空前の自転車ブームがマンガ界にも! いま自転車マンガが熱い

マンガ

更新日:2012/11/29

 とある街なか。ふと道路を見れば、ミニバイク並みのスピードで駆け抜けるロードレーサー。そんな光景が珍しくなくなった。そう、今は、空前の自転車ブーム。街や山で、颯爽と駆け抜ける自転車に魅了される人が急増中なのだ。それはマンガ界でも例外ではなく、あらゆる雑誌で自転車マンガが人気を集めている。

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 今回は、「趣味は読書」のインドア派でも安心しておもしろく読め、なおかつ「自分も自転車にまたがりたいっす」と思えるような自転車マンガの数々を紹介していこう。

 まずは、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で大人気連載中の『弱虫ペダル』(渡辺 航)。オタクである主人公の小野田坂道は、じつは学校の裏に有る斜度20パーセントを超える激坂をママチャリで、しかも歌いながら登坂できるという、すさまじいポテンシャルの持ち主。アニメ・漫画研究部の部員集めのために、ロードレースの優勝経験もある同級生との自転車対決に挑んだことから、彼の自転車人生が幕を開ける。インターハイを目指すなかで、個性的なライバルたちとしのぎを削る熱いドラマは、まさにスポ根の王道。自転車のことがわからなくても熱くなれることうけあいだ。

 主人公が自転車乗りではない、ということであれば、『ぼくらの』(小学館)や『なるたる』(講談社)の作者で知られる鬼頭莫宏の意欲作『のりりん』(講談社)も外せない。この作品の主人公は自転車に乗らないどころか、自転車を嫌っているという設定。そんな彼が自転車大好きの少女「輪」を危うく轢きそうになったことから、いやいやながらも自転車に乗らざるを得ない状況に追い込まれる。車や人の動きの予測、ペダルを踏み込む力が推進力に変わる感覚、剥き出しの体に感じる風、音、振動など、自転車という乗り物の特性を、自転車を嫌っていた主人公視点で描いているので、その魅力が存分に伝わってくる。自転車ビギナーにはうってつけの作品だ。

 『かもめ☆チャンス』(玉井雪雄/小学館)も、自転車素人だった主人公が、その世界に入り込んでいくさまを描いた1冊。『弱虫ペダル』とは違い、こちらの主人公は28歳の信用金庫に勤めるサラリーマンで、しかもシングルファーザー。子育てと会社勤めに翻弄される生活のなかでロードバイクと出会い、その魅力に取り付かれていく。とにかく、感情描写や空気感などがハンパじゃないほどリアル。これを読んで、自転車乗りになった人も少なくないとか。少年系の自転車マンガになかなか入り込めない人は、こちらを読んでみるといいだろう。

 自転車でのんびりと町を散策したい人には『東京自転車少女。』(わだぺん/アース・スターエンターテイメント)がオススメ。とある離島から練馬に転校してきた主人公、島野いるかは「自転車で東京をめぐる」という部活、「自転車天使部」に入ることになる。個性的な部活メンバーとともに繰り広げられる自転車での旅は、小さな驚きと発見の連続で、まさに「小旅行」という言葉がピッタリ。徒歩とは違って、気軽に少しだけ遠出することができ、また小回りがきくので散策にも向いている、そんな自転車のもうひとつの魅力をわからせてくれる作品だ。

 自転車マンガといえば忘れてはいけないのが、『並木橋通りアオバ自転車店』(宮尾 岳/少年画報社)の新シリーズで、10月29日に第2巻が発売された『アオバ自転車店へようこそ!』。並木橋通りのはしにある並木橋商店街の自転車専門店「アオバ自転車店」。そこを訪れる人々が自転車を通じて何に出会い体験したか、そのドラマを描いている。「温かな」ストーリーが多く、根強いファンもたくさんいる作品だ。ロードバイクやシティサイクルから実用車、電気自転車まで幅広い自転車が登場することも特徴で、ビギナーからマニアまで満足すること間違いなし。読めば読むほど、自転車に乗りたくなってくるだろう。

 自分の力が推進力に変わる感覚。肌に受ける風。そして空気を切り裂いていく感触など、自転車に乗らなければ手に入らないものは数多い。さあ、自転車マンガを読んだなら、ママチャリでもいいので、サドルにまたがって、ペダルをこいでみよう。