13000人弱が来場した「文学フリマ東京」現場レポート。又吉直樹も出店した「自分が文学と信じるもの」を出店するイベントが大盛況

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更新日:2023/11/24

 2023年11月11日「文学フリマ東京」が東京流通センターで行われた。文学フリマは評論家の大塚英志氏の呼びかけによって2002年に始まった文学作品の展示即売会である。全国各地で開催されており、プロ・アマチュア問わず誰でも出店できる。販売物の条件は「自分が文学と信じるもの」である。

 今回の「文学フリマ東京」の来場者数は、主催者発表によると1万2890名(出店者3062名・一般来場者9828名)。筆者の体感的にも過去最大となった「文学フリマ東京」の極私的イベントレポートをお届けする。

 一際盛り上がっていた「壁サー(即売会において人気のあるサークル、ブースのこと)」が「第一芸人文芸部」のブースだ。『第一芸人文芸部創刊準備号』は、芸人の又吉直樹が自由律俳句と散文、ピストジャムが書評、ファビアンがショートショートを執筆した一冊である。ファビアンさんによると、『きょうも芸の夢をみる』(ファビアン/ヨシモトブックス)を文学フリマで販売した際、その熱狂に感動したのだという。「(第一芸人文芸部を)作るなら、何か作りたい」という経緯で、文学フリマに合わせて冊子が制作された。

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文学フリマ

「オルタナ旧市街」の吉岡擁さんは、今回で6回目の出店だという。小説集『一般』は5刷。エッセイとも小説ともつかない雰囲気が読みどころだ。BASEほか個人書店で購入できる。文学フリマについて「コロナの影響で2020年、2021年と来場者が少なかった。賑やかさが戻ってきたし、より賑わっていると思います」と語る。

https://x.com/zen_mond_u

「タイムトラベル専門書店」の藤岡みなみさんは「今回で2回目の出店。ちょっとだけ慣れました」と汗を拭う。こだま、せきしろ、牟田都子ほか11名が参加した『超個人的時間旅行』は、エンタメではなく日常の中のタイムトラベルがテーマだ。個人書店で購入できる。

https://x.com/fujiokaminami

 郷土史が持つ不思議な雰囲気をまとった「はにわ会」は、4回目の出店。「(入場者)増えていますよね」と語る。ブースに並んでいたのは『埋物の庭』。街歩きや旅行のエッセイ集で、なんと姫路から豊岡まで140キロを歩いた記録もあるという。活動はSNSほかブログも更新している。

https://my-butsu.hatenablog.com/archive

文学フリマ

「造鳩會」の藤井佯さんは、鳩のアンソロジー『鳩のおとむらい』を並べる。表紙が美しく、物語に誘いこまれるようだ。「鳩をテーマにした作品をSNSで募り、アマチュア、プロ、77篇入ったアンソロジーです」作品はBOOTHで購入できる。

https://x.com/zo_q_kai

 初めて出店した人々もいる。「前回の文学フリマに来場して、影響を受けました。今回勇気を出して出店しました」と微笑むのは奥村祥さん。ときめくものを詰め込んだという冊子『アパートメント』、1ヶ月の日記92ページをまとめた『どうして、キッチンで眠っているの?』などを販売。今後はBASEでの販売を予定している。

https://x.com/okumura_sachi

「稀人書店」も初めての出店だ。売り子のウィルソン麻菜さんは「バタバタです!」と笑うが、ずらりと並べられた書籍の数々は圧巻だ。主催者の川内イオをはじめ14名のライターが参加し、喧嘩について書いたという『喧嘩ノ生態』などを販売。稀人書店のサイトで購入できる。

https://marebito.shopselect.net/

「ユリク手作り腕時計」は、なんと腕時計を「文学」として出店。「時計を作っている時、言葉のイメージが浮かんでくるんです。それらをタグにして販売しています」。来場者の反応は「みなさんちゃんとタグを読んでくれる。嬉しいです。まずは読んでほしい」という。

https://www.beautemps-yurikounno.com/

文学フリマ

 学生の参加も多い。目白大学メディア文化ゼミは『ジハンキイズム』を販売。進化し続ける自動販売機の今を追った記録だ。自動販売機を作る企業3社へのインタビューもあり、読み応えがある。活動はインスタグラムで発信している。

https://www.instagram.com/jihankiism11/

 武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科と明治大学情報コミュニケーション学部南後ゼミの取り組みを一冊にまとめたのが『Tokyo Scope』である。「ニュー・ノーマルを見つめ直す」をテーマに、AI、Z世代、サブスク、マスクといったトピックをもとにさまざまな視点からニュー・ノーマルを分析した。

https://tokyoscope.stores.jp/

文学フリマ

 ここまで、筆者がピックアップしたごく一部のブースをご紹介した。記載した通りほとんどの作品は通販などで購入できるが、実際に個人と個人が出会い、作品を通して交流する醍醐味が「文学フリマ」にある。人の波に飲み込まれながら、本が呼ぶ掛け声に目を耳を澄ませながら、ずっしりと重くなってゆく鞄が嬉しいのだ。次回の文学フリマ東京38は東京流通センターで行われるとのこと。来場を、または出店を考えてみるのもよいのではないだろうか。

取材・文=高松霞

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