セックスレスを決定づけた、夫の心ないひと言とは?

更新日:2013/1/15

 日本家族計画協会が12月20日に発表した「男女の生活と意識に関する調査」によれば、セックスレス(過去1か月以上にわたって性交渉なし)の夫婦は41.3%にのぼり、過去最高を更新した。「仕事で疲れている」「出産後何となく」「面倒くさい」というのがその主な理由だという。

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 セックスに対する価値観は個人ごとに異なるので、セックスレスの増加を示すデータが出たからといって、安易に「困ったことだ」と言い切れるほど単純な問題ではないだろう。妻が悩んでいる場合もあれば、夫が苦しんでいる場合もある。また、夫婦生活からセックスがなくなったことで円滑になったというケースだってある。すべては個別具体の問題なのだ。

 夫婦と性の問題について多くの著作を持つライター・亀山早苗の『セックスレス そのとき女は』(中央公論新社)は、セックスレスの問題に直面する人々を丹念に取材し、“生の声”をフィールドワーク的に集めてまとめたノンフィクションだ。

 例えば、結婚して以来6年間、1度もセックスをしていないという38歳の女性は、セックスを夫に求めることを諦めつつも、それを婚外に求めることもできない自分の保守的な性意識に悩んでいるという。また、夫に女として見られなくなったことに絶望し、性感マッサージに癒やしを求めた50歳の女性もいる。15年以上セックスレスの夫婦生活を送った果ての行動だ。

 セックスレスはなぜ起こるのか。もちろん原因はさまざまであり、複雑だ。長年の暮らしで“家族”になってしまい、夫婦関係からエロスが失われたという例もあれば、夫の浮気がきっかけで肉体関係を受けつけられなくなったという女性もいたが……本書で最も興味深かったのは、妻の心を土足で踏みにじった夫たちの心ないひと言だ。

“「あ、エッチの話? オレ、あんまり好きじゃないんだよね」”

 前述の38歳女性は、結婚以来一度もセックスがないことに疑問を持ち、思い切って夫に話し合いを求めたところ、あっさりこう切り返されてしまったという。セックスは2人の問題であるはずなのに……自分の都合しか考えていない夫のひと言で、セックスレスは決定的なものになった。

“「ああ、そうだよ。彼女はセックスしてて楽しいんだよ。おまえみたいにつまらない女じゃないんだ」”

 妻に浮気がバレて、こんな絶望的な逆ギレをした夫もいたという。人間としての尊厳を傷つける、あまりにもひどいひと言……。翌日すぐに謝ってきたというが、妻はこれを機に夫が生理的に受けつけられなくなり、以後セックスレスになったようだ。

 丹念に個人個人を取材し、個別具体の問題と徹底的に向き合っただけあって、こういった迫力あるエピソードは枚挙にいとまがない。普通、夫婦間で起こる出来事というのは、他者にはなかなか知りえないことだろう。そんな“密室”で起こった出来事をのぞき見させてもらえる本書は、セックスレスを考える上で、読者にとって貴重な資料となりえるはず。ぜひ、ご一読あれ。

文=清田代表/桃山商事