男も女も惚れる女形の魅力とは? 歌舞伎BLの萌えどころ

BL

2013/5/8

  4月2日にリニューアルオープンし、大にぎわいを見せている歌舞伎座。なかには、GWに歌舞伎を見に行った人やこれを機会に興味をもった人もいるだろう。そんな歌舞伎の魅力といえば、なんといっても女形。その美しさには、男も女も関係なくつい見とれてしまう。BLでも、4月27日に発売された『このよのはじまりこのよのおわり』(たうみまゆ/竹書房)や『ヤバイ目で見ンなよ!!』(定広美香/ジュネット)、『禁縛』(剛しいら、嵩梨 尚/フランス書院)といった作品で女形が登場している。これほどまでに男を魅了する女形の魅力とは、一体何なのか?

 まずひとつめは、やはりその色っぽさ。幼い頃から身に付いた流し目や美しい所作は、普段の生活にも表れる。『ヤバイ目で見ンなよ!!』の夢殿銀之丞こと大里銀二は、小学生にしてすでに大人も子どもも魅了する女形だった。小学生の頃から銀之丞のファンだった相羽操が、高校生になって偶然制服姿の銀二と会ったときにその流し目を見ただけで誰だかわかってしまったほど。そんな目力を持つ彼に舞台の上から「完全LOCK ON!」されたらもう逃れられない。それに、恋を知ってからの銀二の舞いは誰が見てもわかるほど妖艶で、好きな人を思って涙を流すシーンは見ているだけで引き込まれる。そして、恋を知ってより美しくなったのは『このよのはじまりこのよのおわり』の佐根市も同じ。彼も恋をして、相手に気づかれないようにそっと瞳で追う色目を知り、ずっと自分を好きでいてくれた相手の思いを知って一途に思い続ける女の心を知った。それまでは、どんなに色目や流し目をしようとしてもみんなに「睨んでる」と言われるばかりで、どれだけの人と寝ても女心を理解することはできなかった。『禁縛』に出てくる梨園の御曹司である草矢も、緊縛師の龍地と出会って「苦しいほどの思いってやつを、やっと理解出来たんです」と言っている。優等生だった彼は、祖父や親、叔父たちに言われるがままに稽古を続けてきた。だから、普段の生活でもつい小首を傾げて話してしまうくせまでついている。でも、龍地と会って恋をしなければ本当に魂のこもった女形にはなれなかっただろう。

 また、しなやかなのに鍛え上げられた肉体には、女とは違った魅力がある。みんな幼い頃から稽古をしているだけあって、体は引き締まっている。『禁縛』の草矢は、初対面の龍地が見てもわかるくらい「均整の取れた体つき」をしていて、「全体に無駄な肉がなくほっそりしているが、筋肉の強靭さが感じられる」ものだった。それに、『このよのはじまりこのよのおわり』の佐根市や『ヤバイ目で見ンなよ!!』の銀二のように、意外にも女形が攻めの場合も多い。こんなふうに、女形のときとは違った男らしさを見ることでそのギャップに魅了されてしまうのだろう。

 そして、控えめに見えるけど実際は強気でわがままだったり、プライドやプロ意識が高かったりするところに惹かれる人も多いはず。女形の人間は、女よりも女でなければならないので徹底的に女を勉強する。実際、『このよのはじまりこのよのおわり』の佐根市も、芸のためといろんな女を片っ端から抱いていたし、かんざしで殺されそうになる修羅場も経験した。でも、その修羅場をくぐり抜けたからこそ「佐根市はやっぱりいい役者になったね」と言われて自信満々に「あたりめェだろ」と答えられるのだろう。また『ヤバイ目で見ンなよ!!』の銀二も「“飢餓海峡”躍らせたら俺に勝てる奴ぁいねーぜ」と自信満々に宣言する。舞台で相手役の竜之介に叱られると「あークソむかつく!」と言いながらも感情に任せてキレることはなく「俺と釣り合うのは竜兄ィしかいねぇ」と冷静に判断して対処するのだ。その姿は、高校生にして座長を務めるだけのことはある。さらに、『禁縛』の草矢なんて「自ら演じる女こそが、この世で最高の女なのだ」と思っている。それに、跡継ぎとして大切に育てられた草矢はお茶漬けの塩昆布がいつもと違うだけで怒り出すし、家事も運動も全て禁止されていた。こんな環境で育ったというのもあるが、きっとこうやって自分にプレッシャーをかけてわがままに振舞っていなければ、うまくバランスを取れなかったのだろう。

 彼らは、自分をいい女だと思うことで素晴らしい演技ができる。これが本当の女だったらなかなか扱いづらいかもしれないが、女形は「わがままな女に振り回されるのも嫌いじゃない」という男心も理解しているから、絶妙な加減で男を振り回す。高嶺の花に見える女形の熱い心や中身を知れば、男なんてまったく興味がないと思っていた人でも引き込まれること間違いなし! そこから、歌舞伎の世界へ足を踏み入れてみるのもいいかも。