作家・菊田まりこが贈る傑作絵本『ひとつぼし』の新装版登場! 読めばきっと心が温まる、大人の心にも響く一冊

文芸・カルチャー

公開日:2024/3/1

ひとつぼし
ひとつぼし』(菊田まりこ/白泉社)

 大人になっても自分が得意なこと、人より上手くできることに気づくのは難しい。好きなことが得意とは限らないし、ときには人と比べて落ち込んでしまうこともあるだろう。

 ここで大切なのは、誰でも自分にしかない価値や得意なことが必ずあり、才能が花開く瞬間は1人ひとり違うということ。2024年3月1日(金)に新装版として発売される絵本『ひとつぼし』は、そんな当たり前だけど大切なことを子どもたちに教えてくれる。

 同作の著者・菊田まりこは、グラフィックデザインの世界から創作の世界へ飛び込んだ絵本作家。デビュー作『いつでも会える』で「1999年度ボローニャ国際児童図書展」のボローニャ児童賞・特別賞に輝き、そこからさらに数々の名作を生み出してきた。

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 菊田が生み出す絵本はどれもハートフルで、言葉少なに人生の“核”の部分や、生きる上で支えとなるような格言を読者の心に刻み込んでくれる。優しくてキュートなイラストとともに、子どもだけでなく大人の心にも響く作品でファンを魅了してきた。

 そんな菊田が3月1日に刊行するのが、2016年に一度発売され、今回新装版として新たに蘇る絵本『ひとつぼし』。心にじんわり染みわたる作風はそのままに、誰もが1つは持っている“ひとつぼし”について教えてくれる。

 物語は、クマの先生が「あのね、せんせいには みえるのよ」「どのこも もってる ひとつぼし」と語り出すところから始まる。お絵描きのときはユメちゃん、かけっこのときにはリクくん、ダンスのときにはアヤちゃんのひとつぼしが輝くそうで、クマの先生は「キラキラ ひかる そのほしを みんなは きづいて いるかしら?」と優しく問いかけていた。

 ひとつぼしはそれぞれ異なり、光り出すタイミングも人によってさまざま。臆病で弱虫で、いつも先生の後ろに隠れているソラくんは、まだひとつぼしが光り出さない。同作ではそんなソラくんの“ひとつぼし”が光る瞬間を、先生とともに見守っていく。

 「しんぱい しないで まっていて かならず ひかる そのときを」「どんなに ほかの ひかりが まぶしくても、じぶんの ひかりを しんじて いこう」などと語る、先生のやさしくも頼もしい言葉の数々も必見だ。

 ちなみに『ひとつぼし』は、2024年度、小学1年生の道徳の教科書にも採用されている。子どもたちの自己肯定感を高めたり、人生の指針となる考え方を身につけさせてくれたりと、教育現場での活躍も期待されているそうだ。

 絵本のなかで紡がれるやさしい言葉の数々は、得意なことや好きなものが見つかっていない人の希望になるはず。同作を読んで、いつか必ず光る“ひとつぼし”の存在を信じてみてほしい。

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