糸井重里も推薦!“めったに自分を語らなかった”イラストレーター・和田誠のエッセイ『わたくし大画報』が約42年ぶりに復刊へ

文芸・カルチャー

公開日:2024/4/2

わたくし大画報
わたくし大画報』(和田誠/ポプラ社)

 イラストレーターやグラフィックデザイナーなど多彩な才能を発揮し、亡くなる2019年まで業界の第一線にて活躍し続けた和田誠氏。彼が1982年にリリースしたエッセイ『わたくし大画報』が、2024年3月13日(水)に復刊することとなった。世間にはあまり知られていない才能人の素顔に、改めて驚きや感心の声が続出している。

 和田氏は生前、同書を含めて約200冊以上の著作を世に送り出してきた。主な代表作は、1995年に刊行された絵本『ことばのこばこ』や村上春樹と共作した2003年の『ポートレイト・イン・ジャズ』など。ほかにも1977年から2017年にかけて『週刊文春』のカバーイラストを手掛けたり、黒柳徹子による自伝的物語『窓ぎわのトットちゃん』の装幀を担当したりと、枚挙にいとまがない。

 さらには映画監督として真田広之を主演に据えた『麻雀放浪記』のメガホンを取ったこともあれば、NHKの音楽番組『みんなのうた』では映像アニメを複数手掛けるなど、幅広い分野で活躍。その存在感は没後も薄まることがなく、2021年10月から2023年10月にかけて6都市・7会場を巡回した「和田誠展」は大盛況で幕を下ろした。

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 そんな誰もが一度は目にしてきたであろう作品を生み出してきた和田氏だが、パーソナルな部分を書いた本はごくわずか。今回紹介するエッセイ『わたくし大画報』はそのひとつで、妻・平野レミとのエピソードや谷川俊太郎を始めとした著名人たちとの交遊録など、知られざるプライベートが赤裸々に語られている。

 同書にはエピソードごとにイラストが添えられており、和田の代名詞とも言える似顔絵など79点を収録。いずれも簡単に書かれているようで特徴がしっかり捉えられている、なんとも彼らしい作品ばかりだ。

 なかでも興味深かったのが、「男はつらいよ」シリーズで知られる渥美清氏とのエピソードが語られた「寅さんと寅さんを」の項。当時は『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』が公開された時期で、なんと和田氏は渥美氏と一緒に同作を映画館で楽しんだという。一般客に混じって“寅さんを見た寅さん”は、いったい何を語ったのだろうか。

 ほかにも初めての子育て記録や仕事にまつわるエピソードなど、充実した内容が盛りだくさん。そんな同書に向け、コピーライター・糸井重里からは「ひとりの人間のなかに、こんなに大量の『おもしろい』があっても、よいものなのだろうか」と推薦文が寄せられている。さっそく手に取った人からも、「元版持ってなかったので嬉しい」「貴重なエピソードの数々に、驚きが止まらない!」といった声が広がっていた。

 約42年ぶりの復刊となった『わたくし大画報』だが、どれも色褪せないエピソードばかり。和田に興味がある人はもちろんのこと、その時代に思いを馳せたいという人もぜひ同書を手にとってみてほしい。

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