深泥丘奇談【文庫版】

更新日:2013/1/22

綾辻行人 / メディアファクトリー
2011年12月22日

価格650円

honto / Amazon.co.jp / 楽天ブックス

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「この世にはね、不思議なことがあるものなのです」
 
怪談専門誌『幽』創刊号から連載された連作怪談シリーズ。夢とうつつの間を彷徨うのは、著者・綾辻行人を彷彿させる「私」。みずからが住まう街でありながら、その街が時おり見せる異様な姿に「記憶」が揺らぎはじめ……この世界は、いったいどこなのか?「体調に不安を覚えて検査入院した語り手の奇妙な目撃談「顔」、散策の途中で遭遇したローカル線の妖しい記憶をめぐる「丘の向こう」、いにしえの水都の幻影が立ち顕れる「長びく雨」、水の悪霊と霊能者の闘いが殺人事件を招来する「悪霊憑き」、歯科治療をめぐり作者一流の生理的恐怖描写が冴える「サムザムシ」、どこかクトゥルー神話を彷彿させて心弾ませる「開けるな」。京都名物・五山の送り火がシュルレアリスム絵画さながらの幻視の光景へ一変する集中第一の傑作「六山の夜」、秋祭りの夜に病院で開催される奇術ショーの驚くべき顛末を描く「深泥丘魔術団」、語り手の自宅周辺に謎の生き物が出没する「声」……自宅と病院を楕円の両極とする語り手の散策=夢幻彷徨が、驚異と幻影の地誌学とでも称すべき光景を開示し、謎めいた世界観の全貌が、精妙な手つきで明らかにされてゆく。本連作に秘められた奇計は、いまだその片鱗を覗かせたに過ぎない。ーーような気がする。」(東雅夫)