鬼を殺した刀、長すぎる刀…オタク垂涎あの名刀の仰天伝説!

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公開日:2013/5/30

 あなたがもっともカッコイイと思う武器はなんだろう? たしかに銃や西洋の剣も捨てがたいが、やはり一番は日本刀という人が多いはず。現在日本各地で「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」の巡回も行われているように、オタクにとって刀はとても魅力的なアイテムなのだ。そこで、5月21日に発売された『ゲーム・アニメ・ラノベ好きのための「刀」大事典』(レッカ社/カンゼン)から、ゲームやアニメにも登場する日本古来の名刀について、それらを扱う人物や武器の製作者、背景、物語といったエピソードを紹介しよう。

 まずは、日本史上最強の刀と言われている童子切安綱から。罪人を使った試し斬りでは、6人連続で断ち斬るほど抜群の斬れ味を誇っていたこの刀。おまけに、身の丈3mはあろうかという鬼・酒呑童子の首をひと振りで切り落としてしまったという伝説が残っているのだから最強と言われるのもうなずける。そんな名刀だが、源頼光が酒呑童子を退治したあとは足利将軍家、豊臣秀吉、本阿弥家、徳川家康、徳川秀忠、越前松平家ところころと持ち主が変わり、今では上野の東京国立博物館で保管されているようだ。こんなふうに持ち主が次々と手放したのも、ひょっとしたら妖刀としてのエピソードがあったからかも。しかし、そのエピソードもオタクからしたらたまらないものだろう。

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 また、童子切安綱と同じく「天下五剣」として愛されたのが三日月宗近だ。作製された時代が古く、見た目にも美しかった童子切安綱、大典太光世、数珠丸恒次、鬼丸国綱、三日月宗近を「天下五剣」と呼んでいたのだが、そのなかでももっとも美しいと言われているのが三日月宗近だ。刀が登場した初期に作られたもので、刀身の峰側に三日月の模様がいくつも浮かび上がるのが特徴。この刀を作ったのは平安時代に山城国で活躍した刀工で、京都の三条に住んでいたことから三条宗近と呼ばれている。そんな美しい刀に似合うキャラを考えてみるのも楽しいのでは?

 そして、ちょっと変わった名前なのが佐々木小次郎の愛刀である物干し竿。巌流島での宮本武蔵との戦いでも使用したこの刀の長さは、およそ1m。「なんだ。物干し竿なんて言うほど長くないじゃないか」と思った人もいるかもしれないが、実は彼がこの刀を使っていたのは江戸幕府を開いた徳川家康が刀の長さを2尺8寸9分(約87.5cm)以内にするように定めたあとのこと。やはり長い刀は斬るのに適しておらず、そのせいで武蔵に負けたと思っている人もいるようで、物干し竿という名前がつけられたのも小次郎が死んだあとからなんだそう。もしも小次郎が武蔵に勝っていたら、揶揄するような物干し竿という名前はついていなかったかも?

 さらに、マンガやアニメにピッタリの刀も登場する。それは、上杉謙信も持っていた波泳ぎ兼光。“波泳ぎ”という異名を持つこの刀がなぜマンガやアニメにピッタリかというと、ある逸話があるから。この刀は、相手が斬られたことに気づかないほど鋭い斬撃を放つので、「この刀で斬られた者が川に飛び込んで逃げ、しばらく泳いだあとに首が落ちた、または真っ二つになった」と言われている。このことから、波泳ぎと呼ばれるようになったのだ。嘘のような話だが、戦前は国定教科書にも掲載されるほど有名な話だったそう。リアルに石川五右衛門気分を味わうなら、この刀ほど最適なものはない。

 こんなふうに、ひとことで「刀」と言ってもひとつひとついろんな特徴がある。この本であなたのお気に入りのひと振りを探したり、好きなキャラが使っていた刀にまつわるエピソードにまで思いを馳せてみるのもいいかも。

文=小里樹