【夏こそ読みたいゾッとする不思議な漫画3選】夜に行く手を阻むワニ、2階のトイレからしか見えない男、毎晩電話する相手…

マンガ

公開日:2023/9/6

 まだまだ暑さが続く今年の夏。休日くらい涼しい場所で漫画を読みたいですよね。暑さを忘れさせてくれるような漫画なら尚良し! ということで、本記事でご紹介するのはちょっとだけ「ゾッ」とする漫画です。怖さは軽め、絵柄も可愛らしい作品を選んだので、ホラーが苦手な方も安心……のはずです。

●『魔法はつづく』(オガツカヅオ/リイド社)

魔法はつづく
魔法はつづく』(オガツカヅオ/リイド社)

 10話の不思議な話で構成された短編集です。なかでもゾッとするのが、「よふさぎさま」という一編。

 主人公の知子は、夜のランニングが趣味。ある晩、走る知子の前にワニが立ちふさがります。近所のヤクザ事務所から逃げ出したワニでしたが、親友の亜矢子いわく、それは「よふさぎさま」とのこと。「よふさぎさま」とは夜走る女の行方を拒むもの。女の運命が大きく変わろうとする予兆をいろいろな姿で教えてくれると言います。その後も知子は人生の節目節目で「よふさぎさま」に遭遇。受験や病気など、大きな転機の前には必ず「よふさぎさま」が現れて教えてくれます。それから数年後、結婚した知子の前に、久々に亜矢子が現れるのですが……。

 20ページくらいの短い作品です。最後の最後まで結末が読めず、最後の1ページを読んだときには鳥肌が立ちました。「いい話だったな~」からの急転直下がすごい。読み終わったあともう一度表紙の絵を見直してみると、思わずゾッとしてしまうはず。

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●『あもくん』(諸星大二郎/KADOKAWA)

あもくん
あもくん』(諸星大二郎/KADOKAWA)

 霊感があるホラー小説家のお父さんと、息子の守くん(あもくん)の身の回りで起こる怪異な現象を描いた短編集です。少し昭和を感じるノスタルジックな絵柄に、淡々としたお父さんの語りで物語は進みます。家の中から見える男、散歩していると付いて来る不思議な何か……家でひとりで読んでいると、ちょっと後ろが気になってくる。そんな作品集です。

「覗く人」
 お父さんが家の2階のトイレで用を足していると、窓の外に男が見えます。どうやら男は向かいの家の塀の中を覗き込んでいる様子。黒いコートに黒い帽子で背を向けているので表情は見えません。1階に下りて確認すると男は消えていました。ところが数時間後、また2階のトイレを使っていると、窓の外に男の姿が。お父さんは気が付きます。男はこのトイレの窓からじゃないと見えないということに。気味が悪くなったお父さんは、2階のトイレを使うことを止めます。何日か経ったある日、同じ窓から再び覗いてみると、男の姿はもう見えませんでした。しかし……。

 お父さんには何が見えたのでしょうか? 巻末には、「ベッドサイドストーリー」も掲載されています。こちらは作者の諸星大二郎先生が、お子さんの寝かしつけ用に話していた怖い話だそうです。怖い話をしたら余計寝られなくなるのでは?……と思いましたが、どうなのでしょうか。

●『夢子ちゃん』(青野春秋/幻冬舎)

夢子ちゃん
夢子ちゃん』(青野春秋/幻冬舎)

 主人公は松田夢子、28歳。夢子ちゃんは14年間引きこもりの生活を送っています。外出は月に2回、お母さんの車で病院に行くときだけ。必要がないので携帯電話も持っていません。そんな夢子ちゃんが、両親に内緒でひとりで旅に出ます。目的は小学校のときの友達「キーちゃん」に会うため。タイムリミットは手持ちの薬がなくなるまでの1ヶ月です。

 道中いろんな人に出会い、刺激を受ける夢子ちゃん。ときには薬を飲まなくて平気な日も。旅は着実に夢子ちゃんの何かを変えているようです。しかし、夢子ちゃんの「毎晩公衆電話で必ず誰かと話す」という不思議なルーティーンだけは、変わることはありません。やがて夢子ちゃんは知り合った人から、キーちゃんの居場所を教えてもらうのですが……。

 夢子ちゃんはどうして引きこもりなのか? どうしてキーちゃんに会いたいのか? そのほとんどは語られることはありません。そのため物語の結末も、読者によって受け取り方はそれぞれ。夢子ちゃんの旅の最後に待ち受けているものに、あなたはゾッとするかもしれないし、もしかしたら悲しくなるかもしれません。

 ちょっとだけゾッとする漫画で、残暑を吹き飛ばしてみませんか?

文=中村未来

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