『半沢直樹』で人気拡大中の池井戸潤作品、その秘密は“少年マンガ”にあり?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 今の話題は、なんといってもドラマ『半沢直樹』。原作の『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』は、ドラマ開始からわずか1カ月で120万部を増刷。累計発行170万部を突破した。原作者の池井戸潤さんも取材依頼が殺到しているそう。

 池井戸人気の兆しは、実はドラマ放送前からあった。昨年に発売された『ロスジェネの逆襲』と『七つの会議』はドラマ化決定前の時点で、それぞれ10万部近くを発行していた。今年6月には、著作を出す出版社5社が集い、「池井戸祭」なるプロモーションを敢行。堺雅人と池井戸の語り下ろし対談、池井戸全作品紹介などを載せた小冊子を全国の書店で配布した。主導したダイヤモンド社営業部の担当者は、「池井戸さんの作品はエンタテインメントとして一級品。にもかかわらず、企業小説と思い込んでいる人が多い。その誤解を解消したかった」と明かす。

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 実は「20代、30代の女性読者が多い」(同営業担当者)との情報も。池井戸作品は、企業の中にいる男同士のぶつかり合いを色濃く描いている。女性はほぼ登場せず、恋愛要素はゼロに近い。男臭い作風なのに……。と、ここでハッとした。これは、少年マンガを楽しむ女性読者の趣向と近い(「男の友情萌え」というやつだ)。そう考えると、池井戸作品の特徴である「勧善懲悪」「熱血」も少年マンガに通じる。池井戸人気が広がる理由は、大人も読める“企業版少年マンガ”だからなのかも。

文=平山ゆりの/日経エンタテインメント!
(ダ・ヴィンチ10月号「出版ニュースクリップ」より)