。そんな作品、他にはなかなかありません。独特なのは文章だけでなく、『化物語』の冒頭、主人公の阿良々木暦が、口の中にホッチキスを突っ込まれて脅されるあたりの描写はかなり衝撃的なはずなのに、それを特別暴力的なものとしては描かず、その後も何事もなかったように物語は進み、怪異とミステリー、バトルと日常系ほっこりなど、さまざまな要素が絡みあう唯一無二のエンターテインメントとして展開していく。それは『新本格魔法少女りすか』も同じで、「新本格」と「魔法少女」という、定番ジャンルでありながら、きわめて似つかわしくない2つの言葉が結びつき、さらにそこに“りすか”というパワーワードがくっついている。魔法少女りすかがカッターナイフで切るのは手首とは限らないけれど、ネガティブなイメージをもたれがちな自傷行為を、強力な魔法を引き出すアクションとして軽やかに描き出した。この斬新さこそがすばらしいですよね」

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 梶さんが詠唱劇で演じたのは、そんなりすかを手の内で転がそうとする少年・創貴だ。

「モノローグとセリフを瞬時に切り替えながら、一言一句間違えないように詠むという点は、いーちゃんのときと近い試練でしたが、驚くべきは“創貴は小学生である”という事実です。説明がなければ、とてもそうとは思えないほど、シニカルでニヒルで知識量も無尽蔵の賢い少年。思い返してみれば、どちらかというと、僕も他人からどう見られているかを汲みとろうとする子供でしたが、それは単純に周囲の期待に応えたかったからで、そこに明確な僕の意志があったわけではありません。でも、創貴が大人の望む子供、同級生に求められる少年として振る舞うのは、そのほうが自分にとって都合がいいから。半端な賢さは孤絶につながるけれど、創貴は周囲を掌握しきっている。そんな彼を、声帯は子供とはいえ、どんな声で演じればいいのだろう……と悩みました。生き生きとした躍動感はきっとりすかが担ってくれるだろうから、彼女を目立たせるトーンでありたいけれど、物語に触れていると、彼にも感情的な一面が確実に存在するとわかってくるから、ただ無機質なだけにはしたくない。とくに、りすかに対してムキになったり意地を張ったりする瞬間が、彼なりにある。そういう人間らしさが感じられる部分はちゃんと見せたかった」

 さらに難しかったのが、台本の9割は創貴のパートといっても過言ではない、文章量の膨大さ。

「舞台上で水を飲む間もないほどでしたが、西尾先生の文章って声に出すととても気持ちがいいんです。このフレーズが、セリフが、というのではなくて、最初から朗読を前提にして書かれたのではないかと思えるほど、すべての文章が詠み上げることで立体感を増していく。もしかしたら西尾先生の頭の中には、最初から言葉が音として鳴り響いているのかもしれません。同じ言葉を反復させながら連なっていくところには韻が生まれ、傍点や『』で強調された言葉を、それぞれ異なる形で耳に残る音に変えていく作業もおもしろい。映像も音楽もない空間で、さらに純度の高い言葉の海に潜っていくその時間を、もっとずっと味わっていたかったなと感じています。また機会があれば、ぜひ挑戦させていただきたいです」

かじ・ゆうき●1985年、東京都生まれ。『進撃の巨人』『七つの大罪』『あひるの空』などで主演声優を務め、近年は俳優としても活躍。声優アワード2年連続(2013年・14年)主演男優賞受賞。17年開催の『西尾維新大辞展』では音声ガイドや朗読コーナーも担当。

取材・文:立花もも

詠唱劇『新本格魔法少女りすか』

『新本格魔法少女りすか』のシリーズ完結を記念して、第1巻を異なる声優ペアでリレー朗読する企画。アニメーションも音楽もなく、ただ声だけで西尾維新の原作文章を味わう。第一話は、悠木碧&梶裕貴をトップバッターに、釘宮理恵&鳥海浩輔、高橋李依&松岡禎丞の3組が演じた。第二話は、三森すずこ&福山潤、水瀬いのり&小野賢章(12月15日配信スタート)。http://officeendless.com/sp/risuka/(アーカイブ配信:2021年2月28日まで)

詠唱劇『新本格魔法少女りすか』

詠唱劇『新本格魔法少女りすか』

この記事で紹介した書籍ほか

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

著:
イラスト:
出版社:
講談社
発売日:
ISBN:
9784062754309