「これは大きな物語の序章だと思います」『小説 BATTLE OF TOKYO vol.1』FANTASTICS 世界インタビュー

文芸・カルチャー

公開日:2021/3/12

 2月25日に刊行された『小説 BATTLE OF TOKYO vol.1』(角川文庫)が話題を呼んでいる。「BATTLE OF TOKYO」とは、Jr.EXILE世代の4チーム――GENERATIONS、THE RAMPAGE、FANTASTICS、BALLISTIK BOYZ――から総勢38名が集結し、遥か未来の架空都市「超東京」を舞台にコラボバトルを繰り広げる次世代エンタテインメント・プロジェクト。本プロジェクトでは、Jr.EXILEのメンバー自らが、その分身となるキャラクターの名前や設定を考えているという。

 物語の中では、イリュージョン集団「Astro9」のメンバー・テクウとしてその分身が活躍する世界さん(FANTASTICS from EXILE TRIBE)は、ダンサーとして圧倒的存在感を放つ一方、マンガやアニメをこよなく愛する生粋のオタク。小説版を読んで初めてストーリーの全貌を知った世界さんに、その感想を伺った。

「BATTLE OF TOKYO」(以下BOT)のプロジェクト自体は2019年から始まっていましたが、小説を読んでようやく「BOTの世界が本当に創られたな」と感じました。自分の考えた「テクウ」というキャラクターが、現実とは別の世界にいる。現実の僕らFANTASTICSが、Astro9という別のグループになってBOTの世界で生きている……。「壮大な物語が始まった!」と感動しましたね。

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 ただ、プロローグを読んで驚いたのは、「最初に出てくる女の子、誰!?」と(笑)。MAD JESTERSが出てくる第1章(Chapter1指環篇)で、女の子は「マキナ」という名前の高校生だってわかるんですが、存在自体が完全に初耳情報でした。マキナはもともと、5年前の「嵐」で荒廃した東京が「超東京」と呼ばれるぐらいに復興したのは、3Dプリンター技術を進化させた「コピー」という技術であることは知っていた。でも、超東京には実は異能力者がいたり、コピーできないオリジナルなモノを「ファイナル・ファクト」と呼ぶ……というようなことは何も知らなんですよね。

マキナは大切にしていた指環が盗まれたことをきっかけにMAD JESTERSと出会って、初めてこの世界の裏側のことを知る。その立ち位置って、読者の方と同じだと思うんです。読者の方は、マキナに感情移入しながら読むといいんじゃないんでしょうか。

 一応「中の人」である僕たちにとっても、BOTの小説には知らない情報がたくさん書かれていました。例えば、5年前に東京をぶっ壊した「嵐」が「IUS(アイアス)」と呼ばれていること。「I」と「US」を繋げた単語って、めちゃめちゃ意味深ですよね。しかも「IUS」は、「風速100m」を超えていたらしい。よく台風のニュースで聞く最大風速って、大型の台風でも60とか70くらい。「風速100m」という言葉を見た時に、本当に過酷な環境を生き抜いたんだなと伝わってきました。

 ……すみません、オタクは造語とか細かい数字に反応しちゃうんです(笑)。「ファイナル・ファクト」とか「統合世紀」とか、Astro9の章(Chapter4幻影篇)のバトルシーンで出てくる「1トンの塊となったイタルの蹴り」とか、一文単位で興奮していましたね。これはディスってるわけでもなんでもないんですが、キック力が「1トン」って、中二病がすごい(笑)。子どもの頃にみんなが妄想していたようなことも、プロの方が本気で考えて真剣に書いていくと、めちゃくちゃ面白いんだなと思いました。

 4つチームが出てくる中で、Astro9は一番、自分たちが暮らす街に根付いているなと思います。表向きは、超東京の東側に作られた「アストロパーク」という自治街のサーカス集団。実は、普段アリーナの中で披露しているイリュージョンは、「コンバージョン(変換)」という異能を使ってやっていた。裏ではその能力を使って、アストロパークの自警団というか、揉め事を解決するトラブルシューターをやっている。

メンバーはそれぞれ異能を使って、ファンタジーっぽい戦い方をするんですが、僕が考えたテクウは炎を使います。炎を使うキャラクターって、僕が大好きな漫画やアニメにめちゃくちゃたくさんいます。かぶらないようにするのが超大変なんですけど(笑)、今までにない「炎キャラ」にしたいと思っています。「炎キャラ」の歴史に一石を投じたいですね。

今一番興味があるのは、アストロパークという街には、他に何があるのか。今はAstro9のアリーナしか出ていませんが、もしかしたら別の場所でいろんなショーが行われているかもしれない。アストロパークから意外な新キャラが出てきそうな気がするんです。

 各章の章扉に掲載されているのは、今度リリースされるBOTの新曲の歌詞の一部です。小説の中に入ってくる挿絵は、新曲のミュージックビデオの静止画像なんですよ。僕がここで断言しちゃっていいのかわからないんですけど、そうなんです(笑)。今回の本は、小説なんですけれども、漫画でもあり、アニメでもあるし、音楽でもある。BOTというプロジェクトから出てきたものだからこそ表現できた、新しい小説の形なんじゃないかなと感じました。

vol.1は、これから続いていく大きな物語の「序章」だと思います。もしかしたらvol.1の謎がすべて解き明かされるのは、10年後くらいになるかもしれない。いちファンとして、ずっと読み続けたいです。BOTの設定資料集が出たら、絶対買います!

取材・文:吉田大助
写真:種子貴之