【社会編TOP10】“反社会的勢力”に注目が集まった年?「2019年人気記事ランキング」

社会

更新日:2019/12/30

 2019年のニュースといえば、お笑い芸人による闇営業問題が記憶に新しい。反社会的勢力の関与するパーティーに参加したお笑い芸人たちをめぐる問題は、未だ完全に解決したとは言い難い状況だ。ダ・ヴィンチニュースの「2019年人気記事ランキング(社会編)ベスト10」を見てみると、反社会的勢力・ヤクザについて扱った記事が複数ランクイン。世の中的にも今年は「反社会的勢力」の存在に注目が集まった一年といっても過言ではないのかもしれない。

 それでは、実際に、ダ・ヴィンチニュースの「2019年人気記事ランキングTOP10【社会編】」を見てみるとしよう。

【第1位】520名が犠牲になった33年前の日航機墜落に新証言。地元民たちが目撃した光景とは!?

『日航123便 墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る』(青山透子/河出書房新社)

 1985年夏に発生した「日航123便墜落事故」。航空機史上最大の事故として知られるこの事故だが、現在も真相究明を続けている人たちも多いことをご存じだろうか。『日航123便 墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る』(河出書房新社)の著者で、当時、日航の新人スチュワーデスだった青山透子氏もその一人だ。

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 この本では、これまで報道されて来なかった目撃情報や証言を紹介。取材を通して得た証言・証拠も提示しつつ、青山氏は「日航123便墜落事故」は「事故ではなく、事件ではないか」と訴えるに至っている。運輸省航空事故調査委員会による事故原因の公式発表によれば、この事故は修理ミスに起因するものだという。

 だが、青山氏は、これは事故ではなく、外部要因によって墜落させられた事件であり、それを隠すために組織的な隠ぺい工作が行われたというのだ。ぜひ、あなたも、この本で今まで公表されてこなかった事実を知ってほしい。この事件にはまだ隠された真実がありそうだということを、私たちは見過ごしてはならないのだ。

【第2位】極道歴30年ヤクザの若頭からうどん屋店主に。周囲の人々はどう受け入れている?

『ヤクザの幹部をやめて、うどん店はじめました。 極道歴30年中本サンのカタギ修行奮闘記』(廣末登/新潮社)

 現在はきさくなうどん屋の店主である中本サンは、かつては暴力団・工藤會の幹部にまでのし上がったという人物。彼による『ヤクザの幹部をやめて、うどん店はじめました。 極道歴30年中本サンのカタギ修行奮闘記』(廣末登/新潮社)には、その生きざまが描かれている。トイチでカネを貸す闇金に関わり、親分の世話役を任され、ついには、ヤクザの若頭に…。ヤクザの出世街道を駆け上がった中本サンだったが、小倉にある知り合いにうどん作りを教わったことを契機にうどん屋店主になった。毎日のように黙々と働いた開業当初に思いを巡し中本サンはこう振り返る。

「今になったら笑い話ですが、これには、懲役の作業経験が役に立ったんかも知れんです」。ヤクザと聞くとどうしても色眼鏡で見てしまうものかもしれないが、本書からにじんでくるのは「ひとりの人間」の生きざま。いま自分の目の前が暗く感じられている人たちにとって、きっと得るものがある1冊となるはずだ。

【第3位】ヤクザを撃つ以外に選択肢はなかった!? 山口組ナンバー2射殺事件の真相が明らかに

『満期出獄 ヒットマン・中保喜代春』(木村勝美/かや書房)

 1997年、暴力団山口組のナンバー2にあたる若頭の宅見勝が、同じ山口組の中野会組員によって白昼に射殺されるという事件が起きた。

『満期出獄 ヒットマン・中保喜代春』(木村勝美/かや書房)は、その宅見若頭射殺事件の実行犯のひとり、中保喜代春について記したノンフィクションだ。読んでいてつらいのが、中保が殺人の実行犯になることを避ける選択肢が、ほぼ存在しなかったということ。中保はある日突然、上の人間からの電話1本で、何の説明もないまま暗殺チームの一員に抜擢される。当然、暗殺を実行すれば、宅見側の人間からの報復により自分も殺される。だが、計画を知ってしまった以上逃げられない。初手から八方塞がりなのである。

 この本を読んでいると、できるだけあらゆる「組織」とかかわらずに「個人」として生きていきたいものだと感じてしまう…そんなことが実際可能かどうかは別問題なのだが。

【第4位】無自覚な“まじめ系毒親”の存在――「心配性」と「過干渉」が子どもの「毒」になる!

『気づけない毒親』(高橋リエ/毎日新聞出版)

「毒親」の代表的なイメージは「虐待」や「育児放棄」だろう。だが、そんなイメージを覆す「まじめ系毒親」の存在を明らかにするのが『気づけない毒親』(高橋リエ/毎日新聞出版)だ。

「まじめ系毒親」の特徴は「心配性」と「過干渉」。不安が強く、強迫観念から子どもをコントロールしがちで、子どもの気持ちを思いやれない。彼らは、子どもを社会で生き抜く強い大人にさせるために「競争に勝たせなければならない」「怠けさせてはならない」「道から外れさせてはいけない」といった強迫観念を持つ。子どもが何を言っても「正論」で返してしまったり、親自身の世間体を優先したり…。「まじめ系毒親」は自分が子どもを押さえつけてしまっていることに気づき、自分の心にある不安を優しく見つめることが必要だろう。親子のあいだにある見えない呪縛の正体を、本書を通じて多くの世代にぜひ知ってほしい。

【第5位】ヤクザの仕事は「究極のボランティア」? 元山口組関係者の対談で明かされるヤクザの内側

『山口組の「光と影」』(沖田臥竜、山之内幸夫/サイゾー)

 兵庫県に本部を置く日本最大規模の暴力団・“山口組”。その内幕に迫った書籍『山口組の「光と影」』(沖田臥竜、山之内幸夫/サイゾー)は、元・山口組二次団体最高幹部(沖田氏)と元山口組顧問弁護士(山之内氏)の対談をベースに、知られざる“ヤクザ”の世界へスポットライトを当てる1冊である。

 沖田氏は、自身の経験を振り返り、ヤクザは「職業ではなく生き方と言うけど、本当に精神論だと思います」「究極のボランティア精神に行き着くと思う」と述べる。そして、かつては「親分の求心力。もっと言えば受けた義理や恩」があったからこそ、ヤクザを続けられていたと語る。現在は条例により「シノギのパイ」が小さくなってきているという暴力団。山口組の実態や動向を実際に目にしてきた2人の対談からは、暴力団「現在の姿」がにじんでくるはずだ。

【第6位】平成の八つ墓村――「山口連続殺人放火事件」はなぜ起きた? 事件の真相に迫る、話題のルポ

『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(高橋ユキ/晶文社)

 2013年、集落に住む5人の高齢者が殺害され、被害者宅が放火された「山口連続殺人放火事件」。「平成の八つ墓村」などと騒がれたこの事件に真正面から切り込み、真実に迫ろうとする一冊のルポが『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(高橋ユキ/晶文社)である。

 事件現場となった集落を訪れる中で、著者は田舎独特の悪習に遭遇したという。常に誰かが誰かの噂話をしており、それが「悪口」へと加速していく。本書を読み進めていくと、閉鎖的な村社会の恐ろしさが浮き彫りになってくる。それと同時に、犯人の置かれていた状況に対する、やりきれない気持ちも湧いてくるのだ。無責任な発言が、恐ろしい犯罪者を生み出すことにもつながりうる。

 本書は「山口連続殺人放火事件」の真相を通じて、ぼくら現代人に警鐘を鳴らしているのである。

【第7位】老人たちに忍び寄る詐欺。怪しい“健康食品”のお店で何が行われているのか?

『あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと』(ロバート・熊/自由国民社)

 悪徳商法の実態を知れる本がある。それは、『あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと』(ロバート・熊/自由国民社)。

 かつて“だます側”にいた著者が、催眠商法の実態や対策を訴える書籍だ。催眠商法が行われる会場では何が行われているのか。とにかくうさんくさい商品のよさを老人たちへ徹底的に刷り込んでいるのかと思いきや、じつは、内容の9割は「世間話」や「人生の気づきの話」だという。比較的長期間にわたり勧誘が行われているのが一般的だそうで、おおむね1カ月~3カ月の期間をかけて勧誘する会社が多く、客との人間関係を深くじっくりと築き上げながら、時間をかけて高額商品を売りつけていくそうだ。

 ターゲットにされるのは孤独を感じやすい老人たち。親と離れて暮らす人たちも多いだろうが、本書の内容をどこかの機会に親にもちゃんと伝えてあげよう。

【第8位】“要注意保護者”を生まれ変わらせたのは――夜に働く親を支える「夜間保育園」に刻まれた人間ドラマ

『真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園』(三宅玲子/文藝春秋)

 あなたは「夜間保育園」をご存じだろうか? それは夜の仕事に就く親のための保育園。『真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園』(三宅玲子/文藝春秋)は、福岡市の夜間保育園「どろんこ保育園」を利用する親子と、彼らを支える保育士たちに迫るノンフィクションだ。

 本書にはシングルの親たちが何人も登場する。22歳で未婚の母になり、キャバクラで働き始めた亜希。息子のためにラーメン屋を開業した父親。生活のリズムが安定せず登園時間が夕方以降になりがちなユミエ…。親たちは自身の辛い日常を保育士に打ち明けることで気持ちを保ち、保育士たちはどんな親たちでも理解しようとする姿勢を見せる。

 今の日本に必要なのは、夜間保育のような、シングルの親を支える社会システムではないか。人と人とのつながりが必要なのではないか。夜間保育のような仕組みが、日本中の悩める親子の大きな灯になることを願ってやまない。

【第9位】極秘富裕層スワッピングパーティーを覗いて見えてきたモノ。女性視点で斬る「エロ産業」の実態

『他人(ひと)のセックスを見ながら考えた』(田房永子/筑摩書房)

『他人(ひと)のセックスを見ながら考えた』(田房永子/筑摩書房)は、『母がしんどい』などで知られる女性漫画家・ライターの著者が、エロ本の取材現場などを通じて得られた考察をまとめた1冊。「こんな場所では、こんな性的サービスが行われています」といった表面的なルポだけでは留まらない作品だ。

 たとえば、著者は25歳のときに男性編集者とカップルのふりをして会員制スワッピングパーティーに潜入したという。そこはお金持ちのゆとりある遊び場。「俺の女、べっぴんだろ。体の反応もスゲエんだぜ」という、みせびらかすことができるものを「持っている」者たちの集う場であったと言う。

 他の男の上玉を抱かせてもらうのだから、こちらもべっぴんを用意して行かなければ…などという男視点のルールによって成り立つその場に、本物の共有する喜びや、ましてや「女性視点の快楽や絶頂」は存在するのだろうか。男女の平等性や差異をどうとらえて扱っていくのか。その問題は、「他人のセックス」を覗いてみることでヒントを得られるのかもしれない。

【第10位】「人殺しは何を考えているのか?」当事者に実際聞いてみた、危険思想の本質

『世界の危険思想』(丸山ゴンザレス/光文社)

 TBSの人気番組「クレイジージャーニー」で、「危険地帯ジャーナリスト」として活躍する丸山ゴンザレス。彼の著書『世界の危険思想』(光文社)は、危険な物事の中心に佇む「不可解さ」を徹底的に掘り下げていく1冊だ。

 例えば、人は人をなぜ殺すのか?という疑問に対しては、ジャマイカでの取材録が掲載されている。著者が目の前の元殺し屋からその「わからなさ」を懸命にひもとこうとするのだ。

“彼にとって殺すことに罪悪感はあるだろうが、それ以上に生きることに必死なんだと思う。私の見た限りではあるが、彼の置かれている立場は、殺すことぐらいしかできる仕事がないと追い詰められた感じがした。”

 人が普通の旅行では訪れないような場所への旅を数多く経験してきた著者は、単に人の不可解さを「遠い異世界」として提示するのではない。私たちが物事を考える手がかりとして活用する術を読者に示してくれる本なのだ。

集計期間:2019/01/01~2019/12/20

文=アサトーミナミ