キーワードは「SF×青春」⁉ 大豊作の秋アニメ映画で押さえておきたい3作品!

マンガ・アニメ

2019/10/1

 2016年の『君の名は。』の公開をきっかけに、アニメ映画が大いに盛り上がっている。2017年公開の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』や、2018年公開の細田守監督の『未来のミライ』が大ヒットを記録するなど、毎年のように名作が生まれている状況だ。そして2019年も引き続き注目作が次々と発表・公開されている。

 各作品を見てみると、傾向として「SF」と「青春」の要素を組み合わせた作品が多いようだ。そこで、この9~11月に公開する「SF×青春」の要素を持つアニメ映画3作のみどころをまとめてみた。

【9月20日(金)公開】ミステリー要素も絡めた展開に注目!『HELLO WORLD』

『HELLO WORLD 1』(鈴木マナツ、曽野由大:著/集英社)

『HELLO WORLD』は、京都に住む男子高校生・堅書直実(かたがきなおみ)と、女子高生・一行瑠璃(いちぎょうるり)の2人の恋模様を中心に展開するラブストーリーだ。

 本作の注目のポイントは2つ。1つめが、「10年後の自分」を名乗るカタガキナオミという青年が現れる点だ。10年後の自分によると、恋人の瑠璃は交通事故が原因で帰らぬ人になってしまうという。主人公・堅書直実は未来の自分と力を合わせて、瑠璃に降りかかるその運命を変えるべく奔走することになる。ここで気になるのは、10年後から来た青年はあくまで「自称・カタガキナオミ」である点だ。公式サイトを見ても、なぜか青年の名前だけカタカナ表記で、もしかすると青年は主人公の未来の姿ではないのかもしれない。では、彼は何者なのか? 本当の目的は何か? 『HELLO WORLD』では、このようにタイムスリップ的なSF要素を、ミステリーの一部として機能させているものと推察される。『正解するカド』でSFとミステリーの見事なシンクロを実現させ、本作でも脚本を務める作家・野崎まどの本領が発揮されることだろう。

 2つめは世界観だ。予告映像で主人公は「現実だと思っていたこの世界は、全部ただのデータだった」と語っている。その発言を物語るように、予告映像には、まるで仮想現実のような世界観が提示されている。伊藤智彦監督は、仮想現実を舞台にした『ソードアート・オンライン』で監督を務めていることでも有名だ。そのため、『ソードアート・オンライン』で培った演出は、本作でも存分に活かされるだろう。

 いち早く試写会を見終えた観客からは、「ラストまで驚きの連続で、もう少しこの世界観に浸りたかった。リピート必至です」「SF要素と青春要素の塩梅が新鮮」など、ストーリー展開や世界観を称賛する声が多く、公開後の反響が大きく期待される状況だ。

【10月11日(金)公開】失ったはずの青春がよみがえる。「あの花」「ここさけ」の長井龍雪監督最新作『空の青さを知る人よ』

『小説 空の青さを知る人よ』(額賀澪/ KADOKAWA)

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『心が叫びたがってるんだ。』など「大人も泣けるアニメ」を手掛けてきた長井龍雪監督の最新作『空の青さを知る人よ』が、10月11日(金)より公開される。監督として4年ぶりとなる本作も、「あの花」「ここさけ」と同じく埼玉県秩父市が舞台。ベーシスト志望の高校2年生・相生(あいおい)あおいを中心に、少し不思議な出来事と登場人物たちの揺れる心を描く青春群像劇となっている。

 青春群像劇という点は、これまでの作品と共通するが、本作には明確に異なる点がある。まず注目すべきは、独特な設定だ。ヒロイン・あおいは、幼い頃に両親を事故で失い、姉・相生(あいおい)あかねと2人で暮らしている。事故当時すでに高校3年生だったあかねは、生活のために地元で働き始める。事故から13年が経ったある時、地元の音楽祭のバックミュージシャンとして、高校時代のあかねの恋人・金室慎之介(かなむろしんのすけ)が東京から帰省することになった。時同じくして、あおいの目の前に「しんの」という青年が現れる。しんのは、時空を超えて現れた13年前の金室慎之介だった。

「あの花」でも死んだヒロイン・めんまが現れるという設定はあったが、本作では、金室慎之介という現在も生きている人物が過去からやってくる。予告映像では、過去から現れた高校生のしんのと、現在の金室慎之介がつかみ合いの喧嘩をしている。時間軸の異なる同じ人間が同時に存在する現象が描かれているのだ。また、あおいが頑なに目をつぶる描写や、「それじゃ、しんのがいなくなっちゃう」というセリフから、しんのが出現するための条件があるらしい。どんな条件でしんのは現れるのか、そして、どうして現れたのか、この辺りがみどころになりそうだ。

 加えて本作は30代の葛藤を描いている点がこれまでの作品とは大きく異なる。「あの花」と「ここさけ」は10代をメインにしていたが、本作はあかねや金室といった30代にもスポットライトが当てられている。金室にとってはしんのが、あかねにとっては金室が、10代の頃の自分を思い出し、失った青春を思い出すきっかけになる。「あの頃思い描いていた理想の自分になれたのか?」という30代ならではの現実と理想の間で生まれる葛藤が描かれるかもしれない。10代以外に焦点を当てた「青春もの」として、アニメ映画界に新たな切り口を提示することになるだろう。

 過去作のファンからは、「映画館でみるつもりやけど、絶対泣くやつやん」「脚本岡田麿里さんとか泣くしかねぇだろ。監督も長井さんで………………あの花ここさけメンバーやばいって」と、泣ける作品を期待する声が続々と出ている。

【11月22日(金)公開】1日3分間は2人だけの秘密の時間。『フラグタイム』

『フラグタイム(1)』(さと/秋田書店)

『フラグタイム』の原作は2013~14年、『Champion タップ!』ほかで連載された女子高生同士の恋模様を描いた漫画である。いわゆる百合作品として高く評価されている同作を、このたびアニメ化する形で期間限定で劇場公開される。

 本作のSFとしての興味深い点は、1日3分間だけ時間を止められるという主人公・森谷美鈴(もりたにみすず)の能力だ。美鈴は人と関わりたくないと思った時、人付き合いをシャットアウトするために時間を止める能力を使っていた。しかしある日、時間停止の能力を使い、クラスいちの美少女・村上遥(むらかみはるか)のスカートの中をのぞき見たら、「何してんの?」と遥に声をかけられてしまう。遥には美鈴の能力が通じなかった。これを機に、美鈴と遥の奇妙な関係が始まる。遥に時間停止の力が効かない原因は、美鈴の他人に対する関心度合いと関係しているようだ。こうした設定や演出は、本作の監督である佐藤卓哉氏の得意とする部分。佐藤監督は『STEINS;GATE』や『RErideD-刻越えのデリダ-』など、過去改変もののハードSFで監督を務めてきた名手で、本作は恋愛重視の作品だが、止まっている時間表現にはSF的な演出が重要になってくるだろう。

 また、人間関係が苦手で誰とも友達になれない美鈴と、クラスの中心的な人物で誰からも好かれる遥、相反する2人が出会うことで生まれる心の揺れ動きが、スクリーンにどう映し出されるのかも注目だ。停止した時間の中で紡がれる2人だけの秘密の時間。その中で2人は普段周りに隠している自分の本当の姿を解放していく。監督は女子小学生の日常を描いた『苺ましまろ』でも監督を務めており、同作でセリフに頼らない演出で少女たちの心の機微の表現に成功している。そのため本作も思春期の女の子同士の微妙な感情の揺れを感じられる作品となるだろう。

 ネット上では「密かに百合がすきだった僕からすると見るしかない」「王道女子高生百合だ‥‥この作品をいまアニメ化することに意味がある」など、もともと百合漫画として傑作と名高い作品のアニメ化に対して、多くのファンから高い関心が向けられている。

 以上で紹介したアニメ映画にはいずれも、タイムスリップや時間停止という「時間」に関わるSF要素が組み込まれている。考えてみれば『君の名は。』も、細田守監督の『時をかける少女』や『未来のミライ』も時間を超越した話である。また、そういった作品の多くが学生を主人公にしている。誰でも学生時代を経験し、「もしもあの時……」と時間を巻き戻したいと考えることはあるはずだ。こうした共感要素を設けることで、アニメファンだけでは収まらない人気を集めているのだろう。特に大人は、過ぎた時間が持つ切なさや懐かしさ、甘酸っぱさを感じられることは間違いない。

文=木島祥尭