仕事中にサーフィン、海外旅行も仕事!? 「あたらしい働き方」とは?

仕事術

更新日:2013/7/11

 朝の満員電車に揺られながら、また同じような一日が始まる……と憂鬱な気分になったことはないだろうか。生活のためには多少のつらいことも我慢しなくてはいけないという風潮がある。だから私たちは満員電車も長時間労働も退屈な会議も「そんなもんだ」と思って我慢する。しかし、本当にそれが会社のためになっているのだろうか?

「9時出社・8時間労働」という一般的な勤務時間は、製造業時代のモデルだという。インターネットによって時代が変わった今では、もっとさまざまな勤務時間があっていいし、人が集中する都心部にオフィスがある必要もない。なのに私たちは昔ながらのワークスタイルを続けているのだ。そんな根本的な疑問を投げかけ、話題となっているビジネス書が『あたらしい働き方』(本田直之/ダイヤモンド社)だ。

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 パタゴニアやザッポスなどのアメリカ企業、スタートトゥデイやPlan・Do・Seeなどの日本企業、あわせて17企業と1組織を取材した本書のテーマは、きわめて自由度の高い働き方を実践している企業の試みだ。

 たとえば、アウトドアスポーツ用品メーカーのパタゴニアは、都市部から離れた海岸近くにあり、「すごい波が来ている」となると、ミーティング中でも社員はサーフィンをしに行くという。しかも、真っ先に海に飛び込むのが社長だったりするのだ。ちなみに、サーフィンをした後のミーティングは、集中した良いミーティングになるそうだ。

 また、Webサービス事業のエバーノートでは、驚くことに日数制限のない有給休暇を実施。しかも、社員が旅行すると1000ドルの補助金まで出るという。これは、シリコンバレーの開発者たちが一生懸命すぎて休暇を取らないため、旅先でリフレッシュしてほしいという思いから生まれた。365日休むことも可能なわけだが、そんな極端な使い方をする社員はいないという。社員への信頼があってこそ、こうした制度が成り立っているというわけだ。

 こうした自由な働き方を聞くと、「海の向こうの話」と考えがちだが、そんなことはない。日本でも続々と新しい働き方を採用する会社が生まれている。

「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイは、2012年に労働時間を朝9時から午後3時までに変更。残業がなかなか減らないため、「6時間労働・3時帰社」というポジティブなメッセージにしたところ、あっという間に労働時間は減ったそうだ。もちろん仕事を放りだして帰っているわけではなく、効率化に向けて社員が努力したからこその結果だ。

 名刺のクラウド管理サービスのSansanでは、在宅勤務制度の「イエーイ」と平日と土日を振りかえて勤務できる「どにーちょ」という制度をもうけている。また、徳島県に古民家を改装したサテライトオフィスがあり、2週間以上滞在するのを条件にそこで仕事をすることもできる。

 満員電車に揺られて会社にやってきて、壁に向かって十数時間も働き、また帰ってゆく。そんなエンジニアの姿を見ていて、「これではいけない」という思いから生まれた働き方なわけだが、インターネットとスカイプさえあれば、どこでも仕事ができる今の時代ならではのものだろう。

 サイコロで給料を決めるなどユニークな制度で知られるカヤックでは、「旅する支社」を導入し、20~40人のプロジェクトごとハワイやイタリア、ベトナムなどの旅先で仕事をするという。これもインターネットのサービス事業をしているならどこでも仕事ができるはず、という発想によるものだ。

 こうした魅力的な働き方を知ると、すぐにでも転職したくなるけれど、単に気ままに働きたいという人は実際のところむずかしい。なぜなら企業は、相応のスキルと自主性を持ったクリエイティブな人材を募るために、こうした自由で心地いい環境を整えているからだ。ただ自由があるわけではなく、そのぶん成果も出さなければいけない。

 新しい働き方を望むなら、まずは自分を高めていくしかなさようだ。

文=大寺 明