来年は放映40周年! キャラクターデザイナーによる『アルプスの少女ハイジ』画集

マンガ

更新日:2013/6/24

 ♪口笛はなぜ~、遠くまで聞こえるの~、という主題歌でもお馴染みの、最近ではCMなどでもキャラクターが活躍するアニメ『アルプスの少女ハイジ』。1974年の放送以来、今も再放送やソフト化された作品に触れ、新たなファンを獲得している名作『ハイジ』だが、この作品でキャラクターデザインを手がけ、作画監督も務めた小田部羊一氏が描いた『「アルプスの少女ハイジ」小田部羊一イラスト画集』(廣済堂出版)が、来年放映40周年を迎えることを記念し、画集として出版された。

『アルプスの少女ハイジ』は、スイスの作家ヨハンナ・スピリによって書かれた児童文学で、これを原作としてアニメ化したのが、『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』などを監督した高畑勲氏(演出を担当)と、『風の谷のナウシカ』『千と千尋の神隠し』などを手がけた宮崎駿氏(場面設定、画面構成を担当)の名コンビだ。この2人とともに『ハイジ』を支えたのが、小田部羊一氏なのだ。

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 本書は、デーテおばさんにアルムおんじのいる山小屋へ連れて来られた、着膨れしたハイジがデルフリ村で水を飲むシーンから始まる。おじいさんと一緒にアルムの山に住み始め、山羊飼いペーターと一緒に山の上へ行く生活を送るハイジが、やがてデーテおばさんに連れられてフランクフルトへ行き、ゼーゼマン家のお嬢様クララと友だちになり、また山へ戻って来るという物語と、小田部氏による柔らかなタッチのイラストで構成されている。またイラストと一緒に掲載されている場面説明は簡潔にまとめられているので、子どもなどに読み聞かせをする絵本としても最適な1冊となっている。

 そして当時としてはかなり珍しく、アニメ制作に取り掛かる前に、スタッフがスイスとドイツへロケハンに出かけたのも『ハイジ』の特徴だ。この秘話や貴重な写真などは、資料集として本書に掲載されているが、高畑氏はこのロケハンの必要性について、「そこに住んでいる人が朝起きてから夜寝るまで、何をして、何を食べ、何を作っているのか調べる義務があると思っていた」と以前あるインタビューで答えている。同行した小田部氏は、訪れた場所で使われている道具やそこに住む人たちを数多くスケッチしていて(宮崎氏には「これだけしか描いてないのか」と叱られたそうだ)、この貴重な当時の絵とエピソードも多数掲載されている。

 また巻末には小田部氏へのロングインタビューも収録されており、キャラクター造形に関するエピソード(最初に描かれたハイジはお下げ髪だった!)や、ロケハンの話なども満載だ。いくつか紹介すると、有名なあのオープニングのハイジのブランコシーンだが、あれは高畑氏が「ブランコに乗っていると高い所から普段とは違う風景が見える」というフランスの詩からイメージしたものだそうだ。また宮崎氏は現地でまったくスケッチをせず、一度頭の中へ入れて、自分の記憶にあるものを自由な目線で描いていた、と小田部氏は述懐している。さらにオープニングでハイジとペーターが踊っているシーンだが、宮崎氏がペーター役、小田部氏がハイジ役で踊った姿を8ミリカメラで撮影し、それを参考に原画にしたそうだ。

 火で炙ってとろけるチーズ、干し草のベッド、セントバーナード犬のヨーゼフ、小鳥のピッチー、ヤギのユキちゃん、そしてクララが自分の足で立ったシーンなど、懐かしの名場面が満載の本書。子どもよりも、アニメを見ていた大人が、夢中になって読んでしまうかもしれない!?

文=成田全(ナリタタモツ)